トヨタ流「カイゼン」の賜物。クーペのスタイルとSUVのスペースを絶妙に両立
■まとめ (A 合計90点/100点満点)
トヨタ ハリアー(4代目)は背が高いのに流麗なフォルム。クーペ ルックのSUVと言われることも多いが、スタイルとスペースが両立するギリギリの絶妙な所を攻めた。さすが4代に渡って「カイゼン」を続けてきただけあって、ユーザーの欲しいものが分かっている。
先代はスペースへの未練が強かったためか、サイド ウィンドウ周りに流麗でない滞りが見られたが、新型はスタイル優先の方針が明確で、グリーンハウスを上手く絞り、ウィンドウ周りの滞りがない。サイドボディはユニークで大胆なテーパー状の断面変化で流線形をシャープに表現。SUVらしい大きな面を流麗かつ力強く見せている。
新型ハリアーに比べると、メルセデス GLCクーペやBMW X4等の他のクーペ クックのSUVはSUVらしい豊かなスペースへの配慮が薄く、単純にスペースを割り切った腰高のファーストバック クーペに見える。
このデザインの完成度なら今後のモデルチェンジは何を するのだろう と余計な御世話を考えるほど文句のつけようがない。今後のトヨタ車の御手本になるのでは。
■主な比較対象車
・トヨタ RAV4 (姉妹車)
・ポジション
2020年発売のSUV、トヨタ ハリアー(4代目)は本格的に海外展開することになったグローバル車。とは言っても、日本向け優先で開発したものを海外へ持って行く という展開の仕方らしく、これまでの方針からガラッと変わることは なさそうだ。
また姉妹車のトヨタ RAV4 (5代目)はオフロード寄りのSUVへポジション変更したため、ハリアーは従来通りオンロード寄りのクロスオーバーSUVというポジションに割り切ることが できる。
・用途
「Graceful Life(優雅で豊かな人生)」をキーワードに、SUVとしての機能性よりも感性価値を重視し、ユーザーの人生を豊かにするパートナを目指したそうだ。つまりオフロード走行性もスペースもニの次で、カッコ良さ最優先ということか。
・ユーザー
ハリアーは20代、30代のユーザーが非常に多く、トヨタでは貴重な存在らしい。
ターゲットは目利きの30代男性。これらの層は確かなモノへの こだわりがあるが、これ見よがしでなく、さり気なく表現したい そうだ。
・デザイン要求
若い年代が豊かな人生をイメージできるような、さり気なくカッコ良いデザインが求められる。言うならば、現代のスペシャリティカー ということか。
■コンセプト (30点/30点満点)
・テーマ
キーワードは「Dignified Elegance」。直訳すると「威厳のある優雅さ」で、超高級車みたい。一方、「大らかで緊張感のある強さ」という日本語のキーワードだと、言葉が矛盾した感じ。具体化すると「品格」、「知性」、「ちょうど良さ」等らしいが、あまり具体的でない。結局スタイリッシュかつ逞しいシルエットという意味らいしいので、そこまで行けば納得だが、どうもキーワードの言葉遊び感。(-5点)
・アイデア、モチーフ
グリーンハウスを絞り込んでスタイリッシュさを出し、下半身を張り出して たくましさを出すというアイデア。
たくましさをRAV4みたいにゴツゴツさせないアイデアが 「断面変化」。サイドボディの断面の曲率が変わることで、流線形のように見せている。まるで円錐の一部のようなテーパー状の断面変化で、フロントフェンダーは大きく、後端はシャープ。伸びやかで力強い表現だ。フロント側にボリュームのあるFF車に合っている。(+5点)
そのアイデアを 「speed shape」というオブジェで具体化。イメージ統一に効果的。
・スタイル
トヨタのデザインスタイルである「キーンルック」、「アンダープライオリティ」が適用されている とは言えるが、それ以上に先代までとの共通性、言わばハリアーらしさ「ハリアーネス」が強いように見える。
・パッケージング
先代に比べて少しワイド&ロー化してクーペ感が増した。トレッドも広くなって、安定感が増した。
RAV4に比べると前後のオーバーハングが長い。オフロード走行には不利だし、全長とのバランスからするとホイールベースを伸ばしたいところだが、販売台数の多いRAV4に合わせているのかも。それなら仕方ないか。
■全体デザイン (20点/20点満点)
・プロポーション
スタイル優先ながら、意外とスペースにも配慮。簡単にスペースを あきらめず、スタイルとスペースが両立するギリギリの線を攻めている。
ルーフスポイラーで錯覚しがちだが、ルーフは意外と長い。先代に比べるとルーフラインが丸まって流麗さを増しているが、それほど下がっていない。
グリーンハウスの絞りは強くなったが、ベルトラインの下は あまり絞らず、荷室の平面積を確保。
ベルトラインは高く、窓の小ささでクーペらしいスポーティさを表現。視界等の実用性よりもスタイル優先。
・フォルム
