歴代ヘリテージの堂々としたプロポーションで車格が立派に見える
■まとめ (B 合計85点/100点満点)
トヨタ ランドクルーザー(300系)は2023年ダカール ラリー市販車部門 優勝で史上初の10連覇。ラリー優勝はGRスポーツ グレードだが ここでは普通のグレードをレビュー。
テーマは「タフで強靱」と「洗練された大人の魅力」の両立。そして「ランクルヘリテージ」で歴代を継承した造形を目指したそうだ。
「歴代」とはランドクルーザー(55系)以降のステーションワゴン系列のことで、ランドクルーザー(70系)等のヘビーデューティ系列は含まれなさそうだ。
つまり「タフ」なだけの無骨なクロスカントリー車ではなく、ステーションワゴンとしての上質感が「大人の魅力」なのだろう。
サイズは先代と ほぼ同じだが、ルーフやボンネットを伸ばした堂々としたプロポーションとフェンダーフレアの大胆な張り出しで車格が立派に見える。
オフローダーとしての機能も「キング オブ オフローダー」らしい。アプローチアングル等の悪路走破性能、視界、ステップ等の使い勝手も歴代踏襲で良好。ただし グレードによってはアプローチアングルが激減するのは残念。
フロントフェイスには気になる点がある。フォグランプが ぶつけ易いバンパーに付いてたり、先代踏襲のメッキグリルはGRスポーツ グレードのシンプルなグリルに比べると古さを感じたり。(一方 GRグレードのフロントフェイスは迫力がある)
つまり 細かい点を除くと歴代の集大成のような見事なデザインだ。これだけ まとまっていると この先どのようにデザインを進化させていくのか気になる。
SUVは競争が激化しているので ランドクルーザーのブランド強化のために特徴を分かりやすく端的に表現する「アイコン化」も必要になってくるのでは ないだろうか。
■主な比較対象車
・トヨタ ランドクルーザー(新型 GRスポーツ、先代 200系、先々々代 80系 等)
・メルセデスベンツ Gクラス (競合車)
・レンジローバー (競合車)
■キャラクター
・ポジション
2021年に14年ぶりでモデルチェンジしたトヨタ ランドクルーザーは「キング オブ オフローダー」「どこへでも行き、生きて帰って来られる」と称されるように世界トップレベルのヘビーデューティなオフロードSUV。
プラットフォームが新開発のGA-Fとなったが、オフローダーらしくラダーフレームは継承。
・ユーザー
世界中で販売されているが、特に中東やオーストラリアで人気だそうだ。
そしてユーザーの「ランクル愛」は すごいらしい。
・用途
圧倒的なオフロード性能と耐久性が基本。さらに運転して疲れないことを目指した。
・デザイン要求
つまり オフロードの走破性は当然として、さらに耐久性、高信頼性、乗り心地までも表現するデザインが必要だ。
■コンセプト (30点/30点満点)
・テーマ
キーワードは「Brutal & Sensual all-roader」。意味は「タフで強靱」と「洗練された大人の魅力」の両立らしい。前半はオフローダーなので当然だが、後半は何が魅力か人によって解釈が分かれるので もっと具体性が必要だ。
そこで指針となるのが「ランクルヘリテージ」。歴代を継承した造形を目指したそうだ。特にオマージュしたのは歴代最高の走破性という先々々代(80系)。
ここで「歴代」と言っているのはランドクルーザー(55系)以降のステーションワゴン系列のことで、ランドクルーザー(70系)等のヘビーデューティ系列は含まれなさそうだ。
つまり「タフ」なだけの無骨なクロスカントリー車ではなく、少しオンロード寄りのステーションワゴンとしての上質感が「大人の魅力」なのだろう。
・アイデア
オフローダーらしいフォルムとして 金属が磨かれて大地を前後左右に いなす「クロス インゴット」がヒント。
・スタイル
プロポーションは歴代の原点回帰として キャビンを後ろ寄りにした「キャビンバックワードプロポーション」に戻った。
フロントフェイスは歴代のヘリテージとして ヘッドランプとグリルを ぶつけにくい高い位置に横並びさせるスタイルを踏襲。
・パッケージング
サイズは先代(200系)から ほとんど変わっていない。特にホイールベースは歴代最強の走破性という先々々代から変更なし。その結果 アプローチアングル等の悪路走破性能も歴代踏襲で良好。このサイズなら3列シートでもスペースが十分という判断だろう。
エンジンとプラットフォームが先代から変更になったためエンジンを後方移動させ前後重量配分は改善されているとのこと。
■全体デザイン (15点/20点満点)
・プロポーション
先代よりもルーフを後ろに伸ばし、ボンネットも長く、高く、平たくしたので車格が立派に見える。
一方 側方視界に係るベルトラインは高くしないようにしたりして オフローダーの機能にも配慮されている。
・フォルム
台形で平面的なフェンダーフレアの大きな張り出しが印象的。
一方 大地を「いなす」アイデアに沿って ロアボディやボディのコーナーの角を丸めて走破性や取り回しに配慮している。
ただし グレードによってはアプローチアングルが激減するのはイマイチ。走破性はランドクルーザーの特徴の根幹なので グレードの差別化をするにしても 別の点で やるべきだろう。(-5点)
■フロント (10点/20点満点)
・ランプ
ヘッドランプはオフローダーらしく破損防止のため高い位置に設置。しかし フォグランプがバンパーに組み込まれて衝突で壊れやすい位置なのはポリシーに反している。(-5点)
・グリル
中央の先代同様のメッキグリルを取りまくボディ同色塗装のU字フレームの外側にさらに黒いグリルが印象的。(外側グリルのインテークの一部はダミー)
