若者ウケ(?)しようと厚化粧するよりスッピンの骨格で勝負した方がスバルらしい
■まとめ (C 合計65点/100点満点)
スバル クロストレック(スバル XVから通算で4代目)はスバル XV(先代)とサイズやプロポーションは ほとんど同じでキープコンセプト。スバル インプレッサと金属ボディは共通。最低地上高のリフトアップとプロテクター(クラッディング)等の樹脂部品でインプレッサと差別化。
「アウトドア」をキーワードに先代で課題だったSUVらしさを対策した。と言ってもサイズやプロポーションは先代踏襲なのでスペースや走破性は変わりない。
代わりにフォルムのエッジをシャープにし、キャビンの絞り込みでフェンダーフレアの張り出しを大きく見せて新モデルの新しさを表現。
そのうえ若いユーザー層の獲得を目指したためか スバルの考える「Fun(楽しさ)」や「遊び心」によってプロテクターやグリルを派手な意匠(グラフィック)にした。
しかし 頭デッカチで不自然なカタチのフェンダー プロテクター等による「厚化粧」は最初 面白いと思っても 機能的でないため すぐに飽きがきやすい。(デザインの時間 耐久性が低い)
つまり年取った大人の考える若者向け。今どきの若者は もっと本物志向だろう。
そもそもスバルのブランドの特長(ウリ)は質実剛健な安定性や安全性。それには機能的なデザインが似合うのであって 意匠的な遊び心は似合わない。
アウトドアがキーワードのクロストレックなら ことさら装飾的なものを避けて 機能的でないと。
まあ 内装部品にアウトドアらしい「山」のモチーフを滑り止めとして入れるのは実用性も有るし、ユーザーのみ分かる面白さなので 遊び心として悪くないが。
やはり 表面の意匠でSUVらしさを無理に出そうとするより、スバルのデザイン スタイル「Dynamic × Solid」や「BOLDER」にのっとった「骨格」を見せた方がスバルらしくて良いのでは。
例えば、メカニカルな頑強さを表現する「六角形」のモチーフで、軽快な走行性能を表現するワイド&ローのボディを SUVぽくリフトアップしたように見せるデザインは どうだろうか。
ちなみに 画像生成AI 「Stable Diffusion」で生成してみたら こんな感じ。
■主な比較対象車
・スバル XV (先代)
・スバル インプレッサ (姉妹車)
・スバル レヴォーグ (同門車)
・ホンダ ZR-V (競合車)
・マツダ CX-30 (競合車)
■キャラクター
・ポジション
2023年に新発売したスバル クロストレックは従来のスバル XVから名称変更して 世界共通にした。「クロストレック」はクロスオーバーとトレッキングを合わせた造語で、日本でもアウトドアらしさをアピールする狙いがある。
元々のXVの成り立ちはスバル インプレッサをリフトアップした派生モデルだが、最近はSUV人気でXVの方が売れ線になった。だから今回のモデルチェンジでは これまでと逆にクロストレックの方がインプレッサより先に開発。
・ユーザー
手薄になっている若いユーザー層の獲得が目標。
市場調査を行なったところ アクティブな趣味を持っていて、日常から楽しい生活を送っている人々だと見えてきた。
しかし検討を進めても「これをやれば若い人がクルマを買ってくれる」という回答を導き出すことはできなかった。
・用途
目的地までの運転が楽しくなる走行性能と安全性を個性にしたアウトドア・アクティビティの「相棒」を目指した。
・デザイン要求
つまりオフロードの走破性が良さそうで 若者ウケするデザインが必要だ。
しかし何が若者ウケするか具体的に分かっていないのが気がかり。ヘタに若者ウケを狙って空回りしそう。
■コンセプト (25点/30点満点)
・テーマ
インプレッサと共通の「FUN・愉しさ」に加えてクロストレックでは「アウトドア」がキーワード。
それを より具体化すると 共通の「身軽に走る軽快感」、クロストレックでは「頼もしくありながら、身軽で躍動的」という意味。SUVではユーティリティ(スペース)を重視する車種が多いが、クロストレックは走行性能を重視。
そして高級感よりも「遊び心」を重視。これはオモチャっぽくなりそうで 独りよがりの空回りにならないか要注意だ。
・アイデア
インプレッサとの差別化でSUVらしさを表現するため プロテクター類の追加で縦方向のサイズ感を強調。
インプレッサとの共用化という制約で自由度が少ないのは仕方ない。それにしても せっかく新型はクロストレックがインプレッサより先に開発できるのだから クロストレック固有のアイデアを もっと出すべきでは。(-5点)
・スタイル
スバルのデザイン スタイル「BOLDER」を強調していないが、以下の通り一応は適用している と言えそう。それでも 他の車種にも当てはまる ありきたりな表現なのでクロストレックの個性としては物足りない。
だから BOLDERを体現したコンセプト カー「VIZIV」シリーズでクロストレックにピッタリなモデルが ないのは残念。クロストレックよりインプレッサ重視だったんだろうな。
・大型ヘキサゴングリルから始まる立体的なフェイス
・スピード感ある張り出したフェンダー
・絞り込まれた軽快なキャビンと大地への踏ん張り感
・パッケージング
