ツール的でSUVとしては大正解。先代の手描きぽいフォルムから定規ぽくなった
■まとめ (A 合計95点/100点満点)
スズキ ハスラーはフルモデルチェンジ(2代目)で本格的なアウトドア用品を目指して機能的なデザインになった。ハスラーのアイコンである丸いランプと四角いグリル以外はガラッと変わった。
四角い箱になった幾何学的フォルムはキャビンのスペースを拡大したうえに面がクリーンに整理された。6ライトになった窓は視界を確保。プロテクターぽいバンパー、角ばったフェンダーフレア、「ガソリンの携行缶」をモチーフに厚みのあるドアピラー等は強度感を表現。
新型はアウトドア用のツールとしてスキのない合理的デザインだ。スキが ないからこそユーザー層を限定するとも言えるが、SUVとしてなら これで大正解。
ところでヒットした先代のユーザーの大半は女性だそうだ。女性が街中で乗っている姿を良く見かける。彼女たちはアウトドア用ワゴンというより、ちょっとオシャレで見栄えのする軽セダンを求めたのでは。(軽自動車は乗用ハッチバックをセダンと言う)
そういう感性の点から見ると、あらためて先代デザインのバランスの絶妙さに気づく。タフさとスタイリッシュさと可愛らしさを上手く融合させ、ユーザーによって自分の好きな要素を見いだせる懐の広いデザインだ。だからこそ多くのユーザー層にウケて、予想を超えたヒットになったのだろう。
そんなオシャレな軽セダンを求めるユーザー層にとって、新型のアウトドア用ワゴンとして合理的なデザインは四角四面で無骨に見えそうだ。
かと言って他のスズキの車で このユーザー層の受け皿は難しそうだ。スズキ アルト ラパン(3代目)が候補だろうが、ハスラーに比べてサイズが小さい。次期スズキ ワゴンR (7代目)もセダン回帰しなさそうだし。新しいモデルが必要かもしれない。
■主な比較対象車
・スズキ ハスラー (先代)
・スズキ ジムニー (同門車)
・スズキ スペーシア ギア (同門車)
・スズキ クロスビー (同門車)
・ダイハツ ロッキー (参考車)
■キャラクター
・ポジション
予想を超えてヒットして、納期の長さが話題となった軽SUV、スズキ ハスラーは2020年に初のフルモデルチェンジ。
クロスカントリー車のスズキ ジムニーやSUVぽいスーパーハイトワゴンのスズキ スペーシア ギアと比べると、ハスラーは走破性とスペースが ちょうど2台の中間のポジションだ。
・用途
先代が「遊べる軽」、新型は「もっと遊べる」がキーワード。具体的にはアウトドアの世界だそうだ。アウトドアの世界を車の機能に言い換えると、やはり走破性とスペースか。
・ユーザー
スズキは特にターゲットユーザーを設定していないそうだ。先代は最終的には女性ユーザーが過半数だったそうだ。ユーザー調査結果によると女性も四角い車を可愛いと好意的だそうだ。
・デザイン要求
つまりターゲットユーザーを絞らず、先代のニッチとは言えないほどのマーケットの広がりをキープするデザインが求められる。
キープコンセプトにするにしても、先代デザインが絶妙なバランスだったので簡単ではない。スズキは先代のデザインをポップで可愛いと評しているが、それほど単純ではない。
先代は相反する要素を上手く融合させた。例えば、直線的で明快だが、角を丸めた まろかやなシルエット。ブリスターフェンダーぽいショルダーラインと 穏やかなドアのレリーフでメリハリのあるフォルム。A、Bピラーでワイド感を与えつつ、太いCピラーで安定感のあるグリーンハウス。これらを いじるとバランスを崩しそうだ。
■コンセプト (30点/30点満点)
・テーマ
「アーバンアウトドア」がキーワード。日常でアウトドアスタイルを楽しむ という意味らしい。トレンド調査で、アウトドア用品が街中で使われているファッションを見て そう言っているようだ。
しかし それだけだとモノは単にアウトドア用品。日常性をどう取り入れるとか車への適用の仕方を具体化しないとテーマにならないのでは。(-5点)
例えば、ダイハツ ロッキーはアウトドア用品のシンプル化を とらえてクリアな面構成をデザインしようとしていた。(結果はクリアでなく、寄せ集め的になってしまったが)
・アイデア
先代のキープコンセプトで1/1モックアップを作った段階で、新型の進化が十分でないためデザインをやり直したそうだ。トヨタ RAV4も同様に1/1まで進んだ時点でリセットして やり直している。SUVのデザインはスタイルの自由度が高いので、より難しいのだろうか。
そしてアウトドア用品のタフでシンプルな力強さを取り入れ、機能的で幾何学的なデザインになった。結果的には角張ったジムニーに近づいた。逆に言うと、好評だった先代デザインはリセットされてしまった。
新型がアウトドア用のワゴンとしてデザインを鮮明にするのはニッチャーとしては正解だ。ターゲットユーザーに より強く響く。ジムニーのようにデザインの寿命も長いだろう。ただ先代はニッチャーを超えた幅広いポジションだったため、ユーザー層の絞りすぎが懸念される。(-5点)
