自分のブログ名

超 カーデザイン レビュー

「日本車はカッコ悪い」なんて言わせたくない

素晴らしいカーデザインの御手本(ベンチマーク)のような名車たち

ピアッツァ

レビューの基準(ベンチマーク)のように考えているデザインの名車をまとめた

 ■レビューの基準(ベンチマーク)

  レビューするには基準(ベンチマーク)が必要だ。優れたデザインの基準として御手本のように考えている車をカテゴリー毎に まとめてみた。

  ここで選んだ車は美しいだけでなく新しいチャレンジがあり、個人的に各カテゴリーでベストと考えるものばかり。 

  また選ばれた結果を並べて見ると、筆者の個人的な好みが分かる。自己紹介代わりに見て欲しい。このブログでレビューする際には個人的な好みで偏らないよう心掛けているが、レビュー結果に偏り(バイアス)が あるかどうか読者が判断するための材料にもなるだろう。

■ベスト オブ ベスト: BMC ミニ

カーデザイン

<Ref. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8B_(BMC)>

・目的への確固たる意志と技術革新による機能美で不朽の名作に

  イギリスの技術者アレック・イシゴニス氏によるデザイン。まさに「形態は機能に従う (Form follows function)」そのもの。

  最小限のサイズで最大限のスペースを実現するため数々のメカニズムの技術革新を行い、その機能を そのままカタチにした。奇をてらうことなく、変わった装飾もなく、必要最小限の要素を組み合わせて、キャビンの大きい類まれなプロポーションが誕生した。感性を重視するデザイナーではなく、合理的なエンジニアだから出来たことかも知れない。

  技術チャレンジで最も勇気が必要だったのは前例のない小さな10インチのタイヤ。それをスペースの最大化のために あえて採用した。(タイヤを大きくすることばかり考えている最近のデザイナーに聞かせてやりたい)

カーデザイン

<Ref. https://b-cles.jp/car/bmc_mini.html>

  ミニの機能美と類まれなプロポーションは「Less is more」のミニマリズムと「かわいらしさ」を獲得し、不朽のデザインとなった。

  そして発売から41年間フルモデルチェンジすることなく生産が続けらた。その後はBMWによって「MINI」ブランドとなり、デザインのエッセンスを引き継いだニュー・ミニの生産が続けられている。 

■ベスト クーペ: いすゞ ピアッツァ(初代)

ピアッツァ

<Ref. https://web.motormagazine.co.jp/_ct/17299596>

・シックで未来的な「用と美」が高レベルで両立

  イタリアのジョルジェット・ジュジアーロ氏によるデザイン。彼がデザインした数多くのクーペの中でも この車が抜群にスタイリッシュだ。

  加飾もなく最小限の凹凸と最小限のカットライン(ミニマムオープニング)で形作られた角丸のフラッシュサーフェイスはシックで未来的。特にリアの丸い曲面が見事。発売後40年近く経った今でも古く見えない。当時このように先進的なデザインが実現したことは最新製造技術を把握しながらデザインするデザイナーとそれを製品化出来たメーカーの技術力の賜物だ。

<Ref.  ショーカーをショーカーのまま生産化してくれたいすゞの技術をジウジアーロはとてもほめていた。 https://jafmate.jp/blog/kyusya/post-101.html>

  乗員4名に十分なスペースと広くて視界の良いグラスエリアを持ちながら、長いボンネットから続く滑らかな面と真っ直ぐなラインが形作る伸びやかなウェッジシェイプはスピード感があり、「用と美」が高度に両立している。

  この車はFRだが、まるでFFのようなプロポーション。この頃のジュジアーロ氏はエンジンや駆動輪の配置によらず似たようなプロポーションのクーペをデザインしていた。それをベストと考えていたのだろうか。例えば、FFのフォルクスワーゲン シロッコ、MRのロータス エスプリ、RRのデロリアン MC-12。これらと見比べて見るのも面白い。

■ベスト ハッチバック: フィアット パンダ(初代)

