パッと見では先代と変わっていないように見えるが、顔が草食動物から肉食動物へ
■まとめ (B 合計85点/100点満点)
ホンダ N-ONE(2代目)はスチールボディ外板(パネル)を ほとんど変更しない異例のフルモデルチェンジ。そして好評な台形シェイプや丸目ランプ等のカタチを踏襲。
そもそも先代のデザインは「タイムレスNデザイン」がテーマ。新型は「タイムレスの継承と進化」で、先代を引き継ぎ、未来へ つなげる狙い。タイムレスなデザインはヘタに変えようとすると、「らしく」なくなるので、ホンダ スーパーカブのようにカタチを変えない ことにしたそうだ。そんな揺るがないブランディングは日本車としては希少。ブランドを確立するには継続が重要だ。
そんなチャレンジは近いサイズのホンダ N-WGNとの棲み分けを明確化したポジショニングも影響していると思われる。N-WGNは価格と使い勝手、N-ONEはデザインを優先。そのため新型は低価格グレードを廃止して、高価格帯へシフト。
新型は樹脂部品やランプを変えて、踏ん張り感(ワイド スタンス)や肉食動物的な鋭い表情を表現。しかしボディ パネルを変えないので限界がある。腰高なプロポーションは先代のままなので、走りの良さやスペースの広さの表現は進化していない。また鋭く力強い表現を狙ったためかディテールの高品質感も進化しておらず、高価格帯シフトに見合っていない印象だ。それでも揺るがないブランディングを目指すならば、「変えない勇気」を応援する とともに将来的なブラッシュアップを期待したい。
■主な比較対象車
・ホンダ N-ONE (先代)
・ホンダ N-WGN 2019 (B 75点) - 超 カーデザイン レビュー (同門車)
・ホンダ N-BOX (同門車)
・ホンダ e (同門車)
・スズキ アルト ラパン (競合車)
・スズキ アルト ワークス (競合車)
・ポルシェ 911 (参考車)
■キャラクター
・ポジション
ホンダの軽自動車Nシリーズの中で1番小さいサイズの軽セダン、ホンダ N-ONEは2020年に初のフルモデルチェンジ。(軽自動車は乗用ハッチバックをセダンという)
近いサイズのホンダ N-WGNとはサイズの他に価値観で棲み分け。N-WGNは価格や日常の使い勝手を優先する王道グループ、N-ONEは使い勝手よりもデザインを優先する個性派グループだそうだ。そしてN-ONE先代の低価格グレードは新型で消滅し、高価格帯へシフトした。
・用途
N-ONEの本質的価値をホンダ N-360から続く以下の3点に整理したそうだ。そのうち①と②は空間として共通性ありそうだが、それらと③の走りと両立させるのは難しそうだ。
①MM思想(マンマキシマム・メカミニマム) 空間を大きく、機械を小さく
②くつろぎ安心
③走りの楽しさ
・ユーザー
ターゲット ユーザーは20代から30代の若い男女。実際の購入ユーザーは高齢化しているので、あえて若年層を狙った。若者にはレトロカルチャーのCMでN-ONEのタイムレスをアピール。これまでのユーザーは先代のカタチが大好きで、台形シルエットや丸目ランプが好かれているそうだ。
・デザイン要求
つまりながら、空間と走りを表現しつつ、愛着を持たれているカタチを活して、高価格帯シフトに見合う高品質なデザインが求められる。
特に空間と走りの両立が難しそうだ。先代は標準モデルとローダウンで全高を変えた2種類のモデルが売られていて、空間と走りの棲み分けも考えたかもしれない。新型はローダウンに統一されたが、はたして両立できるのだろうか。
■コンセプト (35点/30点満点)
・テーマ
キープコンセプトで「タイムレスの継承と進化」がキーワード。
先代はホンダ初の軽自動車N-360をリスペクトして、その思想を受け継ぎ、ホンダ N-BOXに続く新しい軽自動車シリーズ「N」を発展させる「タイムレスNデザイン」をテーマにしていた。
新型は先代からの引継ぎと次世代への引継ぎを意図している。日本車では珍しい考え方。ブランドを定着させるには継続性が重要だ。変化の激しい時代こそ普遍性が貴重。それだけ先代へのユーザーの支持が強かったのだろう。(+10点)
・アイデア
走りと安全性の進化の表現として、踏ん張り感(タイヤのスタンスの広さ)と前進感を強調するアイデア。と言ってもボディパネルが ほとんど先代と同じなので、出来ることは限られている。
当初は新規デザインを考えて、1/1のモデルまで作ったが、N-ONEらしくない ということで取り止めている。開発費低減のためN-WGNとボディパネルを一部共用という話も出ていたそうなので、それに比べて先代踏襲がマシだったのだろう。
良いデザインからヘタに変えよう とすると、正解を外したもの なりやすい。新しい正解へ たどり着くのは大変だ。先代で好評な本質を抽出したうえで、新しいデザイン要件が必要だろう。例えば、ポルシェ911は伝統的な価値としてシルエットを大切に守りながら、サイズとプロポーションを変化させてきた。小手先では出来ない。
