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超 カーデザイン レビュー

「日本車はカッコ悪い」なんて言わせたくない

ホンダ ZR-V 2023  (C 70点)

カーデザイン

「異彩を放つ」はずが プロポーションは普通なので 変顔ばかり気になる

■まとめ  (C 合計70点/100点満点)

  ホンダ ZR-V (初代)は全く新しく開発されたミドルサイズのSUV。ホンダの言うSUVの新世代「SUV 3.0」として都会的で美しく、意のままに操れるセダンのような運動性能を目指した。

  その新しい位置付けを表現するキーワードは「異彩解放」。これは「異彩を放つ」から来た言葉。見かけた時に2度見するような個性を目指したそうだ。

  デザイン結果を見るとホンダ CR-Vとホンダ ヴェゼルの中間のサイズとプロポーション。ZR-Vはスペースや視界に配慮した前世代のSUVとして普通のプロポーション。そのためセダンのような運動性能の表現は見られない。異彩と言うには 空力特性の悪化を覚悟してまでリアウィンドウの傾きに こだわったヴェゼルの方が似つかわしく見える。

カーデザイン

CR-V、中 ZR-V、下 ヴェゼル

  フォルムは楕円体である「コッペパン」の端をグリルで平たく切り落としたようなイメージらしい。と言ってもルーフが真直ぐ後ろまで長いので全体の丸さが曖昧で顔の丸さばかり目立つ。

  フロントフェイスは異彩のためホンダのデザインスタイル「ソリッドウィング」を避けた。定番スタイルを捨てるなら代わりとなる個性を よく考える必要がある。

  その結果は丸っこいノーズに丸っこいグリルと独立したランプ。マセラティ等の他車に似ていると言われるようにホンダらしさがイマイチ。

  それでも異彩のために目立たせよう と頑張ったためか やたらラインやレリーフが多くて煩雑(ビジー)。それでグリルが口先をシワが寄ってまで前へ突き出したように見え、グリルの縦格子が歯をムキ出しにしたように見えて違和感。目指す異彩と違和感ある目立ち方は違うのでは。頑張り過ぎは もったいない。

カーデザイン

  新世代のSUVやセダンのような運動性を表現するなら やはりプロポーションから変えてセダンやクーペっぽくする方が合っているのでは ないだろうか。

カーデザイン

上 オリジナル、下 リファイン案

  ちなみに 画像生成AI 「Stable Diffusion」で生成してみたら こんな感じ。

カーデザイン

 AI による画像

カーデザイン

AIによる画像

■主な比較対象車

・ホンダ CR-V (同門車)

ホンダ ヴェゼル (同門車)

ホンダ シビック (同門車)

マツダ CX-5 (競合車)

マセラティ グレカーレ (参考車)

■キャラクター

・ポジション

  2023年に新発売されたホンダ ZR-V (初代)はホンダCR-Vとホンダ ヴェゼルの中間サイズとして誕生。主な市場である北米ではエントリー クラス。エントリー クラスと言っても北米なので サイズはCR-V寄りのミドルサイズ。

  デザインでメイン ターゲットにしたという日本向け仕様は北米向け(名称 HR-V)等とフロントフェイスが異なる。

・ユーザー、用途

  ターゲットユーザーは子育て世代が中心ながら自分の表現を求める層。

・用途

  ホンダが言うところの「SUV 3.0」。つまり走破性・居住性等よりセダンに近い運動性能を重視したSUVということか。

・「SUV 1.0」オフロード性能を追求したクロスカントリーSUV

・「SUV 2.0」堅牢さに快適性も加えたクロスオーバーSUV

・「SUV 3.0」社会に溶け込み美しく意のままに操れるSUV

・デザイン要求

  つまりCR-V等の一般的なSUVと差別化してセダンのような運動性能を表現するデザインが求められる。

■コンセプト (20点/30点満点)

