顔はレクサスだが 身体はランドクルーザーと同様。差別化が課題
■まとめ (B 合計75点/100点満点)
レクサス LX (4代目)はレクサスNXから始まったレクサスの次世代デザインの方向性「機能的本質や動的性能に根差したプロポーションや独自性の追求」に沿ってデザイン。そして 歴代の価値である走破性のための力強いプロポーションに基づき、それに現代的な洗練を追加するアイデア。
さすがにフロントフェイスはレクサスらしい。最新のデザイン スタイル「スピンドル ボディ」ではなく、従来からの「スピンドル グリル」だが、周囲のメッキフレームを なくした「フローティング バー」で新鮮。
しかし基本機能はトヨタ ランドクルーザー(ランクル)との姉妹車として並行開発。結局 ランドクルーザーと似たようなデザインになってしまった。価格が倍以上違うというのにデザインの差別化が弱いのは残念。
シャーシー等の共用は ともかく、ドアまで共用なので フェンダーを含めたサイドボディがランドクルーザーと ほぼ同じ。ボンネット中央の凹みも同じアイデア。
レクサスは先代について ランドクルーザーの機能美とLXのラグジュアリー感のミスマッチ という課題認識を持っていたらしいが、新型でも解消できていない。
例えば ランドクルーザーとの共用部品や共用アイデアを減らして差別化できないものだろうか。
ちなみに 画像生成AI 「Stable Diffusion」で生成してみたら こんな感じ。
■主な比較対象車
・レクサス LX (先代)
・レクサス NX (同門車)
・レクサス RX (同門車)
・トヨタ ランドクルーザー (姉妹車)
・レンジローバー (競合車)
・メルセデスベンツ Gクラス (競合車)
■キャラクター
・ポジション
2022年に14年ぶりでフルモデルチェンジしたレクサス LXはトヨタランドクルーザー(300系)をベースにした姉妹車。レクサスのSUVとしてはフラッグシップ。
主な市場は中東とロシア。特に悪路走破性が必要な国でウケているようだ。
一方 北米では 悪路走破性が さほど必要ではないらしく、販売台数が あまり多くないそうだ。北米には もっと車格の見栄えが必要なのかもしれない。
・ユーザー、用途
中東では砂漠を高速で走るらしい。そのため求められる性能はランドクルーザーと同様に「信頼性」、「耐久性」、「悪路走破性」。
そしてランドクルーザーと差別化する特性は「豪華」、「快適」、「立派」。
・デザイン要求
つまりランドクルーザーと同等の走破性等を示しながら、ランドクルーザーより上質で立派に見えるデザインが必要だ。
さらに販売の少ない北米でウケるには 車格の見栄えが望ましい。
■コンセプト (25点/30点満点)
・テーマ
キーワードは「Dignified Sophistication」。直訳すると「凛とした洗練」。
威厳ある力強さと洗練された深みという意味らしい。言い換えると威厳は歴代の伝統、洗練は現在のモダン。
・アイデア
レクサスNXから始まったレクサスの次世代デザインの方向性「機能的本質や動的性能に根差したプロポーションや独自性の追求」に沿ってデザイン。
そして走破性のための力強いプロポーションに基づき、それに洗練された面を追加するアイデア。
・スタイル
従来からのレクサスのデザイン スタイル「スピンドル グリル」だが、グリル周囲のメッキフレームを無くして、ボディに一体化するような新しいアイデア。
次世代の「スピンドル ボディ」は間に合わなかったか。
・パッケージング
座席は2列5人、3列7人に加えて2列4人を追加。
サイズは先代を ほぼ踏襲。特にランプ ブレーク オーバー アングルに関連するホイールベースは変化なし。全長はランドクルーザーより長くて車格の見栄えがする。
走破性に関わる角度は姉妹車のランドクルーザーより劣っている。特にアプローチ アングルはランドクルーザーより かなり小さい。走破性を重視するなら ここだけでも対策すべきだったのでは ないだろうか。(-5点)
■全体デザイン (15点/20点満点)
・プロポーション
キャビンはランドクルーザーと同様、Aピラーが後方寄りの「キャブ バックワード」。フェンダーフレアの張り出しが強いのもランドクルーザーと同様。
それでもランドクルーザーと差別化するため ノーズの先を長くし、ルーフエンドとリアウィンドウを少し傾けた。これで十分差別化されているかと言うと微妙。
・フォルム
ゴツゴツ(ラギッド)と なだらか(スムース)が混在してミスマッチ。
ボンネットやサイドボディはランドクルーザーと ほとんど同じ要素なので差別化されていない。その他の個所で差別化しようとスムースにしているが ラギッドな個所に比べて印象が弱く、全的に差別化が弱い。(-5点)
例えば メルセデスベンツ Gクラスはラギッドに徹底、ランドローバーはフラッシュ サーフェイスでスムースに徹底。スタイルが徹底していて全体の統一感がある。