パンダ

<Ref. https://fiat500.online/fiat-panda-giugiaro/>

・最小限のコストで最大限の効果

  この車もジュジアーロ氏によるデザイン。彼がデザインした数多くのハッチバックの中でも この車が最小限のコストで最大限の効果を上げている。低コストのために平面ガラス、鉄板グリル等を使い、パネル分割を最小限にした極めて簡素な造りながら、デザインの巧みさによって貧相に見えないどころか、美しく見える。そのデザインの素晴らしさは以下の逸話が示している。

<Ref. ジウジアーロ自身、後に初代フィアット・パンダを「最高傑作」と称した。 https://fiat500.online/fiat-panda-giugiaro/>

  ほぼ平面と直線で構成されていながら、プロポーション、面構成、素材使いの巧みさによってスタイリッシュ、キュートかつカジュアルに見える。ユーザー次第で様々な好感ポイントを見つけられそうだ。

  また同じデザイナーによる前述のピアッツァと見比べると、車のカテゴリーが違うのに似たようなデザイン手法が発見できて面白い。例えば、長めのボンネットからプレスドアに続く面やミニマムオープニングの真っ直ぐなラインによる伸びやかさ。シンプルな台形で大きめのグラスエリアによる安定感と解放感。バンパーの高さでボディ全周を区切ったワイド&ロー感等。

  さらにパンダは樹脂のバンパーとサイドパネルでボディ下側を全周取り巻いてカジュアル感も。

■ベスト スポーツカー: ランチア ストラトス

ストラトス

<Ref. https://citrus-net.jp/article/47717>

・宇宙へ飛びそうなのにラリー最強の機能美

  イタリアのマルチェロ・ガンディーニ氏によるデザイン。宇宙船のようなイメージを与えるコンセプトカーのベルトーネ ストラトス HFゼロから引き継いだ美しいウェッジシェイプ。そしてラリー専用車としてデザインされ、ラリーの世界タイトルを3年連続で獲得する最強の実用性。「用と美」が混然一体となって機能美そのものだ。

  例えば、ノーズをフロントガラスの延長のように急勾配で下げた山なりのウェッジシェイプは曲率の大きなフロントガラスと共に良好な前方視界(パノラマビュー)を与える。また回頭性を上げるため極端に短いホイールベースながら、慣性モーメント低減のためオーバハングのボリュームが小さいのでバランス良く見える。

  なおガンディーニ氏が同時期にデザインしたミッドシップカーであるランボルギーニ カウンタックフィアット X1/9にも山なりのウェッジシェイプ等の共通性が見られる。これらと見比べて見るのも面白い。

■ベスト オープンカー: ダイハツ コペン(初代)

コペン

<Ref. https://www.carsensor.net/contents/market/category_1491/_64765.html>

・軽自動車なのに驚きのリトラクタブル ハードトップ

  当時ダイハツの石崎弘文氏によるデザイン。 軽自動車サイズなのにリトラクタブルハードトップというのは驚いた。

  オープンにした時ちゃんと解放感を感じられるプロポーションリトラクタブルハードトップだとトップの大きさと収納スペースを減らすため、乗員の頭まで来るくらいピラーを後ろ寄りで寝かせた車が多い。しかしコペンは オープンカーらしさを重視してピラーを前寄りで立たせている。そんな大きめのトップを軽自動車サイズで尻すぼみの半楕円形ボディの中に収納出来るというのは すごい工夫だ。その お陰でトップを閉じた時のトランク容量も大きくて、物が積める実用性もある。

  子供が絵に描けるほど明快な前後対称の半楕円形フォルムは長寿命デザインを目指して安定感と親しみ易さを表現しようとしたデザイナーの意図通り、古びて見えない。

<Ref. ロングライフデザインを目指し、安定感や親しみ深さを表現 https://cardesign.jp/magazine/ishizaki_hirofumi_cardesign.html>

