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超 カーデザイン レビュー

「日本車はカッコ悪い」なんて言わせたくない

ホンダ ヴェゼル 2021  (B 75点)

カーデザイン

オープンカーの「光と風」のはずが、オプションなしだと ただのカサ上げクーペ

■まとめ  (B 合計75点/100点満点)

  ホンダ ヴェゼル (2代目)はクーペ ルックのコンパクトSUVというカテゴリーやサイズを踏襲したが、デザインはガラッと変わった。

  大テーマは「AMP UP YOUR LIFE」。日々の生活の愉しさを増幅させる という意味。

  そのためのキーワードは「信頼」、「美しさ」、「気軽な愉しさ」。

  そして各々をさらに詳細化(ブレークダウン)。例えば 信頼なら「運転のし易さ」等、美しさなら「スリーク プロポーション」等、気軽な愉しさなら「全席爽快な空間と視界」や「光と風の気持ち良さ」等。

特にオープンカーのような「光と風」は他車と差別化できる特長(ウリ)になりそう。

  ところがキーワードが多すぎたのか、デザイン結果は「スリーク プロポーション」ばかり注力していて他は部分的にか実現していないのが もったいない。

  スリーク プロポーションはフラットなルーフやボンネンット、ストレートなベルトラインやサイドボディのキャラクターラインで見事に表現。スクエアなフォルムはサイズの割に車格を立派に見せるし、前方見切りにも役立っている。

  さらに最低地上高を先代より上げてリフトアップしたのもボディの薄さとタイヤの力強さを強調している。

  そんなスリムで伸びやかなプロポーションを追求したため窓の広さはSUVにしては狭く、室内高も先代より低くなってしまった。

  クーペルックのSUVとしては普通だが「全席爽快な空間と視界」をテーマにしている割には物足らない。しかも窓の狭いトヨタ ハリヤーやマツダ CX-30等の他社クーペSUVに似ている と言われてしまう原因になっている。

カーデザイン

ヴェゼル、下 CX-30

  「運転のし易さ」については新型で配慮した前方見切りだけでなく、横や後方の視界の広さも重要だ。特に背の高いSUVは横や後ろの低い位置が見にくいので。

  オープンカーのような「光と風」はパノラマルーフにしたようだが、 最上級グレードのオプションなのは残念。普通のグレードやオプションなしだと ただのリフトアップしたクーペだ。

  ところで最近のホンダはデザインのスタイルが各車種バラバラでブランドとしての統一感が弱いが、それでもキャラクターラインを減らして面をクリーンにしてきているトレンドはみられる。一方 ヴェゼルはサイドボディのラインを強調したり、グリルが「フレームレスグリル」の繊細な横桟だったりでトレンドに反しているため すぐに古臭く見えそうな気がして気掛かりだ。(グリルはマイナーチェンジで変えられるだろうが)

カーデザイン

  やはり目指したテーマの各々をバランスよく実現させ、もう少しクリーンでアイコニックなデザインにした方がデザインの寿命が長く(時間耐久性のある、エバーグリーンに)なりそうだが。

カーデザイン

上 オリジナル、下 リファイン案

■主な比較対象車

・ホンダ ヴェゼル (先代=初代)

ホンダ シビック (同門車)

トヨタ ハリアー (競合車)

マツダ CX-30 (競合車)

シトロエン DS4 (参考車) 「パノラミックフロントウィンドウ」

シトロエン C4 ピカソ (参考車) 「ゼニス ウィンドウ」

■キャラクター

・ポジション

  2013年に発売されたホンダ ヴェゼル(初代)はクーペ ルックのコンパクトSUVの先駆けとして大ヒット。海外ではホンダ HR-Vとして展開して好評。

  2021年にモデルチェンジした2代目もクーペ ルックのコンパクトSUVとしてカテゴリーを踏襲。

  ちなみに「ヴェゼル」とはカットした宝石の小さな面を表す「Bezel」とクルマを意味する「Vehicle」を掛けあわせた造語で、「多面的な魅力と価値を持つクルマ」という意味らしい。名前からしてオシャレ路線だ。

・ユーザー

  ターゲットは「ジェネレーションC」。特定の年代ではなく、以下の特徴を持った人々で、新しいものに積極的にチャレンジする先行層とのこと。

  これらの人々は主張の強い意匠的デザインよりシンプルなデザインを好むようだ。

・創造している ( Create )

・情報を集約している( Curation )

・人と つながっている( Connecting )

・コミュニケーションをとっている ( Communicating )

・用途

  クーペ ルックのコンパクトSUVを踏襲したまま前後席の居住性を追求。

  ここでの居住性は居住スペースよりも解放感を重視。オープンカーのような「光と風」を感じる爽快感が目標。

  なお 荷物の積載性は あまり求められていないそうだ。

・デザイン要求

  つまりコンパクトなクーペ ルックを踏襲したままオープンカーのような解放感のあるシンプルなデザインが必要だ。

■コンセプト (25点/30点満点)