・カラーリング
カラーの選択肢はモノトーンが ほとんど。オフロードに似合いそうなのは「テレーン カーキ マイカ メタリック」くらいか。高額車こそリセールを考えず個性的な色に出来る気もするのだが。
■フロント (15点/20点満点)
・ランプ
小型のLEDヘッドランプとレクサスらしい「L」字形デイライトの組み合わせで立体感がある。
・グリル
メッキフレームのないフローティンバーによるスピンドルグリルは新しい表現。ボディの面に1体化しつつ 立体感もあって新鮮。(+5点)
しかし表面のメッキのために薄く見えるので「 7枚刃のヒゲ剃り」と言われたりすることもある。例えば もっと強度感のあるバーだと もっと良かったのでは。
・バンパー
グリルが浮き上がったフローティンバーなので それに隣合うバンパーが片持ちに見えて強度が弱く見える。
それにバンパーの下側の ぶつけ易い位置にランプやメッキを配置するのはオフローダーに似合わない。(-5点)
・ボンネット
ボンネット中央の凹んだレリーフはランドクルーザーと同じく前方見切りのため。
例えアイデアは同じだとしても形状は もっと別にした方が差別化のために良かったのでは。(-5点)
■サイド (15点/20点満点)
・ルーフ
ムーンルーフを標準装備。
フェンダーフレアの形状やホイールアーチ周りのモール(ガーニッシュ)がランドクルーザーと同様。目立つ所なので何か工夫が欲しいところ。
LXのオフロードというグレードはホイールアーチ モールがツヤ有りブラック塗装。目立つのには役立つが オフロード走行に似合わないのでは。無塗装ブラックが安っぽい ということなら 例えば 金属プレートとかは どうだろうか。
・ドア
ドアはランドクルーザーと共通。共通化による経済性追求が表に出ているのはプレミアム感が薄れるのでレクサス ブランドとして残念。また樹脂ステップもランドクルーザーと同様。(-5点)
なお電動ステップも検討したそうだが、信頼性、耐久性、悪路走破性に支障があるので採用しなかったそうだ。
・ウィンドウ周り
サイド ウィンドウの後端を尖らせてレクサスらしいアイキャッチに。その尖った位置が高めなので腰高感を感じるかどうか微妙。
それにリアウィンドウの角と一致しているのでDピラーが細く見えて強度感が微妙。
・タイヤ、ホイール
レクサス最大となる22インチのグレードもある。オフロードにはインチダウンの方が似合いそう。
■リア (5点/10点満点)
・ランプ
両端のランプは「L」字形のストップランプでレクサスらしさ。そのうえ左右に つながる横一文字のランプでランドクルーザーと差別化されている。
・バンパー
ダミー エグゾーストパイプは本物感が薄れてイマイチ。(-5点)
・ハッチ
先代に比べてクリーンなカタチ。
最近のレクサス車と同様にハッチの中央にバラ文字の「LEXUS」ロゴ。
■おまけ (デザインクリニック提案)
例としてレビューで気になる点について見直し案を提案する。
テーマは「ランドクルーザーとの差別化」。ゴツゴツした(ラギッドな)ランドクルーザーと差別化して滑らかさ(スリークさ)で上質さを表現。
モチーフは「シャープエッジの台形」。レクサスらしいカッティングエッジ(時代の最先端)とオフロードでの安定性を表現。
見直し案の主なポイントは以下の通り。
・シルエットはボクシーへ見直して車格が大きそうに見栄え
ノーズを伸びやかにしてランドクルーザーと差別化
ルーフエンドとリアウィンドウをスクエアにして3列シートでもスペースが広そうに
逆にフロントの下側は少し丸めてアプローチアングルを少し増加
・ボンネットやサイドボディ等はランドクルーザーと差別化
ボンネットとサイドボディはラインやレリーフを減らしてクリーンに
(前方見切りのためにボンネット左右のラインは深めに)
プロテクターやサイドステップは樹脂ではなくメタリックで高級感
強度のありそうな太い台形のDピラー(重心下げ腰高感なくす)
・フロントフェイスも最先端の新しさへ
太くて立体的なクロスバーによる強度感のある「スピンドル ボディ」
新しいカタチの逆「L」字型ランプ(先代や他のレクサス車と「L」の上下が逆)
縦長のヘッドランプは全高の高いLXの個性に合わせた新しいアイデア
■注記
※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価
※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
※画像の出典
https://lexus.jp/models/lx/configurator/
https://toyota.jp/landcruiser/?padid=from_landcruiser_grade_bottommenu_top
