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超 カーデザイン レビュー

「日本車はカッコ悪い」なんて言わせたくない

ホンダ フリード 2024  (C 70点)

カーデザイン

シンプルを徹底できず 「引っかかり」を あれこれ作ってしまった

■まとめ  (C 合計 70点/100点満点)

  ホンダ フリードは ホンダの登録車の中でも国内ベストセラーのコンパクト ミニバン。「ちょうどいい」サイズ感で、多人数が乗れて、扱いやすい オールマイティな箱。

  新型はサイズ感はそのままに「こころによゆう、笑顔の毎日」を目指した。つまり ストレスから解放され笑顔になれる という意味。

  デザイン結果を見ると 先代のモノフォルムぽいシルエットや彫りの深いレリーフから 新型ではボクシーなシルエットと平面に変わり、シンプルになった。そして 窓の構成・形状・面積を見直したので 視界が 向上した。

  しかし シンプルなだけだと商用車に見えることを心配して デザインの「引っかかり」(アイキャッチ)を あれこれ造ってしまった。

  目立つ2重線のラインを作ったり、ランプの内部形状をバラバラにしたり、「硬質さ」の表現でラインをあちこち入れたり。これらの引っかかるデザインがシンプルな平面に載ると目立ち過ぎて「ノイズ」に見える。シンプル・クリーンに徹した 最近のホンダのデザイン トレンドに乗り切れていない。

  シルエットもボクシーに徹し切れていない。Dピラーは直立させたものの、Aピラーは先代と同じくスラントした傾斜が強いまま。ちょっと「のけぞった」ように見えて 前後のバランスがミスマッチ。

  どうせシンプルなデザインにするなら それに徹した方が 潔かったのではないか と思えて もったいない。

カーデザイン

  例えば 日本で1番の売れスジのホンダ N-BOXカスタムやホンダ ヴェゼル等の最近のホンダ車をモチーフにして、多用したラインを減らし、Aピラーの角度を見直す。そして 曲面を上手く使えば シンプル・クリーンかつ 高品質を表現できるのでは ないだろうか。その方がストレスをなくすというテーマや 新型ホンダ アコード等が示すホンダのデザイン トレンドに合うと思う。

カーデザイン

上 オリジナル、下 リファイン案

  ちなみに 画像生成AIツールで生成してみたら こんな感じ。

カーデザイン

AIによる画像

■主な比較対象車

・ホンダ フリード (先代)

・ホンダ N-BOX (同門車)

・ホンダ ステップワゴン (同門車)

ホンダ ヴェゼル (同門車)

・ホンダ アコード (同門車)

トヨタ シエンタ (競合車)

■キャラクター

・ポジション

  2024年に発売された コンパクトミニバンのホンダ フリード(3代目)は モデル末期でも販売好調だった先代のサイズとプラットフォームを基本的に踏襲。しかし デザインスタイルはガラッと変わった。

  新型は ベースモデル「エア」とSUV風の「クロスター」の2モデル展開。ホンダ N-BOX カスタムやホンダ ステップワゴン スパーダのような少しだけ派手めの売れ筋と思われるカスタム風モデルは提供されない。

  今回は ベースモデルのフリード エアをレビューする。

・ユーザー、用途

  フリードは 子育てファミリーのファーストカーとして利用されることが多いモデルだそうだ。

  そして 子育てファミリーへの価値は「家族のしあわせ」であり、毎日の「こころの余裕」。

  具体的には 「ちょうどいい」サイズ感で、多人数が乗れて、人が乗らない時には荷室として使えて、扱いやすくて、維持が苦にならない オールマイティな箱。

・デザイン要求

  つまり 多人数乗車に過不足ないサイズで取り回しに優れた、まさにコンパクト ミニバンらしい価値を表現するデザインが求められる。

■コンセプト (25点/30点満点)

カーデザイン

・テーマ

  キーワードは「“Smile” Just Right Mover」、「こころによゆう、笑顔の毎日」。

  これは ちょうどいい使い勝手、オールマイティなカテゴリの価値観、ストレスから解放され笑顔になれる という意味とのこと。

  言い換えると「誰でもどこでも、自由な気持ちであつかえる」。つまり  サイズ感に由来する扱いやすさと便利さを維持したうえで 広い、明るい、快適を追求したらしい。

・アイデア

  デザインのキーワードは「スタンスの良さ」と「硬質さ」。

  スタンスの良さとは 走りの良さを 低重心とタイヤを見せることで表現。硬質さとは 良いものを買った と思えるよう線をピシッと出した。

  いずれのアイデアも悪くはないのだが、ドライバーやオーナー向けのアイデアであって、家族向けのフリードでなくても当てはまりそう。テーマである「笑顔の毎日」に直結していないのがイマイチ。(-5点)