  また軽自動車サイズでデザイン代が少ないながら、フェンダーフレアも 立体的に表現され、タイヤで支える安定感もある。

  さらにライト形状、プレスライン等のディテールが前後対称なのも徹底していて、親しみやすさに効果的。全てに渡って記憶に残りやすいデザインだ。

■ベスト SUV: レンジローバー イヴォーク(初代)

イヴォーク

<Ref. https://kuruma-norigoro.net/landrover/valk/>

・ブランドイメージを踏襲しながら革新的なプロポーション

  ランドローバーのジェリー・マクガバン氏によるデザイン。四角く背が高いクロスカントリーカーというレンジローバーのブランド イメージとデザイン要素を踏襲しながら、巧みなプロポーションだけでクーペのようなスタイリッシュさを実現したのは革新的だ。

  他のレンジローバーの車と見比べると それらの共通点の多さが良く分かる。ブランドの可能性を広げた。

    真っ直ぐ後ろ下がりのルーフライン、真っ直ぐ後ろ上がりのベルトライン、それらが遠近法のパースのように見えてスピード感を与える。それらのラインとすぐ下のキャラクターラインが相まってアイキャッチとなり視線が集まるので、ボディの厚さに対する意識が薄れワイド&ロー感を与える。それには全幅に対して短めの全長や短めのルーフも寄与している。

  これだけ力強いプロポーションがあれば他のデザインは それを損なわないようにすれば十分だ。例えば、全てのピラーがブラックアウトされて前述のラインをクリアに見せている。

■ベスト セダン: ニッサン シーマ(初代)

シーマ

<Ref. https://www.gqjapan.jp/car/news/20180914/nissan-cima>

・日本らしさを表す流麗な柔らかさ

  当時ニッサンの若林昇氏によるデザイン。伸びやかなショルダーラインやトランクフード等の流麗で柔らかな曲面で包み込まれたフォルム。サイドに回り込まないランプの奥ゆかしさ。加飾のないリアランプの凹面も さりげないアクセント。これらは日本らしさを表現しようとしたデザイナーの意図通りに感じる。

<Ref.  日本人にしかつくれないクルマって何だろう? (中略)  日本が世界に誇るべき制作手法は、陶器のつくり方に凝縮されている。あの陶器のもつ温かさ、柔らかさは、定規やコンパスを使わないことで出てくる。 http://blue31cima.g2.xrea.com/story4.htm>

  日本的なものとしてシーマは鎌倉大仏をモチーフにしたらしい。ほぼ同時期に東大寺仁王像をモチーフにしたらしいトヨタ セルシオと見比べてみるのも面白い。

  シーマがニッサン セドリック・グロリアシリーズの最上位車種として位置づけられながら、思い切り良く加飾が少ない端正なデザインに出来たのは開発期間の短さが寄与しているかもしれない。

<Ref. ふつう、デザイン期間は10ヶ月かかる。しかし、そんな悠長なやり方はしていられなかった。(中略) 約2ヶ月後、クレイモデルが完成。(中略)つくり直しをさせる時間はまったくない。フロントグリルの一部を手直しさせるのが精一杯だった。 http://blue31cima.g2.xrea.com/story5.htm>

  セドリック・グロリアシリーズとの共通性のためホイールベースが短めだが、伸びやかなショルダーラインとオーバーハング上の小さめのボリュームにより あまり気にならないのが上手い。

■個人的な好みのまとめ

  選んだ結果に自分の好みによる偏り(バイアス)があるかどうか考えてみると、明快で端正なデザインに偏っている。

  これは要素の少ない方が力強いデザインになると思っているからだろう。「Less is more」

  例えば、1964年東京オリンピックのロゴは大好きだ。デザイン要素は丸と五輪マークとゴシック体の文字だけ。要素が少ないからこそ圧倒的に力強い。

■注記

  ユーザー目線で以下の3項目を重視して選んだ。だから美観等に偏った車は選ばれていない。

・用と美のバランス

・デザインの寿命

・車全体での統一感

  また似たような車があるとグッドチャレンジとしての加点がないので選ばれていない。

※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価

※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと

ホットドッグ