先代に比べてフロントの立体感を増して、力強くなった。ボンネットの先端を前に出し、傾斜を減らして、重厚感。バンパーの凹凸を増して、アクティブ感。
サイドボディはユニークで大胆なテーパー状の断面変化で流線形をシャープに表現。SUVらしい大きな面を間延びさせず、流麗かつ力強く見せている。また流線形の後端はリアスポイラーのように突き出していて印象的だ。
一方フェンダーフレアは ゆったりした ふくらみのブリスター形状。ことさらフェンダーアーチを強調しないのもハリアーネスか。
■フロント (10点/20点満点)
・ランプ
フロントランプはアッパーグリルからフェンダーにフォルムに沿って自然に延びる切れ長の外形状。
フロントランプの内部はL字のランプを2重に重ねて さり気なく個性をアピール。デイタイム ランニング ランプのグラフィックは もしかしたら外形状なみに重要。
・グリル
アッパーグリルには先代を踏襲した縦縞の樹脂ガーニッシュ。これも初代から続くハリアーネスなのだろうが、初代や2代目の縦格子グリルから単なる飾りに形骸化しているので、安っぽく見える。またエンブレムが先代までのハリアー専用の「チョウヒ」(鷹科の鳥)から、グローバル化に伴ってトヨタのマークに変わったのも安っぽさを増している。(-5点)
アッパーグリルの下からヘッドランプの下へ続くメッキモールが流麗で目を引く(アイキャッチ)。アッパーグリルのガーニッシュの代わりにハリアーのアイコンに なれるのでは。
ロアグリルはアンダープライオリティらしい大口。台形なので安定感がある。グリルから下にブラックばかりだが、グリルの横格子と下側のメッキモールにより、単なる「アゴ無し」には なっていない。
・バンパー
ロアグリルの両脇には段差のある「ほうれい線」。トヨタのデザインスタイルなのかと思えるくらい最近のトヨタ車で多い。空力のためサイドボディを平坦にした際のフロント側との段差を埋めるためとか、オーバーハングの重さを視覚的に軽減して見せるためが目的と思われる。しかし単なるガーニッシュでは機能的でなく、安っぽく見える。例えば、本格的なエアインテークに出来ないものだろうか。(-5点)
バンパー下端はプロテクター(クラッディング)風の樹脂で、さり気なくSUVらしさを表現。
■サイド (25点/20点満点)
・ルーフ
グレードによって「調光パノラマルーフ」がつく。液晶で透明度が変わる仕掛けは面白い。「星を見せて」とかの音声認識用キーワードは照れるが。(+5点)
・フェンダー、ドア
先代の水平基調からウェッジシェイプに変わり、ダイナミック感。ベルトラインの下に断面変化の流線形ウェッジ。その下にはウェッジかつキックアップのキャラクターライン。
サイドシルにはプロテクターでSUVらしさを表現。
・ウィンドウ周り
ウィンドウ グラフィックはルーフラインやサイドボディのウェッジに合った自然な形状。尖ったリア クォーターウィンドウはダイナミック感に効果的だし、斜め後方視界にも有効。
■リア (5点/10点満点)
・ランプ
リアランプはフェンダーまで張り出した細い横一文字でワイド感。サイドボディの流線形ウェッジの細いピークに合っている。このランプの細さは先進性を表現する最近のトレンドか。
横一文字と言っても直線ではなく、中央が台形状に凹んでいる。ハッチの台形状の凹面やバンパーのメッキモールの形状に呼応していて統一感。
ウィンカーが低く小さいため、視認性が悪くて危険という意見も多い。ストップランプの近くが光るだろうと見る人のイメージとギャップがあるので、合法でも そう言われてしまうので要注意。
・バンパー、ハッチ
サイドボディの流線形ウェッジに つながるピークはエッジが鋭くて高精度感。その下側は大きく凹んでウェッジを強調。
凹面の下側には水平のキャラクターライン。このラインはドアの後ろ上がりにキックアップしたラインとの つながりがイマイチ。サイドとリアを別々にデザインしたように見える。例えば、GLCクーペはラインが もっと連続しているように見える。(-5点)
バンパー下端にはプロテクターでSUVらしさを表現。実は ここが1番出っ張っている所だが、ブラックなので目立たず、「出っ尻」には見えない。
・ウィンドウ周り
ハッチの面のピークが高い位置のため、窓が小さくて後方視界がイマイチ。クーペルックでスタイル優先だし、バックミラーが電子ミラーならば狭い後方視界は許せるのかもしれない。
■注記
※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価
※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
※画像の出典
https://toyota.jp/harrier/compare/
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