 ・モチーフ、スタイル

  最近のホンダのデザイン スタイルは シンプルでクリーンを目指している というのは分かるが、それだけでは他社との差別化がハッキリしない。

  ホンダのブランド力のため「ホンダらしさ」を示すデザイン スタイルを明確化できないものだろうか。

・パッケージング

  サイズは先代に比べて全長が伸びて、全幅、ホイールベース、タイヤサイズが同じ。

  全長が伸びたのは 主にパワートレインの変更でノーズが伸びたからで、基本的に先代のサイズを踏襲。

  トヨタ シエンタと比べると フリードは全長と全高が上回っているのでスペース的には有利。逆に言うと最小回転半径を含めた取り回しはシエンタの方が有利なので、そこをカバーするデザインが重要。

■全体デザイン (15点/20点満点)

カーデザイン

プロポーション

  先代に比べて全体的に箱らしく(ボクシーに)なった。オールマイティな箱という用途の表現に即している。ベルトラインは 先代の後ろ上がりから水平基調へ。ボンネットは 先代のスラントノーズから水平に近づけた。

  ピラーは 先代のAピラーとA'ピラーの構成に対して 新型はAピラーと三角窓に整理して 斜め前方の視界を向上。

  それは良いのだが、Aピラーの傾斜角度は モノフォルムっぽいスラントノーズだった先代から見直さないままで、ピラーの付根を後方移動したためピラーの上側がドライバーの顔に接近してしまった。視野に入りやすいし、乗降り性も不利。外観も 先代より直立させたDピラーとのバランスが ちょっと「のけぞった」ように見えてミスマッチ。

  テーマの「よゆう」のためには  Dピラーやボンネットと同様に Aピラーの角度も見直した方が良かったのでは。(-5点)

  平面形はフロント コーナーを面取りし、リア エンドもラウンドさせていて、取り回し性に配慮されている。また それは コーナーよりタイヤを意識させるので アイデアの「スタンス」に合っている。

・フォルム

   先代は 凹面を多用して 彫りが深くシャープなキャラクター ラインや凹凸(レリーフ)を斜めに走らせていた。

  新型は 平面に近づけてシンプル化し、あまり彫りこまないキャラクターラインに変わった。ラインの本数はかなり多く、シンプルな面と合っているとは言いにくい。

  また ラインのエッジが緩めでアイデアの「硬質さ」が表現できているかと言うと微妙。 硬質を表現するには ラインのエッジを もっとシャープにする方が効果的では。

・カラーリング

  宣伝に使われているイメージカラーの他は 暗めの色調が多いのは意外。悪い訳ではないが テーマである「笑顔の毎日」を表現するなら もっと明るい色調を増やしても良いのでは。

■フロント (10点/20点満点)

カーデザイン

・ランプ

  ランプは 上段に長円(オーバル)を2つ、下に小さい丸を配置。形状も位置も そろっていないので バラバラのものを寄せ集めたように見えて統一感がイマイチ。(-5点)

  デザイナーは シンプルだと商用車に見えるので「引っかかり」をつけようという意図らしいが、アイキャッチというよりノイズになってしまった印象。やはり シンプルさに耐えられなかっただろうか。

・グリル

  アッパーグリルの位置とラジエーターの位置がずれているので バンパーぽく見えるパネルに4本スリットを入れた。機能とデザインが合っていなくて蛇足が必要になってしまった。

  それにアッパーグリルの周りを枠線みたいなラインで囲っているのは 必然性が感じられず、シンプルなデザインに対してノイズになる。(-5点)

  何か「引っかかり」が欲しいなら 例えば ステップワゴン スパーダのように最小限のメッキ部品を使う方が ユーザーにとって理解しやすい。

・バンパー

  アイデアの「硬質さ」を表現するためか、コーナーの縦にクッキリした折れ線。空力的な機能からすると線が下まで伸びていないため中途半端に見える。またリア コーナー等の他の面が比較的なだらかなので 折れ線は唐突感があって微妙。

