次世代レクサス第1弾のはずなのに先代のキープコンセプトに見える
■まとめ (B 合計80点/100点満点)
レクサス NX (2代目)は「次世代レクサス第1弾」に位置づけられ、デザインと技術を刷新。
デザインのテーマは機能的なプロポーションとシンプリシティ。その考え方は2021年に発表したコンセプトカー「LF-Z Electrified」で示されているそうだ。これには グリルだった面とボディが一体化した新世代のデザイン スタイル「スピンドル ボディ」が適用されていた。
ところが新型 NXは 従来の「スピンドル グリル」を適用。シルエットも好評だった先代を踏襲。次世代と言うよりも先代のキープコンセプトに見えてしまう。
キープコンセプトと考えると先代からブッシュアップされている。
先代はキャラ立ちさせてようとキャラクターラインをヤンチャにして「折り紙細工」と言われたりしたらしい。
新型はキャラクターラインを減らしたり、グリルのメッキモールを なくしたりしてシンプル化。グリルの冷却性能を上げたり、各部に空力設計を適用して機能的。
ただし一部やり過ぎに思えるデザインもある。
軽快な走りの良さを表現しようとサイドウィンドウを小さくしたが、SUVだとサイドボディが分厚くなり、腰高で鈍重そうに見えて逆効果。
フロントフェイスの立体感を表現しようとグリル周りを凝ったカタチにしたが、黒いフォグランプ ベゼルがバンパー下端まで降りているので 前へ突き出たグリルの下回りがバンパーで支えられず、アゴが外れているように見える。
むしろスピンドル ボディ等の大きな点で次世代らしさを表現しつつ、細かい点は控えめにした方が上品な高級車らしさを表現できるのでは ないだろうか。
■主な比較対象車
・レクサス NX (先代)
・レクサス RX (同門車)
・トヨタ RAV4 (同門車)
・トヨタ ハリアー (同門車)
■キャラクター
・ポジション
2021年モデルチェンジしたレクサス NX はレクサスの「SUV三兄弟」の真ん中、日本では1番の売れ筋モデル。
新型は「次世代レクサス第1弾」に位置づけられ、走り、デザイン、先進技術を刷新。キーワードは「Vital×Tech Gear」。生命的な躍動感(Vital)と先進技術(Tech)を融合したスポーツギアという意味。
・用途
新技術としての走りを強調。減速、操舵、加速がシームレスに繋がる気持ち良さと、接地感、力感、安心感のある走りの味「Lexus Driving Signature」のさらなる深化だそうだ。
・ユーザー
ユーザー層が若く、新技術に寛容だそうだ。
・デザイン要求
つまり これまでのレクサスのデザインを刷新し、次世代らしさを表現する新しいデザインが必要だ。
■コンセプト (20点/30点満点)
・テーマ
テーマは機能的本質や動的パフォーマンスに根差したプロポーションと独自性、テクノロジーに根差した「シンプリシティ」の追求。
これだけだと何が次世代か さっぱり分からないが、そこは次世代のコンセプトカーを見れば分かるらしい。
2021年に発表したEV(電気自動車)のコンセプトカー「LF-Z Electrified」がレクサスの次世代デザインを体現。従来のレクサスのデザイン スタイル「スピンドル グリル」の代わりにグリルだった面とボディが一体化した「スピンドル ボディ」を適用。
独自性やシンプリシティとはグリルとボディを1つの塊として捉えることらしい。
・アイデア
グリルからリアへ向かう面とフロントフェンダーからキャビンの上屋(グリーンハウス)へ向かう面が交差するアイデア。面を交差させると面の動きを大きく見せることが出来るらしい。言うならば見栄えのため。
しかし機能に根差さない見映えのためのデザインはテーマに反している。特にフロントフェンダーとグリーンハウスを つなげるのは機能的な意味はなく無駄な遊びに見えてしまう。(-5点)
面の交差は次世代と言うより従来のレクサスやトヨタで ありがちなアイデア。それはアイデアスケッチだと青と赤の2色で立体を塗分けるので分かり易い。しかしユーザーは1色だけの1体のボディを見るので、2つの立体の組み合わせというより、面の流れが とぎれてヘンに凸凹したフォルムに見える。もっとユーザーに寄り添えないものか。
・モチーフ
同じプラットフォーム「GA-K」を用いるトヨタ RAV4を横目に見て、そのプラットフォームでどんなデザインが実現できるか参考にした。
・スタイル
従来からのデザイン スタイル「スピンドル グリル」を適用。新型は次世代第1弾なのだから新しいデザイン スタイル「スピンドル ボディ」にすべきでは。例えば レクサス RXではスピンドル ボディが適用されて、新しく見える。(-5点)
・パッケージング
サイズは先代に比べて全長、全幅、全高、ホイールベースが わずかに大きくなった。それでも同じプラットフォームのトヨタ ハリアーと比べると全長が少し短く、室内長いも短い。
リア オーバーハングは先代より短くなったが、パッケージングの工夫で荷室スペースは先代より広いらしい。
■全体デザイン (15点/20点満点)
・プロポーション
シルエットは先代を踏襲。上屋(グリーンハウス)が絞られたクーペルックのSUV。
ルーフラインのピークがBピラーより後ろなのは先代同様で特徴的。ルーフは意外と長く、ルーフスポイラー等の表現でルーフを短めに見せているのも先代同様。
一方ベルトラインは軽快な走りの良さの表現のためキックアップが先代より強くなり、サイドウィンドウは先代より小さくなった。
クーペやセダンでは窓の小さい方がワイド&ローで走りが良さそうに見える。
