トヨタ bZ4X 2022 (D 25点)
責任重大なのに無塗装/段差フェンダーが信じられない安っぽさ!
■まとめ (D 合計25点/100点満点)
トヨタ bZ4Xはトヨタのバッテリ電気自動車(BEV)専用プラットフォームであるbZシリーズのトップバッターなので責任重大。
ところが無塗装でガタガタ段差のある樹脂フェンダーが信じられない安っぽさ。それが取って付けたようにボディの統一感を無くしているから車全体が安っぽく見える。
無塗装・段差フェンダーはオフロード向けプロテクターのつもりだとしても、オフロードの強調しすぎは bZシリーズで目標にしている静粛性の表現に反している。
そんな無塗装/段差フェンダーをbZシリーズのトツプバッターにして、トヨタ ブランドのウリである高品質感を ぶっ壊してしまっている。このアイデアは2019年ジュネーブモーターショーで発表されたスバル VIZIVアドレナリン・コンセプトがヒントだろうか。
これはBEVに消極的と言われたトヨタがBEV 16モデルの同時発表を焦って、とにかく新規性のあるデザインへ走ったせいではないか。
bZ4Xは他のデザインもチグハグだ。ミディアムSUVなのに居住スペース軽視で、車格の見栄えが弱いパッケージング。BEVの先進感を表現するスリーク(滑らか)等がテーマなのに やたら凸凹したフォルム。不評でマイナーチェンジしたトヨタ プリウスの垂れ下がったランプより不自然なカタチでフェンダーフレアに突き刺さったリアランプ等。
同様のミディアムSUVであるトヨタ ハリアーをスタイリッシュな素晴らしいデザインに仕上げたトヨタとは思えない。
このレビューの点数の低さには採点した自分でも驚いた。これは単に1車種として問題ではなく、bZシリーズ全体とトヨタ ブランド全体まで影響する期待と責任の重大さのため。
すぐに対策できることは少ないかもしれないが、せめて一刻も早くボディ同色塗装フェンダーの仕様を販売しないだろうか。(海外では塗装フェンダーの仕様もある という噂なので)
■主な比較対象車
・スバル ソルテラ (姉妹車)
■キャラクター
・ポジション
2022年発売のトヨタ bZ4Xはトヨタのバッテリ電気自動車(BEV)専用プラットフォームであるbZシリーズの第1段。BEVへのトヨタの取り組み方の第1印象を決める重要なポジション。この出来次第でトヨタはBEVに消極的という評判を塗り替える代わりに上書きしてしまう。
「bZ」はゼロエミッションを超えた価値「beyond Zero」という意味らしい。しかし その新しい価値をネーミングせず、まだゼロエミッションに こだわっている時点で、トヨタは将来を見据えていないのではないか と心配になる。
・用途
bZ4XはミディアムSUV。コンセプトは「Activity Hub」。乗員全員が楽しい時間や空間を共有できる、ワクワク感のあるクルマを目指しているそうだ。
つまり前席だけでなく、後席の居住性や解放感も重要だ。
・デザイン要求
bZ4XはbZシリーズのトップバッターなので、ミディアムSUVらしさだけでなく、bZシリーズをリードするデザインが求められる。
bZシリーズはBEVならではの運転の楽しさ等を目標にしている。そのBEVならでは の運転の楽しさとは胸のすく加速感と心落ち着く静粛性の両立だそうだ。それを表現するデザインが必要。
■コンセプト (5点/30点満点)
・テーマ、アイデア
「Hi-Tech and Emotion」がキーワード。BEVの先進感とSUVらしい力強さの両立という意味らしい。そして先進感をスリークで表現するアイデア。
しかし「スリーク」という言葉は要注意。本来は「滑らか」という意味なのでフォルムとプロポーションの両方を示す言葉だろうが、「伸びやか」という意味でプロポーションだけを考えている人も多い。
bZ4Xの場合は単にプロポーションしか考えていないようだ。スリークを伸びやかさ、SUVらしさをリフトアップと捉えている。そのためフォルム等による表現の徹底が不十分。(-10点)
それでスリーク(滑らかさ)とSUVらしいラギッド(ゴツゴツ感)のメリハリがハッキリせず、車全体のカタチがゴチャゴチャしてしまった。
さらにハリボテみたいな無塗装で段差のあるフェンダーを許してボディの統一感を失わせてしまった。
・モチーフ
フロントノーズは「ハンマーヘッド」がモチーフ。目が横に突き出したシュモクザメのことだろう。
それで特にセンサ等を表現する意図もなさそうで、横に突き出た部分がフロントランプより後ろで 一致していない。
デザイン結果だけを見ているユーザーには意味不明。結局ボンネットが無意味に凸凹してしまった。(-5点)
・スタイル
大きなラジエーターグリルをなくした薄いバンパーやフロントコーナーのエアインテーク等でBEVらしさを表現だそうだ。
それだけではBEVとして ありきたりでトヨタらしさもbZシリーズのブランド表現も出来ていない。そのため無塗装フェンダーで特徴を出したり、下アゴ(ロアグリル)強調したりすることへ走ったのだろうか。(-5点)
例えば、姉妹車のスバル ソルテラは スバルのデザイン スタイル「ヘキサゴングリル」の六角形を適用して、スバルらしさを表現している。
・パッケージング
BEVらしくホイールベースを伸ばし、室内長を宣伝している。
しかし全高はクーペ風SUVのトヨタ ハリアーより低い。その床下にバッテリーを載せているので室内高がハリアーより かなり低くなってしまった。
その対策でヒップポイントを下げて頭上空間を増やしても、代わりに床から座面への高さ(ヒール高)が減って、座り心地や乗り降り性に影響する。全席の居住性を求めるデザイン要求に合っていない。(-5点)