・ボンネット、ウィンドウ周り

  ボンネットは水平に近づいたのドライバーからボンネットが見える とのこと。しかし 実際には あまり良く見えないので微妙。

  例えば ステップワゴンのように もう少し水平にした方が 前方見切りが良くなって取り回しやすさが向上するのでは。

■サイド (25点/20点満点)

カーデザイン

・ルーフ

  ルーフは先代に比べてリア側を少し高くしているらしい。競合車に比べて後席重視のフリードは もっとリア側を高くしても良いのでは。

フェンダー、ドア

   サイドボディを前後に走る2重線(キャラクターライン)は クレイモデルの作業中に偶然できたものを「引っかかり」として採用したものとのこと。しかし シンプルな面に対して目立ち過ぎ。さらに フェンダーフレアにも2重線がある。デザイナーはシンプルに徹することが耐えられなかったのだろうか。(-5点)

・ウィンドウ周り

  新型のサイドウィンドウは 全体が台形になり、下端が水平基調で横方向の見切りも良くなった。また リアクォーター ウィンドウの面積を広げたので 室内からの視界が後席も含めて向上。

・タイヤ

  タイヤサイズは タイヤの価格に配慮して先代を踏襲。必要以上に大きくしないのは ユーザーにとって うれしい心遣い。

■リア (5点/10点満点)

カーデザイン

・ランプ

  リア ランプは フロントランプと全く違う「田」の字のカタチ。「田」や「十」のモチーフが他にはなく、バラバラのものを寄せ集めた感が増してしまう。このカタチはデザイナーの「遊び心」の表現らしいが、ユーザーには理解できない。(-5点)

 ・バンパー

  先代に比べてボディ同色の面が下の方まで見えて アイデアの低重心に合っている。

・ハッチ

  サイドボディの2重線の延長で ハッチにも1重線。線の数や彫りの深さが違うし、リアランプで分断されているので ボディを取りまいて一体化させる効果は あまりない。

・ウィンドウ周り

  後方視界も良好。

■おまけ (デザインクリニック提案)

カーデザイン

上 オリジナル、下 リファイン案

  例としてレビューで気になる点について見直し案を提案する。テーマは「N-BOXカスタムの兄貴分」。ホンダのコンパクト ミニバンなら日本で1番売れているホンダN-BOXの売れスジN-BOXカスタムの類似性を利用しないテはない。

  そして「シンプル・クリーンの徹底」。新型フリードで商用車ぽく見せない「引っかかり」のために多用されていたラインや変わったカタチのランプをなくす。それには 新型ホンダ アコードを参考にする。

  さらに新しいホンダのデザインスタイルとして「ホンダ ウィング アイ」等のホンダらしいフロントフェイスを提案する。

カーデザイン

リファイン案

  見直し案の主なポイントは以下の通り。

・視野や頭上空間の余裕などのためプロポーションを変更

  ノーズを少し伸ばして前方見切りを向上

  Aピラーを少し立ててドライバーの顔からピラーを離す

 (さらにN-BOXのようにブラックアウトしてスペースの広さを表現)

  Dピラー上側をカーブさせ、フォルム全体でバランスしたコンパクトな まとまり感を

 (さらに下側をキックアップさせて歴代のフリードやN-BOXとの類似性を)

  3列シートの後席側の頭上空間のためルーフのピークを後席側へ移動

カーデザイン

リファイン案

・キャラクターラインを減らしてクリーン化

  デザインの「引っかかり」ために多用されていたラインを減らし、

  代わりに凹面を含めた曲面を使って高品質感を示す

  ショルダーラインもホンダ ヴェゼルのように彫りを深くして印象的に

・フロント フェイスもホンダらしいスタイルに

  ランプ形状は「ホンダ ウィング アイ」を提案

 (内部グラフィックは 3連続の台形のグラデーションで「羽」をイメージ)

  グリルにはホンダの「H」の字形のメッキモール

  (アッパーグリルとロアグリルの台形メッキモールを上下(∪と∩)合わせて「H」の字)

  →この表現があれば フロントのエンブレムは なくせるかも

  ロアグリルはラジエータの位置に合わせてシンプルに一体化

■注記

※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価

※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと

※画像の出典

https://www.honda.co.jp/FREED/webcatalog/design/

https://www.honda.co.jp/FREED/configurator/

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