しかしSUVは元々ボディが分厚いので、窓が小さいとサイドボディが すごく分厚くなる。重厚感が出て高級感がある とも言えるが、狙った軽快感という点では分厚いサイドボディにより腰高で鈍重そうに見えて逆効果。 むしろ窓は大きい方が軽快に見えるのでは。(-5点)
・フォルム
先代は「ヤンチャ」(個性的)に見せようと菱形等のキャラクターラインで個性付けしたため「折り紙細工」と言われることも あったらしい。
新型はシンプリシティのテーマに沿って折れ線を減らして面の抑揚で勝負。ヤンチャが減って、大人っぽくなった。
グリルからリアへへ向かう面とフロントフェンダーからキャビンの上屋(グリーンハウス)へ向かう面の2つの組み合わせでフォルムを構成。
そのフロントから斜め上へ向かう凸面はAピラーを外しているのでルーフの荷重を受け止めておらず機能的に見えない。例えば 凸面がAピラーを支えていれば機能的に見えたのでは。
■フロント (20点/20点満点)
・ランプ
上下に段差があって、奥行きのある外形状。内部は黒を基調として その中にL字型デイライト。先代はデイライトが分かれていたが、新型は1体になって まとまりがある。
・グリル
先代に比べて全体が直立して冷却性能に寄与し、外周のメッキモールが なくなってシンプル化。テーマ通りだが、スピンドルグリルというスタイルの中での見直しなので次世代らしくはない。
・バンパー
フロントフェイスの立体感と空力特性のため凝った形状のフォグランプ ベゼル(エア インテーク)。特に翼端(ウィングレット)効果で縦渦を発生させる というのは面白い。(+5点)
しかし 黒いフォグランプ ベゼルがバンパー下端まで降りているので、前へ突き出たグリルの下回りがバンパーで支えられず、アゴが外れているように見える。(-5点)
・ボンネット
直立したグリルによってボンネットが長くなり、ノーズを伸びやかに見せている。
■サイド (15点/20点満点)
フェンダーアーチ周りに大きすぎないサイズのクラッディング(プロテクター)。その下側とサイドシルのクラッディングの間に すき間が空いているので機能的でないし、腰高に見える要因にもなっている。(-5点)
・ドア
フロントドアの下側でキックアップした強いキャラクターライン。独自性という点では特徴になっているが、ドアの途中で折れ曲がるのは機能的と言えず微妙。
・ウィンドウ周り
ベルトラインのキックアップが強いので斜め後方視界はイマイチ。ブラインドスポットモニターで ある程度はカバーできるだろうが。
空力設計は面白い。ベルトラインのドアパネルとガラスの段差で縦渦を発生させて流れを安定化。
・タイヤ、ホイール
ホイールはハブボルトを適用。デザイン上の影響は あまりないか。
■リア (10点/10点満点)
・ランプ
最近の流行の横一直線のランプ。その下側両端にレクサスらしいL字型ランプ。
・バンパー
空力設計に配慮。リアタイヤ後方のフィン、バンパーコーナーやバンパー下端のスリットで後流を安定化。
・ハッチ
レクサスに共通的な台形のモチーフ。新型は台形の上端がランプに かぶさっているような立体的な表現。
ロゴは従来の「L」のロゴマークではなく、新しくバラ文字で「LEXUS」。中央がXだと左右のバランスが良い。
・ウィンドウ周り
リアウィンドウは小さめで後方視界は微妙。オプションのデジタル ミラーでカバーできるだろうが。
■おまけ (デザインクリニック提案)
例としてレビューで気になる点について見直し案を提案する。モチーフは「凸レンズ」。(ちなみに レクサスRXのリファイン案は「上に凸のハーフレンズ」)
レクサスの先進性を「カッティング エッジ」(最先端)と捉えて、それを「シャープ エッジ」としてレンズの尖った縁(エッジ)で表現。
さらに高級車らしい上質感をレンズの滑らかな(スリークな)面で表現。
そして旧世代のデザイン スタイル「スピンドル グリル」から次世代の「スピンドルボディ」へ見直し。
主なポイントは以下の通り。
・プロポーションは ほとんど変更なし
・ シルエットは「凸レンズ」をモチーフに少し変更
フロントウィンドウを少し寝かせてシルエットをシャープに
サイドウィンドウを広げてサイドボディの重心を下げ軽快に
ルーフラインを なだらかにして クーペらしく
・フロントフェイスは次世代の「スピンドルボディ」
グリル周りをボディに つなげてグリルからの面の流れをボディ全体へ流す
グリルの角からのラインをサイドとリアへ通し、ボディ全体を一体化
(ボディの下側にアイキャッチを設けて低重心化)
・クラッディング(プロテクター)も見直し
フェンダーアーチ周りとサイドシルとの間の すき間をなくして実用的に
■注記
※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価
※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
※画像の出典
https://lexus.jp/models/nx/features/exterior/?anchor=Ext_Concept
https://lexus.jp/models/nx/configurator/
https://lexus.jp/magazine/20210409/652/car_conceptcar_v1.html
https://toyota.jp/harrier/compare/
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