低い全高はSUVにとって良いこと とは言えない。機能的にはSUV (Sport Utility Vehicle)のうちのUtility (多用途)が劣るし、デザイン的には車格の見栄えが弱まる。
これまでのカーデザインは運動性が良さそうなワイド&ローのプロポーションを求めてきた。しかし最近では背の高いSUVやミニバン等が普及し、車格が立派に見えるロング&ハイのプロポーションを求める傾向が強くなった。つまり価値観が2極分化したと言える。
bZ4XはbZシリーズのトップバッターとして存在感を示すべきポジションなのだから、居住性の観点に加えて、もっと高い全高と立派な車格を目指すべきだったのでは。
例えば、運動性を表現するワイド&ローは将来販売されるbZシリーズのクロスオーバー等に任せれば良いのだから。
■全体デザイン (0点/20点満点)
・プロポーション
キャビンが小さく、居住スペースや解放感で不利なプロポーション。ベルトラインは高く、ルーフは短く、グラスエリアは小さく、リアウィンドウの傾斜が強い。
例えば、ミディアムSUVとしてヒットしているトヨタ RAV4のように もっと居住スペースと車格の見栄えを見せないと、デザイン要求である乗員(ドライバー以外)のワクワク感にも つながらないのでは。(-5点)
・フォルム
ボディの あちこちに凹面やキャラクターラインや段差が入り組んで配置され、ボンネット、ショルダーライン、サイドボディ等の滑らかさを阻害。
シャープエッジで先進性を表現したいのだろうが、それはラギッドな部分に用いて、スリークな部分は しっかり滑らかに見せてメリハリをつけないと、フォルム全体が煩雑(ビジー)にななってしまう。(-5点)
・カラーリング
コストダウン感いっぱいの無塗装の樹脂フェンダーはボディとの段差と共にハリボテ感を強調して、ボディの統一感を無くし、車全体の印象を安っぽくしている。もちろんスリークというテーマにも反している。
無塗装/段差フェンダーはオフロード向けのプロテクター(クラッディング)としてSUVの力強さを表現しよう という意図かもしれない。しかしオフロード向けの強調はbZシリーズで求めているBEVらしい静粛性の表現に反している。(-10点)
海外では塗装フェンダーの仕様もある という噂なので、一刻も早くボディ同色塗装の仕様を販売して欲しい。
この無塗装/段差フェンダーのアイデアは2019年ジュネーブモーターショーで発表されたコンセプトカー スバル VIZIVアドレナリン・コンセプトがヒントだろうか。
だとしたらbZ4Xはソルテラとの共同開発とは言え、bZシリーズ全体のブランド イメージに関わるので、アイデアはトヨタで考えるべきではないか。
まさかコンセプトカーのフェンダーを そのまま製品化したら面白い とかの安易な発想とは思えないが、あまりにソックリなので気になった。
■フロント (10点/20点満点)
・ランプ
細いLEDランプのコンビネーションで先進性を表現。トヨタ プリウスPHVのランプに似ているが、よりシャープなカタチでBEVらしい表現。
・グリル
BEVなのでロアグリルだけ。そのロアグリルは前へ突き出したようにポッカリ穴が開き、しかも無塗装樹脂とメッキで突き出しを強調しているので、下あごがシャクレたように見えてしまう。チンスポイラーのようには見えない。(-5点)
・バンパー
レクサスのデザイン スタイル「スピンドルボディ」に少し似ているが、そこまで明確なカタチには なっていない。
フェンダーとの間はエアインテークになっていて、空力的に効果がありそう。
・ボンネット
ハンマーヘッドのモチーフを表現するため段差が できて煩雑。(-5点)
■サイド (5点/20点満点)
フロントフェンダーはランプの下まで回り込んでいるが、ランプやバンパーとの間に段差(エアインテークとは別)が あり、無塗装と共に安っぽさを強調している。(-5点)
ホイールアーチ周りのプロテクター(クラッディング)はリフトアップ感を強調したいためなのか、上側は分厚く、下側は すき間が空いている。まるで上にズレたような不自然かつ非実用的なカタチ。(-5点)
・ドア
あちこちに凹面とキャラクターラインが入り組んでいて煩雑。ショルダーラインやサイドボディの滑らかさを阻害している。(-5点)
・ウィンドウ周り
リアクォーター ウィンドウは小さく、後席の解放感は微妙。
■リア (5点/10点満点)
・ランプ
リアランプは斜め下へ垂れ下がり、リアフェンダーフレアへ突き刺さったような不自然で玩具っぽいカタチ。
タイヤへ つなげて、タイヤの踏ん張り(スタンス)を強調しよう という意図だろうが、不評でマイナーチェンジされたトヨタ プリウスの垂れ下がり リアランプの方が まだ自然なカタチだった。(-5点)
・バンパー
空力重視なら滑らかなディフューザーになって良さそうなバンパー下部がマフラーもないのに やららと凸凹したカタチで出っ尻になっている。これでも空力的な効果は十分あるのだろうか。
・ウィンドウ周り
リアスポイラーの中央が空いているのは空気抵抗とダウンフォースのバランスを考えたためらしい。
■注記
※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価
※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
※画像の出典
トヨタのサイトに画像パッケージがダウンロードできるように上げられていて、大変助かりました。感謝します。