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超 カーデザイン レビュー

「日本車はカッコ悪い」なんて言わせたくない

トヨタ クラウン クロスオーバー 2022 (D 55点)

カーデザイン

若手が本当に作りたかったのは「クロスオーバー シューティングブレーク」?

■まとめ (D 合計55点/100点満点)

  トヨタ クラウン クロスオーバーは「リフトアップ  セダン」(背高セダン)という新しいカテゴリー。このカテゴリーは世界的にもユニークなチャレンジで面白い。世界中のセダンのデザインに影響を及ぼす可能性も期待される。

  このアイデアは「クラウン」が生き延びるための変革を求めて若手に考えさせたもの。若手が欲しい車は 海にもキャンプにも行けて、乗り降りもしやすい、荷物も積みやすい多目的車。まるでSUV

  しかし そのアイデアをリアハッチが無く、最低地上高の低いセダンの枠の中に はめ込んだら、背の高さとSUVぽい飾りだけが残って、多目的性が なくなってしまった。言うならば 「なんちゃってクロスオーバー セダン」。

  おそらく若手が欲しかっただろう車を考えてみると 「クロスオーバー シューティングブレーク」。例えば クロスオーバー ワゴンのシトロエン C5Xをファストバックにしたような車。これならクラウン クロスオーバーの派生モデルとして割と簡単に開発できそうだ。

上 クラウンクロスオーバー、下 シトロエンC5X

  クラウンに薄目ランプのフロントフェイスは新鮮で、さすが若手の大胆さ。

  しかし 若さゆえか、目立つことが優先で デザインの統一感や高級車としての上品さがイマイチ。

  例えば サイドボディは流麗なのにフロントはガチャガチャ凸凹で悪目立ち。

  それに「クロスオーバー」にシャコタンぽく見える大径ホイールはキャンプ場へスーツで来たように場違い。

  これらのミスマッチは塗装やガーニッシュやホイールを替えるだけでも軽減できるのでは。

 

カーデザイン

カーデザイン

上 オリジナル、下 リファイン案

■主な比較対象車

トヨタ クラウン (先代)

トヨタ カムリ (同門車)

トヨタ アバロン (同門車)

トヨタ ハリアー (同門車)

トヨタ bZ4X (同門車)

シトロエン C5X (競合車)

■キャラクター

・ポジション

  2022年発売のトヨタ クラウン クロスオーバーは新たに世界販売するクラウン シリーズ 4モデルの第1弾。  これらのモデルはトヨタが「明治維新」に例えるように 過去のクラウンの伝統に基づかない新世代だ。

  クラウン クロスオーバーは「リフトアップ セダン」と言われる背高セダンであり、  キャッチフレーズは「想像力のフラッグシップ」。何が良いかユーザー各人が思い描くものらしい。

  そうだとしてもクラウン クロスオーバーは同じプラットフォームを使うセダンのトヨタ カムリやトヨタ アバロンに比べると高価格帯なので、デザイン上の差別化は必要だ。

・用途

  普通のセダンと同様。 「全席特等席」をキーワードの居住性やパワフルな加速等が用途。

・ユーザー

  全世界のユーザーが相手であり、特にユーザー像は想定されていない。

  若手の欲しい車としてアイデア作りが始まったが、結局そこから離れてしまった。

・デザイン要求

  つまり明治維新に例えられる新世代をアピールすると共にリフトアップセダンとして居住性や加速性等を高級感あるように表現するデザインが必要。

■コンセプト (20点/30点満点)

カーデザイン

・テーマ

  テーマは「これからのクラウンをゼロから考える」、「飾り立てない上質なデザイン」だそうだが、漠然としている。これでは単なる方法論。もっと目的の具体化が必要。

  状況から解釈すると本当のテーマは「変革」。 社長から求められた クラウンが生き延びるため変えることが目的だ。

  変えること以外の目的も踏襲すべき伝統も無いので、クラウンやセダンを知らない若手に投げたのだろう。

  しかし普通は若手に投げる前に もうちょっと目標を決めるものではないだろうか。

  例えば 「クラウンとは何か」をキチンと定義していない。皆がバラバラの価値観や目標で考えていては整合性あるデザインは出来ないだろう。(-5点)