・モチーフ
頑丈さを表現するため「ガソリンの携行缶」をモチーフに、2mmぐらいの板厚がある鉄板を曲げたような形状にしたそうだ。
ジムニーのように鋭角なエッジで強度を表現するのは一般的だが、鉄板の厚さと強度感を丸さ(曲率)で表現するアイデアは面白い。(+10点)
・スタイル
先代の丸いランプと四角いグリルはハスラーのアイコンとして残した。スズキ クロスビーも含めてハスラーブランドとして育てていきたいそうだ。目につくところだけにブランディングに効果的だ。
■全体デザイン (20点/20点満点)
・プロポーション
先代に比べて全体に四角くなった。窓が直立に近づき、キャビンが大きくなってスペースを広げた。ボンネットとベルトラインは水平に近づき、高さもそろって整然とした。またボンネットが高くなり、立派に見える。ワゴンとしては合理的だ。
スペースは広がったが、走破性については特に変わって見えない。先代でもクロスオーバーとしては十分だったか。
・フォルム
先代に比べて幾何学的で明快になった。面は平坦になり、角はどこも同じような角丸面取り。特にリアウィンドウが直立したこととショルダーラインがなくなった影響は大きい。先代と比べると立体感がなくなったが、シンプルな四角い箱というのはコンセプト通り。
・カラーリング
先代同様にツートンカラーを推している。ルーフからリアクォーターウィンドウ周りを塗り分ける方法は、昔のジムニーのソフトトップやハードトップのイメージを取り入れたそうだ。客室と荷室の区別を明快にしていて印象的。
■フロント (15点/20点満点)
・ランプ
アイコンとなるところは基本的に先代を踏襲。先代同様に丸いヘッドライトの外側にウィンカーという構成。
新型の外形状は丸と四角の組み合わせで幾何学的になり、幾何学的ボディに合っている。
・グリル
先代同様に四角いアッパーグリルと樹脂色バンパーに囲まれたロアグリルという構成。
アッパーグリルのメッキモールはアウトドア用品らしくないが、グリルに立体感を与える効果が大きく、悪くない。
・バンパー
先代同様にフェンダーアーチに つながった樹脂色バンパーの上にガーニッシュという構成。
樹脂色バンパーはアウトドア用品らしいし、ボディの高さを軽減して見せる。新型はプロテクター風の形状でタフさを表現。
先代でシルバーだったガーニッシュは新型でボディ同色に変えて差別化。
先代のアンダーガードぽいパーツは新型では取って付けたようなバーに変わった。本格的なアウトドア用品がコンセプトなら、もっと本格的なアンダーガードに見えるようにすべきでは。(-5点)
・ボンネット
ヘッドランプに合わせてボンネット上に峰を表現。立体的なアクセントとして効果的。
・ウィンドウ周り
先代同様の窓の大きさだが、着座位置の関係で、停止時に信号が見えにくい問題は改善したようだ。
■サイド (20点/20点満点)
先代同様にフェンダーアーチの周りに角ばった樹脂色プロテクターの構成。膨らんだフェンダーフレアからプロテクター周辺だけ凹ませてプロテクターをガッチリと見せている。フェンダーアーチとプロテクターの形状は より四角に近づいた。
・ドア
ドアのレリーフの やや尖った角はサイドウインドウ周り等の他の箇所より鋭角なので微妙。
・ウィンドウ周り
新型のピラーはボディ同色になり、窓との段差も大きめで、強度感を表現。アウトドア用品らしい。逆に言うと、スタイリッシュさは減っているが、コンセプト通り。
ウインドウ グラフィックは幾何学的な角丸四角の組み合わせに整理。客室と荷室が明快になった。
Aピラーの位置が少し変わったためフロントサイドウインドウの分割が なくなってスッキリした。
リアクォーターウインドウが追加されたため斜め後方視界が改善。
■リア (10点/10点満点)
・ランプ
角ばった幾何学的な形状に変わった。フロントランプとは合わないが、幾何学的なボディには合っている。この形状はハスラーのロゴの「H」を表現しているのか。
・バンパー
先代同様に樹脂色バンパーの上にガーニッシュという構成。ガーニッシュはシルバーからボディ同色に変えた。そのボディ同色の中に さらにブラックのラインや鋭角のキャラクターラインが入るのは微妙。
■注記
※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価
※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
※画像の出典
https://www.suzuki.co.jp/car/hustler/styling/
https://www.suzuki.co.jp/car/hustler/safety/
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