サイズは先代(スバル XV)と ほぼ同じで、わずかに全高が高くなっている程度。ミドルサイズに近いカサ上げハッチバックのようなユニークなサイズを踏襲。競合車とは差別化できている。
■全体デザイン (20点/20点満点)
・プロポーション
プロポーションはキープ コンセプト。微妙に寸法を変えて印象を強めている。
ルーフラインは 先代と同様に なだらかに丸まった流線型。ルーフを長めにしてスペースとのバランスも考慮。
ボンネットは先代よりノーズ先端側を高くして車格の見栄えにも配慮。
ベルトラインは先代よりも後ろ上がりの傾斜を強くしてウェッジ シェイプによるダイナミック感。
上屋(グリーンハウス)は先代よりも絞りを強くして フェンダーフレアの張り出しによる後輪の踏ん張り感(スタンス)を強調。
・フォルム
フォルムもキープコンセプト。それでも折れ目がシャープになっていたりして新しく見える。
最近のデザインのトレンドに比べると ラインが多くて 折り紙細工のよう見えるかもしれないが、これもスバルらしさと考えると悪くない。
■フロント (5点/20点満点)
・ランプ
グリルから伸びているガーニッシュの延長線を強調したグラフィック。おかげでスバルの特徴的なボクサー エンジンの象徴としての「コ」の字ランプが分かりにくくなり、スバルらしさが薄れてしまった。そのうえ ヘッドランプの目の焦点が はっきりしなくて目力が弱い。(-5点)
・グリル
アッパー グリルは スバルのデザイン スタイルである六角形の「ヘキサゴン グリル」から六角形のメッシュが はみ出てきたような力強さのある面白い表現。そこに中央のスバルの六芒星マークから左右に伸びるガーニッシュ(シグネチャー)が食い込んでいる。
メッシュやシグネチャーで新しい表現にチャレンジしているようだが、グリルから はみ出したり、食い込んだりしているため グリルやフロントフェイスの立体感を損なって ボディが薄っぺらく見える。(-5点)
・バンパー
ボディのコーナーに大きなプロテクター(クラッディング)。その上側がグリル側へ横へ伸びた 頭デッカチで不自然なカタチ。若者ウケを狙って派手にしようとしたのかSUVらしさを無理やり出そうとしたのか。もっと機能的なカタチの方がスバルらしいのでは。(-5点)
・ボンネット
フェンダー側に稜線をつけてメリハリ感。前方見切りにも良さそう。
■サイド (10点/20点満点)
ホイールアーチ周りのプロテクターは上側が広がった 頭デッカチで 不自然なカタチ。機能的に見えないし、重心が高く見えて、スバルらしい安定感にはマイナス。(-5点)
クラッディングの表面は 空力対策で乱流制御のためだろうか シボが付いて鮫肌なのは面白い。
・ウィンドウ周り
サイド ウィンドウの後半が細くなった流線型の形状。後ろ上がりのベルトラインやキックアップで 斜め後方視界が気になるが 一応 視界に配慮しているらしい。
サイド ウィンドウの尖った後端とリアウインドウの上端の位置が一致しているため Dピラーの上側が細くなってしまった。頼もしさがテーマにしては強度が良さそうに見えてイマイチ。(-5点)
■リア (5点/10点満点)
・ランプ
フロントランプと違って「コ」の字がハッキリした形状。スバルらしい。
・バンパー
ボディのコーナーに大きく上へ伸びたプロテクター。 頭デッカチで不自然なカタチ。
リア ボディを切り上げて デパーチャアングルを大きく見せる意図らしいが、むしろ付け足したプロテクターでデパーチャーアングルを狭めているように見えて逆効果。(-5点)
・ハッチ
ナンバープレートの周りが六角形。
内装部品に山をモチーフとしたテクスチャーを付けているは滑り止めやキズの防止という機能もあり面白いデザイン。
・ウィンドウ周り
六角形っぽいカタチの窓。後方視界は悪くない。
■おまけ (デザインクリニック提案)
例としてレビューで気になる点について見直し案を提案する。
テーマはSUVらしい走破性をイメージさせる「メカニカルな力強さ」。それを表すモチーフは「六角ボルト&ナット」。
見直し案の主なポイントは以下の通り。
サイドシル等のプロテクターでSUVらしいリフトアップ感を
(ワイド&ローのボディを そのまま全体リフトアップして見せる)
ボンネットの先を少し伸ばしてスピード感と車格の見栄えを
・フォルムは六角形をモチーフに変更して力強い表現に
サイドウィンドウやフェンダーフレアを六角形に
ヘキサゴングリルからの流れをリアまで真直ぐ通してシャープ感
・フロントフェイスにも力強さを
グリルに立体感
ヘッドランプは目力のあるスバル御得意の「ホークアイ」を薄型で
■注記
※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価
※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
※画像の出典
https://www.subaru.jp/crosstrek/crosstrek/
https://www.subaru.jp/crosstrek/crosstrek/design/exterior
https://www.subaru.jp/brand/technology/design/
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