顔がデコッパチやレースのカーテンに見えて仕方ない
■まとめ (C 合計65点/100点満点)
レクサス RX (5代目)はレクサスの最量販車なので責任重大だが、あえて革新へチャレンジ。
レクサスのフロントフェイスのスタイルである「スピンドルグリル」を止めて、レクサスRZから始めた新しい「スピンドルボディ」へ挑戦。
しかし結果はスピンドルボディを使いこなせている とは言えない。
フロントエンドの「スピンドル」よりノーズ先端が位置が高く、ボンネット中央が盛り上がっているため、車格の見栄えはするものの まるでオデコだけが出っ張った「デコッパチ」みたい。
そしてグリルをボディに馴染ませる「シームレス グリル」のアイデアでグリルの周辺に菱形の穴や凹みや切り欠きを たくさん付けたが、その菱形が小さく、面取りが丸っこいので まるで「レースのカーテン」みたい。
新型のウリは「Lexus Driving Signature」と称した上質な乗り心地、高い静粛性、接地感と重厚感のある乗り味らしい。それなのにノーズやルーフエンドが高くて目立つので高重心に見え、乗り心地や乗り味の表現としてマイナス。もっとワイド&ローの表現を追求する必要が あったのでは ないだろうか。
■主な比較対象車
・レクサス RX (先代)
・レクサス RZ (同門車)
・レクサス LC (同門車)
・トヨタ ハリアー (同門車)
・BMW X6 (競合車)
・メルセデスベンツ GLEクーペ (競合車)
■キャラクター
・ポジション
2022年モデルチェンジしたレクサス RX はトヨタの言う「プレミアム クロスオーバー」。1998年に初代(トヨタ ハリアーと姉妹車)がデビューしてから時代が経過したため 新型は「革新への挑戦」が全体テーマ。RXはレクサスで販売台数トップのモデルなので責任重大だ。
用途
多彩なパワートレーンで走りの楽しさを追求。上質な乗り心地や高い静粛性を大事にしながら、接地感と重厚感のあるドライブフィール「Lexus Driving Signature」を継承・進化したそうだ。
・ユーザー
主なユーザーは「大人」。上質なものを知っている方々だそうだ。
・デザイン要求
つまり上質な乗り味の楽しさを表現する新規性のあるデザインが必要だ。
■コンセプト (20点/30点満点)
・テーマ
キーワードは「ALLURING(アルアリング)×VERVE(ヴァーブ)」。魅惑的な面質と力強い実用性という意味。これは初代の「ジェントル アンド ワイルド」と似たようなテーマ。しかし具体的な表現方法は曖昧だ。
そしてLexus Driving Signatureの乗り心地や乗り味の表現方法も曖昧だ。もちろんデザインの基本動作として低重心とスタンス(踏ん張り)を表現しようとしているが、ディテールばかりでプロポーションまで徹底できていない。
例えば 見栄えを求めてノーズの先端を高くしたので重心が高く見え、乗り味の良さをイメージさせるワイド&ロー感はイマイチ。もっと低重心を徹底する意識が必要だったのでは。(-5点)
・スタイル
レクサスのフロントフェイスのスタイル「スピンドル グリル」の代わりに、電気自動車(EV)であるレクサス RZから始まったグリルを最小限とする「スピンドル ボディ」を適用。スピンドル(紡錘)はフロントの面全体で表現し、グリルは その一部とするスタイル。
スピンドルグリルを使いこなすのに何年も かけてきたことを考えると、新しいスピンドルボディを適用するには かなり しっかりと考える必要がありそうだ。
ところが結果は車格の見栄え重視でノーズ先端を高くしたため面のバランスがチグハグ。フロントの「スピンドル」やランプよりノーズが高いのでオデコが出っ張った「デコッパチ」に見える。まるでナポレオンフィッシュみたいだ。(-5点)
・アイデア
グリルはメッキを使わず、フロントの面とグラデーションで接続する「シームレス グリル」というユニークなアイデア。発想は面白いがオモチャっぽくならないよう具体的な表現方法が問題だ。
・パッケージング
サイズは先代と あまり変わらないが、全幅とホイールベースは少し増えた。ホイールベースを伸ばしたのは上質な ゆとりのためらしい。
■全体デザイン (15点/20点満点)
・プロポーション
室内スペースや視界等の実用性とボンネットの立派さ等の見栄えに配慮したプロポーション。
ルーフはルーフスポイラー状に後ろへ伸ばしていて室内スペースにも配慮。
ベルトラインは先代よりフラットにして高級感。
Aピラーは先代より後方へ移動して前方視界を改善し、ボンネットを長く見せる。
ボンネッはフラットに近づけて前方見切りを改善し、車格感にも寄与。ボンネットの高さの絶対値は先代より低くなっているらしいが、先端が上がっているので重心が高く見えて微妙。
・フォルム
ボディ全体に凹凸の効いた立体感が あるのは力強さの表現か。しかしフロントはシャープな直線的凹凸、サイドとリアは なだらかな曲線的凹凸なので全体の統一感が乏しい。
また ボディの あちこちにキャラクターラインがあり、あまり整理されていない印象。例えばショルダーラインがドアとフェンダーで行き違い。テーマの魅惑的な面質とは言い難い。(-5点)
■フロント (10点/20点満点)
・ランプ
2段になった黒基調の外形状の中にL字型デイタイムランニングライトと小さなLEDランプ。レスサスらしい表現。
・グリル