カーデザイン

・テーマ

  大テーマは「AMP UP YOUR LIFE」。日々の生活の愉しさを増幅させる という意味。

  そのためのキーワードは「信頼」、「美しさ」、「気軽な愉しさ」。そして各々の意味をさらに以下の通り詳細化(ブレークダウン)した。

  SUVでは力強さやカッコ良さに注力するのが一般的。さらにヴェゼルは オープンカーのような「光と風」も狙っている点が差別化できる特長(ウリ)になりそう。

・信頼

   信頼感+軽快感

   運転のし易さ

・美しさ

  スリーク プロポーション

  こだわりのスタイル

・気軽な愉しさ

  全席爽快な空間と視界

  光と風の気持ち良さ

  遊び心

・アイデア、スタイル

   テーマの各項目を実現するアイデアを以下の通り考えたそうだが、スリーク プロポーション以外は部分的になっているようで疑問。(-5点)

・信頼

  運転のし易さは前方見切りの良さ(※横や後方はどうする?)

  (※信頼性と軽快感は良く分からない!?)

・美しさ

  スリーク プロポーションはリフトアップしてタイヤ大きく見せる薄いボディ

  こだわりのスタイルは最近のホンダが適用しているシンプルな面 (※最近はヴェゼルのようにラインを強調していないのだが!?)

・気軽な愉しさ

  全席爽快な空間と視界や風と光はパノラマルーフ (※スペースや窓はどうする?)

  (※遊び心は 良く分からない!?)

・パッケージング

  サイズは先代と比べて全長とホイールベースが同じだが、シートを工夫しては足元の広さは増えている。全幅は わずかに増えたが、室内幅は減っている。タイヤを大きく見せる薄いボディのため 全高が減り、最低地上高が増えたので 室内高は減った。

  全席爽快な空間がテーマなのに 室内幅や室内高を減らすのは微妙。コンパクト クラスとしてスペースは狭くはないが、単に身体が入るだけでなく、その周りのスペースに余裕があってこそ気持ちの良い空間になる。例えば 天井で言うと 頭の真上の寸法より視界に入るあたりの天井高が気になる。

  大きめの窓による解放感があればスペースの余裕はカバーされるが、はたして。

■全体デザイン (15点/20点満点)

カーデザイン

プロポーション

  先代のルーフとボンネットが丸まったモノフォルム的なシルエットからフラットでスクエアなシルエットへと大きく変更。サイズの割りに車格が大きく立派に見える。しかし立派過ぎてコンパクトさによる取り回しの良さが悪化したようにも見える点は微妙。

  新型の開発にあたって ホンダらしさを検討し、昔のホンダ車のスリムなシルエットに回帰しようと考えた。 そして全高を下げ、最低地上高を上げて リフトアップした薄いボディを実現。リアウィンドウの傾斜も強く、まるでカサ上げクーペ。

  しかし昔のホンダ車は単にボディが薄いだけでなく、大きな窓で明るい解放感と良好な視界を得ていた。最近でも ホンダ シビック (11代目)は昔のホンダ車をモチーフにグラッシーなキャビンを実現。

  一方 ヴェゼルは 窓の大きさまで考えなかったのでベルトラインが高く、窓が狭いので全席爽快な視界というテーマに合わない。しかも窓の狭いトヨタ ハリヤーやマツダ CX-30等の他社クーペSUVに似ている と言われてしまう原因になっている。(-5点)

カーデザイン

ヴェゼル、下 CX-30

・フォルム

  全体的にフラットでクリーンな面とショルダーの全周を取りまく水平なキャラクターラインでシンプルながらメリハリが効いている。

  ショルダーのラインで高重心に見えるのは目立たせるための意図的なデザイン。ラインの強さがサイドボディのストレートな伸びやかさを強調している。

  ただし 最近のホンダはキャラクターラインを減らして面をクリーンにしてきているので ラインを強調したヴェゼルが古臭く見えそうで気掛かり。もう少し さりげないラインだとデザインの寿命が長く(時間耐久性のある、エバーグリーンに)なりそうだが。

・カラーリング

  ユーザー調査から考え出された新色のサンドカーキパールは地味になりがちなカーキをパールとガラスフレークの配合で明暗のメリハリを利かせている。

  一部のグレードではグリルの すき間にフランスっぽい3色(トリコロール カラー)の挿し色(アクセント カラー)。なぜフランスっぽいのか と疑問に思わなくはないが、さりげないサイズなので悪くない。

■フロント (15点/20点満点)

カーデザイン

・ランプ

  ホンダのフロントフェイスのスタイル「ソリッド ウィング」と違って、グリルから離れて独立したランプ。

  ノーズ先端のモールから連続しているデイタイムランニングライトが印象的。メインのランプの上に被っているので まるでマブタのよう。そして その上側が黒いので まるでアイシャドーを塗っているみたい。スリークな美しさがテーマなのに厚化粧ぽいのは微妙。

  フォグランプはバンパーに付いているので ぶつからないか気になるかもしれないが、走破性を目指さないクーペSUVなので問題ないか。

・グリル

  ボディ同色の横桟(ルーバー)でボディに一体化させて見せる「フレームレスグリル」。個性的で面白い表現だが、ノーズ先端へ突き出したうえに横桟と その隙間が繊細なので SUVとしては強度不足に見えてしまって残念。(-5点)