カーデザイン

・テーマ

  全体テーマは「異彩解放」。これは「異彩を放つ」から来た言葉。ユーザーとクルマの個性を解き放つ という意味。見かけた時に2度見するような個性を目指した。

  そこからデザインのキーワードは以下の3つ。いずれもSUVというよりクーペに似合いそうな言葉だ。

・流麗なプロポーション

・感性に訴える類のない存在感

・クラスを超えた上質な色気

・アイデア

  最初にデザイナー全員に自由に提案させて、100案以上のが提案から最終的に「一張羅」、「凛」、「直」の3つのキーワードを抽出した。

  その中から熱量が最も高かった「一張羅」を選定。一張羅は特別に上質な1着。そんな上質感を どうやって表現するか具体的な方法が問題だ。どうもフォルムのメリハリによる表現を目指しているようだが。

・モチーフ

  異彩や流麗なプロポーションの表現として「球体」をモチーフに。

  車全体をラグビーボールのような楕円体とし、広めのトレッドによるスポーティな安定感を付け加えたそうだ。

  丸っこいモノフォルム的なシルエットというとヴェゼル(初代)も思い浮かぶ。はたして そんなシルエットを目指すのだろうか。

・スタイル

  ホンダのデザイン スタイルと言うと グリルとランプが連続したフロントフェイスの「ソリッド ウィング」が一般的だったが、ZR-Vには適用せず他のホンダ車と差別化。

  とは言っても新しいホンダらしい個性を確立するのは難しい。その結果 マセラティ グレカーレ等のような他車に似た印象を与えてしまっている。(-5点)

・パッケージング

  サイズはCR-Vヴェゼルの中間。全長・全幅はCR-V寄り、全高はヴェゼル寄り。特にワイド&ローではなく、居住性にも配慮したSUVとしては無難なサイズ。

  しかし シート ポジションはセダンに近づけた低め。SUVらしい全高とのバランスでは思い切りが悪いようにも見える。

  どうせセダンのような運動性能を表現するなら もっとワイド&ローへ 振った方が明確になって良かったのでは。(-5点)

■全体デザイン (10点/20点満点)

カーデザイン

プロポーション

  プロポーションCR-Vヴェゼルの中間。ルーフの長さやサイドウィンドウの大きさによるスペースの広さはCR-V寄りでSUVとして一般的なプロポーション。つまりテーマの異彩を放っていない。

  セダンのような運動性能の表現としてはZR-Vよりもヴェゼルの方が短いルーフのクーペ寄りプロポーションなので似合っているのでは。(-5点)

カーデザイン

CR-V、中 ZR-V、下 ヴェゼル

・フォルム

  モチーフの楕円はノーズの先端が丸まっていたり、ルーフラインが後ろ下がりになっていることで表現しているが、ルーフラインが真直ぐ後ろまで伸びているので、全体が楕円と言うより顔だけ丸まっているように見えて全体の統一感がイマイチ。

  アイデア スケッチを見ると真直ぐ伸びやかなルーフラインを強調したがっているようだが、そのラインが楕円のシルエットとミスマッチ。それに顔が丸まっているのは車格が小さく見えて主な市場である北米には あまり向かないのでは。(-5点)

  例えば 真直ぐ伸びやかなラインに こだわるなら 楕円を 止めて ヴェゼルのように 全体的にストレートなシルエットにした方が統一感がある。 

・カラーリング

  日本仕様は新色を2色。ノルディックフォレストパールは静謐な森林、プレミアムクリスタルガーネットメタリックは陰影に煌めくガーネットのイメージらしい。

■フロント (5点/20点満点)

カーデザイン

・ランプ

  異彩のためホンダのデザイン スタイル「ソリッド ウィング」は止めて、グリルと つながらず独立したランプ。と言っても それだけでは他車にも ある表現。

  ランプの外形状は 異彩のために目立たせるよう あえて角ばっているようだが、やはり楕円形に丸まっているノーズへの収まりが良くないので上質感に反している。

  そのうえランプ内部のデイライトが「L」字形というのも ありふれている。

  異彩のためデザイン スタイルを止めたが、結果は平凡。(-5点)

・グリル

  最近のホンダ車と違ってアッパーグリルは角丸の八角形。楕円から切り落とした平たい開口部。コッペパンの先っちょを切ったイメージらしい。

  丸いノーズ先端の開口部の周囲には複数のラインが走っているため口先をシワが寄ってまで無理やり前へ突き出したように見えて不自然。異彩と不自然は違うのでは。

  日本仕様はグリルの前に飛び出た縦格子。口先を前へ突き出した造形と相まって歯をムキ出しにしたように見えて違和感。おかげで開口部の周辺に立体感がなく、ボディが薄く弱く見える。(-5点)