・アイデア

  若手が欲しい車は 海にもキャンプにも行けて、乗り降りもしやすい、荷物も積みやすい多目的車。まるでSUV

  しかし そのアイデアをリアハッチが無く、最低地上高の低いセダンの枠の中に はめ込んだら、背の高さとSUVぽい飾り(ハリボテ)だけが残って、元々の狙いである多目的性が なくなってしまった。言うならば 「なんちゃってクロスオーバー セダン」。

  これは残念ながらアイデアの形骸化。見栄え優先・機能性軽視のミスマッチが当たり前になってしまって デザイン全体に悪影響している。(-10点)

  例えば セダンの枠を崩してSUV的にするか、それとも セダンの良さを伸ばすか、アイデアを もっと練った方が良かったのでは。通常より開発期間が短くて、アイデアを練る時間が足らなかったのかもしれないが。

  もしSUV的にするならば 「クロスオーバー シューティングブレーク」。例えば クロスオーバー ワゴンのシトロエン C5Xをファストバックにしたような車。これならば クラウン クロスオーバーの派生モデルとして割と簡単に開発できそうな気がする。トランクをリアハッチに変え、最低地上高を上げ、タイヤを替えるだけ(?)

  もしセダンの良さを伸ばすならば 今後発売される新型クラウン セダンみたいなセダンらしいデザイン。やっぱりセダンにはストレートなショルダーライン等の折り目正しい様式美が似合う。もちろん全高は高くして「リフトアップ セダン」らしさ を追求したら面白い。

・モチーフ、スタイル

  フロント フェイスはトヨタのスタイル「キーンルック」と「アンダープライオリティ」に加えて

トヨタbZ4Xと同じく「ハンマーヘッド」がモチーフ。シュモクザメみたいにボンネット中央の前後に走る面の先端から横へ広げるスタイル。横に広げてもフロントランプに つながっていないので機能的には無意味に思えて、ボンネットの面が無意味に凸凹してしまい高級感は ない。(-5点)

  そしてハンマーヘッドは今後のクラウン シリーズでも採用されるらしいが、bZシリーズと共通では見飽きてしまってクラウンのブランド化に不利。トヨタのブランド化だけならマイナスではないが。

カーデザイン

ハンマーヘッドのアイデア

  また 国内販売車にはクラウン伝統の王冠マークが付いているが、海外販売車は普通のトヨタ ロゴマークなので、今までのカムリやアバロンと代り映えしない。クラウンのブランド化には貢献しない。

・パッケージング

  サイズは先代に比べて全長、全幅、全高が増え、プラットフォーム変更によりホイールベースは短縮。全高を除いてカムリと ほぼ同じ。全高が大きく増えて1500mm代というのはSUVでは当たり前でもセダンとしては世界的にもユニークな高さで面白いチャレンジ。車格、居住性、積載性、視点等いろいろな効果が期待できる。もしかしたら世界中のセダンのデザイン影響を及ぼす可能性も期待される。(+10点)

  ところが室内長や室内高は先代よりも下がっていて、サイズアップが居住性に寄与していない。フロア高が上がったせいか。つまり居住性は従来セダン並みでSUVのように広くないのは残念。

  ヒップポイント高は先代より上がったので見晴らしや乗り込みやすさは改善。しかしヒール段差は あまり変わらないので降りやすさの効果は微妙。

  最低地上高も少し上がったが、トヨタ カムリと同じセダンとしては平均的な値で 特に走破性は高くない。

■全体デザイン (15点/20点満点)

カーデザイン

プロポーション

    ルーフは短く、ルーフラインはアーチ形状のファストバック。リア側は極めて短いショートデッキ。セダンというよりクーペのようなプロポーション。居住性よりも新しさを優先した表現。それでも全高が大きいため実際の居住性は悪くない。

  全高の高さに合わせてボンネットやベルトラインは高め。ベルトライン後半にはキックアップもある。6ライトながら窓は大きくなく、解放感は微妙。

  サイドボディが分厚くてボリュームが大きく重たそうな感じがするが、車格は立派に見える。

  ノーズの先端は低められているので、プラットフォーム変更で先代より延びたオーバーハングのボリュームは軽減されている。

・フォルム

  サイドボディは緩やかな断面変化と控えめなキャラクターラインを入れた滑らかなフォルム。

  ところが顔で目立たせようとしたのか フロントやリアはラインや凸凹が多くて煩雑(ビジー)。全体の統一感がない。高級車なのだからサイドボディみたいな流麗なスタイルで全体を統一すれば良いのに。(-5点)