「シームレス グリル」というアイデアを菱形のモチーフで実現。グリル内は菱形の模様、グリルの上は菱形の穴、グリルの横は菱形の凹面や切り欠き。
その菱形が小さく、面取りが丸っこいため まるで「レースのカーテン」みたいに見えてオモチャっぽい。特にグリルの上の穴が末広がりなので その印象を強めている。(-5点)
・バンパー
ダミーのエアインテークは この車だけではないが微妙。ここに穴を開けると空力帝に不安定になる とのことだが、そこは しっかり有効なボディ形状に造り込んで欲しいところ。
・ボンネット
ボンネンットの中央を盛り上げた立体的な形状。見栄えするが、低重心には反している。例えばボンネット左右との段差を少し控えたり、ノーズ先端を少し下げたたりした方が良かったのでは。(-5点)
■サイド (10点/20点満点)
・ルーフ
ルーフ両端の段差とDピラーのコーナー絞りで斜め前方から見た時クーペっぽく見せている。
その御蔭でルーフ中央のリアスポイラー部分が後ろに突き出てしまった。唐突で魅惑的とは言い難い。(-5点)
・フェンダー、ドア
リアドアからリアフェンダーフレアにかけて大きく盛り上げ、高出力モーターを搭載した後輪を強調。
フェンダーアーチにはボディ同色のガーニッシュ。無塗装プロテクター(クラッディング)より高級感を表しているのだろうが、ボディ同色では蛇足に見え、この車だけではないが微妙。
・ウィンドウ周り
Dピラーの一部をブラックにして すき間を開けた表現はレクサス LCと同様。LCのようなクーペには合うかもしれないが、すき間はテーマの力強さに似合わない。
その すき間を形成するブラックパネルはCピラーの方まで伸びている。リアクォーターウィンドウのように見せかけているようでフェイクっぽいし、斜め後方視界にもマイナス。(-5点)
例えば リアクォーターウィンドウを広げた方が良かったのでは。
・ホイール
セレクタブル カラートリム ホイールという脱着できる加飾パーツをオプションで用意したそうだ。
■リア (10点/10点満点)
・ランプ
外形状は一直線で左右の端を広げたワイド感。
内部のグラフィックはL字の模様がグラデーションのように繰り返されている。くどくないか気になるが、レクサス好きなら L字が多いのは うれしいのだろうか。
・バンパー
ダミーのエグゾーストパイプを付けないのは潔くて悪くない。
しかしダミーのエアアウトレットは この車だけではないが微妙。ここに穴を開けると空力帝に不安定になる とのことだが、そこは しっかり有効なボディ形状に造り込んで欲しいところ。
このダミーアウトレットからの段差を下まで伸ばしているのでリアエンドの下側だけ「出っ尻」のように見えるが、アンダーガードのような表現により出っ尻感は軽減されている。
・ウィンドウ周り
ルーフスポイラーからリアウィンドウ左右に伸びる門型のスポイラー。見た目的には蛇足のように感じるが、空力安定への効果は大きいらしい。もしかしてDピラーを丸めたせいで空力不安定になり このスポイラーが必要になったのだろうか。
■おまけ (デザインクリニック提案)
例としてレビューで気になる点について見直し案を提案する。モチーフは「上に凸のハーフレンズ」。
レクサスの先進性を「カッティング エッジ」(最先端)と捉えて、それを「シャープ エッジ」としてレンズの尖った縁(エッジ)で表現。
さらに高級車らしい上質感をレンズの滑らかな(スリークな)面で表現。
ハーフ レンズの上に凸の安定感、地面に接するシャープエッジのグリップ感、磨かれた面の高精度感は Lexus Driving Signature の乗り心地や乗り味に通じる。
そしてデコッパチのスピンドルボディを見直してフロント全体でスピンドルボディを表現。
主なポイントは以下の通り。
・ノーズ先端を下げて低重心に見せ、フロント全体でスピンドルボディを表現
ボンネット、グリル、ランプ、エアインテークの全ての面がノーズ先端へ集中するよう配置
そしてノーズ先端、ランプ先端、エアインテーク先端の形状をシャープに、ボンネットやバンパーの面を滑らかに
・ルーフスポイラーをブラックアウトしてルーフランを滑らかに
・リアクォーターのブラックパネルをなくし、サイドウィンドウを広々とした流線型に
サイドウィンドウの先端と後端をシャープに、その間は なだらかに
そしてサイドウィンドウの周囲のメッキモールはシルバーではなくシックなブラック メタに
・ボディ全体のキャラクターラインを減らして滑らかに
・フロントランプは2段を1段へ整理し、シャープさを強調
・グリル周りの細かい穴や凹みをなくし、力強いクロスバーのグラデーションへ
メッキはシルバーでなくシックなブラック メタに
(※トヨタ bZ4Xのデザインクリニック提案と同様のアイデア)
・ボディ同色のフェンダーアーチのガーニッシュをなくしクリーンに
代わりにフェンダーアーチのラインをシャープに
・リアコーナーの段差をなくして リアエンドを なだらかに
・リアランプはシャープエッジに
■注記
※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価
※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
※画像の出典
https://lexus.jp/models/rx/features/exterior/
https://lexus.jp/models/rx/configurator/