・バンパー

  アンダーガードぽいのはガーニッシュ。SUVっぽい表現だが、どうせガーニッシュだし、走破性を目指さないクーペSUVには似合わないのでは。

  エアインテークフォグランプの所に薄く目立たないように。クリーンなデザインに貢献。

・ボンネット

  ショルダーからストレートに続くフラットなボンネットは前方見切りに効果的。運転の し易さのテーマ通り。

・ウィンドウ周り

  前方視界の良さを考えて Aピラーの付根を後方移動。視界のテーマ通り。

■サイド (10点/20点満点)

カーデザイン

・ルーフ

  パノラマルーフはドイツ等のオープンカーを参考に前席から見えるような位置にしたらしいが、小柄なドライバーにとってはシートを前に出すし視点が低いので効果はイマイチ。後席の解放感には大きな効果。

  そんなパノラマルーフは最上級グレードのオプションなのは残念。そんなオプションにするなら他の方法でオープンカーのような光と風を味わえるデザインにすべきだったのでは。(-5点)

フェンダー、ドア

  ホイールアーチとドアの下端にプロテクター。グレードによってツヤあり塗装だったり、メッキモールが付く。クーペSUVとは言え 泥の付きやすい位置だけに微妙。

  ドアの下端はサイドシルをカバーしているので脚は泥で汚れにくくて良い。

・ウィンドウ周り

  フラットなベルトラインによる視界は運転のし易さとしては悪くない。しかし窓のサイズは広くないのは前述の通り。横方向の視界が優れているとは言えないし、オープンカーのような風と光 とは とても言えない。アイデアのうちのスリーク プロポーションに偏り過ぎでは。

  先代踏襲のピラーに埋め込んだリア ドアハンドルは使い勝手がイマイチ。先代は前席優先のクーペルックなので理解できるが、新型は全席爽快がテーマなので後席側も使いやすいドアハンドルにすべきだったのでは。(-5点)

■リア (10点/10点満点)

カーデザイン

・ランプ

  最近流行りの横一直線のランプ。外観で両端の下側が膨らんでいるのはハリヤーに似ているが、内部のライトの細切れになった凝ったグラフィックで一応差別化されている。

カーデザイン

ヴェゼル、右 ハリアー

 ・バンパー

  フロント側と同様にアンダーガードっぽいガーニッシュなのは微妙。ガーニッシュよりディフューザーの方が似合うのでは。

・ハッチ

  ナンバープレートの位置が先代より下がったのでハッチの面がクリーンになった。

・ウィンドウ周り

  リアウィンドウの傾きは空力抵抗(ドラッグ)に不利な約30度。空力性能よりクーペらしさを優先。ルーフスポイラーとサイドスポイラーで不利な空力をカバーか。

■おまけ (デザインクリニック提案)

  例として レビューで気になる点について 見直し案を提案する。テーマは「解放感」と「シンプル化」。

  解放感はテーマのオープンカーのような光と風に近づけること。そのアイデアとして特に シトロエン DS4 の「パノラミックフロントウィンドウ」やシトロエン C4 ピカソの「ゼニス ウィンドウ」を参考にした。

  シンプル化は意匠的な(グラフィカルな)モノを あまり好まないジェネレーションCに合わせてシンプル化し、さらに覚えられ易いように特徴的なカタチを強調してアイコニック(記号的)にすること。シンプルな方が特徴的なカタチが分かり易い。

カーデザイン

リファイン案

  リファイン案の主なポイントは以下の通り。

・解放感のためプロポーションを変更

  ルーフを上げ、リアウィンドウを立てて頭上周りの空間に余裕を

  (リアウィンドウの角度によって空力抵抗を少し向上)

  パノラミック フロントウィンドウで空へ広がる解放感を(小柄な人でも味わえる)

  サイドウィンドウを上下へ広げて外界との一体感を拡大

カーデザイン

リファイン案

・意匠的な(グラフィカルな)デザインをシンプル化

  ショルダーのキャラクターラインを下げてショルダーをクリーンに

  (サイドボディを低重心化、リフトアップ感より安定感)

  グリルやランプをクリーンにしてホンダのスタイル「ソリッド ウィング」らしく

  (先代の面影も少し残したカタチで)

  上下左右のデイライトによってホンダの「H」の字を表現してアイコン化

・その他に機能・性能を重視して変更

  リア ドアハンドルを使い易い位置へ移動 (後席の使い勝手重視)

  アンダーガードなくしてチンスポイラーへ変更 (走破性より空力重視)

カーデザイン

上 オリジナル、下 リファイン案

■注記

※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価

※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと

※画像の出典

https://www.honda.co.jp/VEZEL/webcatalog/design/3d/

https://www.honda.co.jp/VEZEL/webcatalog/design/

 https://www.mazda.co.jp/cars/cx-30/design/

https://toyota.jp/harrier/compare/

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