  北米仕様のハニカム格子だったらクルマのグリルらしいし、グリルが開口部の中へ引っ込んでいるためボディの立体感を感じる。

  日本仕様は北米仕様よりエレガントな演出として都市にも似合うスマートなデザインを意図したらしいが、こりすぎて逆効果で もったいない。グリルの中だけに注力して、クルマ全体で見た時の効果を気にしなかったのだろうか。

・バンパー

  アッパーグリル周囲のラインだけでなく、ロアグリル周囲は複数のラインとレリーフ。まるでナマズのヒゲのように見えて煩雑(ビジー)。頑張り過ぎで もったいない。(-5点)

・ボンネット、ウィンドウ周り

  アッパーグリル周囲のラインがボンネットまで続いていている。

  ボンネットの先端は前下がりだが、フロント ウィンドウ寄りは比較的フラットだし、Aピラーが比較的後方なので前方見切りは悪くない。

■サイド (25点/20点満点)

カーデザイン

・ルーフ

   ルーフラインを滑らかにするためルーフ上のモールを無くして工夫している。(+5点)

フェンダー、ドア

  フェンダーフレアのフラットな面やドア下側のシャープなラインとサイドボディ全体の なだらかな丸みのある面との対比でメリハリ。

  ホイールアーチ周りはグレードによってボディ同色のガーニッシュまたはブラックのプロテクター(クラッディング)になる。セダン寄りだと考えるとボディ同色の方が主なのだろうが、そう考えるとガーニッシュが不要に思えて微妙。

・ウィンドウ周り

  窓の広さは そこそこあり、ベルトラインはストレートに後方まで続くので斜め後方視界は悪くない。

■リア (10点/10点満点)

カーデザイン

・ランプ

  フロントランプと同様に角ばった外形状は周囲の なだらかな面への座りが良くなくて微妙。

  ランプの外形状が下側に膨らんでいるのは カタチが違うのにマツダ CX-5に似ている  と思う人もいる。やはり個性が弱い ということか。

 ・バンパー

  サイドボディのシャープなラインの延長でシャープな横のラインが引き締めている。

  下端がメッキなのも走破性を求めない都市型SUVなので悪くない。その両端に置かれた平たいエグゾーストパイプもスッキリまとまっている。

・ハッチ

   ランプの周囲を えぐるような深いレリーフ。ここだけ力が 入り過ぎのようで微妙。

・ウィンドウ周り

  窓の広さは そこそこあるので後方視界は それほど悪くない。

■おまけ (デザインクリニック提案)

  例としてレビューで気になる点について見直し案を提案する。テーマは「クーペSUV」。セダンのような運動性能を特長(ウリ)として強調する。

  モチーフはホンダ ヴェゼル (初代)のモノフォルム的なクーペ ルック。新型ヴェゼル (2代目)はボクシーなシルエットへ変わってしまったので 代わりにクーペSUVとして継承する。

カーデザイン

リファイン案

  見直し案の主なポイントは以下の通り。

・運動性の表現のためプロポーションを変更

  ホンダ ヴェゼル (初代) を継承してファストバック化

  ルーフラインを なだらかに後ろ下がりへ

  それに合わせてボンネットやフロントウィンドウを なだらかに

  サイドウィンドウもSUV的な6ライトからクーペ的な4ライトへ

カーデザイン

リファイン案

・意匠的な(グラフィカルな)デザインをシンプル化

  フロントフェイスやボンネットのラインを減らしてクリーンに

  代わりに フロントランプのグラフィックをホンダらしい形状へ

  - ウィング形のヘッドランプ グラフィック

  - 前から見て「H」の字形のデイタイムライト

・テーマ「一張羅」をベルトラインやショルダーラインのストレートな段違いで演出

   (マッスルカーのような演出で主な市場である北米のユーザーも喜ぶはず)

カーデザイン

上 オリジナル、下 リファイン案

■注記

※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価

※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと

※画像の出典

https://www.honda.co.jp/ZR-V/

https://www.honda.co.jp/ZR-V/webcatalog/design/3d/

https://www.honda.co.jp/design/new-suv/interview01/

https://automobiles.honda.com/cr-v#gallery-section

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