カラーリング

  デザインの最初からバイトーンで考えられていて後からモノトーンが考えられたそうだ。だから色分けに合わせたラインが あちこち付いてしまったのか。

■フロント (15点/20点満点)

カーデザイン

・ランプ

  細いLEDランプで変革を表現。「キーンルック」として 良くある表現だが、保守的だったクラウンだからこそチャレンジングで効果的。(+5点)

・グリル

  一見大きなグリルに見えるが、かなりの面積がダミーグリル。その格子の凹凸が浅いし、ツヤも目立つので いかにもダミーっぽくて安っぽい。(-5点)

  例えば 深彫り格子のツヤ消しなら目立たないのに。いっそのこと堂々とパネルらしく見せるか。とにかく中途半端。

・バンパー

  「アンダープライオリティ」だとしても やり過ぎ。インテークの面から口が飛び出たように見えて不自然。まるでSF映画のエイリアンみたいで悪目立ち。新しさをアピールするにしても 高級車には もう少し上品な表現の方が合うのでは。(-5点)

・ボンネット

  ハンマーヘッドのモチーフを表現するラインが生じているが、パーティング ラインぽく見えるので それほど気にならない。

■サイド (5点/20点満点)

カーデザイン

フェンダー、ドア

  前輪側のブリスターフェンダーが後ろで しぼんでいくのと交代で後輪側のブリスターが 膨らんでいく滑らかな変化が面白い。トヨタ ハリアーの大胆な断面変化に比べると大人しい表現だが、高級車には相応しい。

  フェンダーアーチやサイドシルのプロテクター(クラッディング)はサイドボディのボリューム感の軽減に効果。

  ドアに付いているガーニッシュはサイドボ ディのボリューム軽減のためだろうが、プロテクターに見えず、取って付けたようで悪目立ち。(-5点)

・ウィンドウ周り

  Dピラー付根からリアウィンドウに かけてガーニッシュでブツ切りにしているのは意味不明。(-5点)

  例えば サイドウィンドウからの流れをリアへ抜くつもりなら もっと なだらかな面取りしたカタチになるはず。

・タイヤ、ホイール

  見栄えのために大径ホイールと断面形状を特注した低プロファイル タイヤを採用したらしい。しかし乗り心地には不利だし、走破性をイメージさせる「クロスオーバー」には不釣合。

  特に低プロファイル タイヤはシャコタンぽく見えるし、段差でホイールが当たらないか気になる。キャンプ場へスーツで来たように場違い。(-5点)

  例えば 標準装備は もう少し一般的なサイズのホイールとタイヤにして、デメリットを理解したユーザーがオプションでインチアップする方が良いのではないか。

■リア (0点/10点満点)

カーデザイン

・ランプ

  横一直線の細いLEDランプで革新を表現。最近のクルマには ありがちな表現だが、保守的だったクラウンだからこそ効果的。

・バンパー

  お尻を丸く囲っているライン(段差)はバイトーンの塗分けのためだろうが、モノトーンだと まるで お尻丸出し。高級車ならば塗分けするより流麗さの方が重要ではないか。(-5点)

・トランク

  先代のゴルフバッグ4個に比べて新型は3個に減っている。カムリでも3個だし、トランク容量は増えているので構わないか。

・ウィンドウ周り

  リアウインドウをガーニッシュで わざわざ狭めているような表現は不自然。 (-5点)

■おまけ (デザインクリニック提案)

カーデザイン

  例として塗装とガーニッシュを替えてみた。デザインの統一感と高級車ぽい上品さが増したように思える。

・グリルの周りをボディ同色に

・ドアのガーニッシュを無し

 ・Dピラー付根をボディ同色に

カーデザイン

上 オリジナル、下 リファイン案

■注記

※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価

※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと

※画像の出典

https://toyota.jp/crown/gallery/

https://toyota.jp/crown/

https://toyota.jp/crown/design/

https://toyota.jp/crown/?padid=from_crownBrand_crossover_linkButton_detail

https://toyota.jp/bz4x/

https://web.citroen.jp/c5x/?utm_source=Google&utm_medium=RTB-RRE&utm_campaign=ac_jp_alwayson-c5x_vn_brand_psabra_promo_rtb-rre_p_ld&utm_content=OPT-Lis-Brand-GS-82&gclid=Cj0KCQiAgribBhDkARIsAASA5btmWRNkxbCiDxvitYotAM15F9rVm_Uu32XKKRV-sgjOqF9_Ljy4LqQaAjF4EALw_wcB

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