メッキはツヤ有りとツヤ消しのシルバーの両使いでメリハリをつけているが、GRグレードのシンプルなインパクトに比べると小手先感もあり新鮮さとしてはイマイチ。(-5点)
・バンパー
安定感のある台形で前方へ張り出しているが、下側はアプローチアングルのため面取りされている。
フォグランプ周辺はエア インテークぽいカタチだが、ダミーなのは微妙。
・ボンネット
深いレリーフで強靭さを表現。先代同様にボンネット中央を凹ませているのは前方見切りにも効果的。
■サイド (20点/20点満点)
フェンダーアーチは台形の開口でオフローダーらしく実用的。
フェンダーフレアの張り出しが見事なだけにボディ同色塗装のフェンダー アーチ モールは蛇足っぽくて微妙。(GRグレードとの作り分けのためだろうが)
・ドア
サイドステップは乗り降りしやすく実用的。厚みがあるので 少しくらい ぶつけても壊れなさそうに見える。
・ウィンドウ周り
先代と違ってベルトラインの前縁側と後縁側がキックアップ。そのサイドウィンドウ グラフィックを太めのメッキ モールで強調。機能的ではないが、このあたりが大人の表現なのだろうか。
視界からすればキックアップしない方が良いが、そもそも視界は広いし、上屋(グリーンハウス)と下屋(サイドボディ)を強固に一体化した強度感を表現する効果があるので この程度のキックアップなら悪くない。
・タイヤ、ホイール
新型は6穴ホイールに戻った。強靭さが表れている。
■リア (10点/10点満点)
・ランプ
先代に比べるとストレートになった横長ランプ。先々々代を踏襲するなら両端ランプだろうし、オフローダーぽくない印象。
それでもステーションワゴン系列だし、競合車との差別化としては悪くないか。
・バンパー
ステップとして使えるカタチで実用的。
エグゾーストパイプの先端を斜めにカットしているのはデパーチャアングルのためでオフローダーらしい。
・ハッチ
先代のメッキプレートが なくなり、2枚ドアから1枚ドアへシンプル化。
カタチはランプの間が台形に強調されていて安定感。
・ウィンドウ周り
最近の車にしてはリアウィンドウが大きく、後方視界が良い。
■おまけ (デザインクリニック提案)
例として レビューで気になる点について 見直し案を提案する。テーマはブランド強化のための「アイコン化」。意味は特徴をイメージできるように記号化すること。
ランドクルーザーは歴代デザインの変化が大きかったので ユーザーにとってハッキリとイメージしにくい。しかし SUVは競争が激化しているため 競合車と差別化できる分かりやすいイメージがブランド強化(ブランディング)のために重要。
モチーフは 強度感と上質感の両立を表現する「角丸四角」。主な競合車との比較は以下の通り。それらと被らないように位置付け(ポジショニング)した。
①メルセデスベンツ Gクラス: 四角、ゴツゴツ(ラギッド)、レトロ
③レンジローバー: 台形、滑らか(フラッシュ サーフェイス)、未来的
④ランドクルーザー: 角丸四角、シャープラギッド、先進的
「角丸四角」は最も走破性が高かったと言われるランドクルーザー(80系)のフォルムを幾何学的に集約したもの。
「シャープラギッド」はトヨタ bZ4Xのリファイン案で提案したテーマの1つ。 エッジの半径(R)を小さくシャープにして「硬度」を表現し、普通のラギッドの大きなRより高度な技術であることをアピール。
またフロントフェイスの新しいスタイル「Tルック」も提案。ランプとグリルで「T」の字を形成して、顔の全体で「トヨタ」を表現し、トヨタ ロゴが無くても分かるようにさせる。これは歴代の顔が進化してきて行き着く先の記号。
その形状は以下のキーワードでトヨタ ブランドの特長(ウリ)である「高信頼性」を表現。これらのキーワードはフォルム等にも共通化させたい。
①骨太→耐久性を表現
強度や剛性の高そうな太めのライン等
②几帳面→高精度を表現
シャープなエッジ、狭くて均一な隙間等
③整然→厳格な品質管理を表現
キチンと配置された幾何学形状等
リファイン案の主なポイントは以下の通り。
・プロポーションは ほどんと変更なし
走破性のためアプローチアングルとデパーチャアングルを少し増加
・フォルムやフロントフェイスは アイコン化 のため少し見直し
ボンネット、ルーフ、サイドウィンドウなどを角丸四角へ
ロアボディは大地を「いなす」カタチで角丸四角へ
フロントフェイスはランプとグリルで トヨタの「T」の字に
・装備はオフローダーらしく変更
すぐ ぶつけそうなバンパーに搭載したフォグランプは削除
ボディ同色塗装フェンダーアーチモールはプロテクター(クラッディング)へ
ロアボディ周りにプロテクター追加
ノーズとリアにはアンダーガード追加
グリルやサイドウィンドウ モール等のメッキはマットシルバーに統一
■注記
※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価
※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
※画像の出典
https://global.toyota/jp/mobility/toyota-brand/toyota-design/landcruiser/
https://toyota.jp/landcruiser/?padid=from_landcruiser_grade_bottommenu_top
https://www.landrover.co.jp/vehicles/new-range-rover/index.html
https://www.jeep-japan.com/wrangler-jl/exterior.html
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