・モチーフ
先代に比べて丸と四角を強調。カタチが明快で視認性が高くなった。
・スタイル
丸いフロントランプと四角いロアグリルはN-WGNと共通性がある。N-BOXもフロントランプの外形状は四角いが内部のランプは丸いので共通性がある と言えなくもない。これらがNシリーズのスタイル になるのだろうか。
・パッケージング
新型はサイズの変更なし。新しいプラットフォームもホイールベースやトレッドを変えなかったのでボディパネルを踏襲できた。プラットフォームとオーバーハングは少し違うが、パネル取付を工夫して調整。
それでもボディパネルの踏襲によって刷新できなかったところもある。衝突安全対策に影響があってN-WGNには付けられたステアリングのテレスコピックがN-ONEには付けられなかったそうだ。販売台数と開発費の点から難しいだろうが、くつろぎ安心を価値に しているので、やはりボディパネルを更新して衝突安全を たっぷり進化させて欲しいところだ。(-5点)
■全体デザイン (10点/20点満点)
・プロポーション
先代のローダウン仕様を踏襲。ローダウンはルーフのフラット化とサスペンションの変更等で全高を下げているので、ボディのプロポーションは全高の高い標準モデルと ほぼ同じ。
標準モデルは空間の広さを求めて軽ハイトワゴン並みの全高だった。そのうえN-BOXと共通のプラットフォームのためか、ボンネットやベルトラインの位置が高く、腰高のプロポーション。
ローダウンで数値上は軽セダンの全高になったが、見た目は腰高のまま。例えば、競合車であるスズキ アルト ワークス等に比べて走りが良くなさそうなイメージ。また窓が小さめ のうえ傾斜も あるので、スペースの広さも十分表現できていない。(-5点)
ボンネット等を低くするのはプラットフォームとして難しいだろうが、メカミニマム思想のホンダなので、メカの高さ方向を縮めることも頑張って欲しい。
・フォルム
先代と基本的に同じ。シンプルな台形シェイプは時代を感じさせない。まさにタイムレスな表現。ボディ全体でスタンスの広さも示している。(+5点)
新型の前進感の表現で、フロントエンドは垂直に近く変化し、スタンス等の表現や空力対策による凹凸が追加されて力強くなった。その代わりフロントの垂直面や力感とその後ろの台形やシンプル形状に違いがみられて統一感を損なった。むしろ先代の方が全体で一体となった塊感があり、ホンダ eのツルピカ ボディに つながる新しさを感じる。進化としてはイマイチ。(-5点)
・カラーリング
先代に比べてカラーバリエーションが減り、グレードによって選べる色が限定されるのは ちょっと残念。上級グレードでカラー オプションが追加される なら分かるが。(-5点)
■フロント (10点/20点満点)
・ランプ
先代のフロントランプは外形状が楕円、内部が円だった。そのためランプの視線が上に それて、草食動物的なロンパリぎみだった。
新型はカバーが楕円でランプが円になった。丸のモチーフが明確になるとともに、ランプの視線が前へ集中し、肉食動物的な鋭い目になった。
その代わり、ランプが奥に引っ込んだ奥目となり、ランプとフロントパネルの間の段差が大きくなったように見えたり、丸目ランプしかなかった頃の古い車のように見えて、進化としては先進性を あまり感じない。(-5点)
・グリル
先代はアッパーグリルとロアグリルを一体化して見せるシングルフレームで囲ったような表現だった。新型は幾何学的で明確な表現に変わった。
アッパーグリルは周囲のブラックガーニッシュと合わせて逆台形。N360のモチーフに より近づき、視認性は高くなった。N-WGNとの共通性もあり、Nシリーズのブランディングにも有効だろう。
ロアグリルはガーニッシュと合わせて幅広い長方形で、ワイド スタンスの表現に効果的。ただラジエーターの開口は小さく、ガーニッシュばかり目立つので、無理やり広げた感がするのは微妙。フォグランプが付いていると少し必然性があるように見えるかも知れないが。
・バンパー
空力対策のためコーナーが角張って、アッパーグリルとロアグリルの間が凹んだ。ロアグリルの角にかけてホウレイ線のようなシワがあり、ロアグリルを無理やり広げた感を強調してしまっている。そんなグリル周りよりバンパーの面が引っ込んでいるので、バンパーが薄っぺらく見えて安心感が損なわれている。(-5点)
・ボンネット
基本的に先代を踏襲。ボンネットとグリル ガーニッシュとの すき間は先代より小さくなったらしいが、未だに気になる大きさ。エアインテーク機能のため すき間を なくせないそうだが、インテークらしく見えないので、チリが合わないように見えて、高価格帯シフトにしては微妙。
■サイド (20点/20点満点)
・ルーフ
先代のローダウン仕様を踏襲。
・フェンダー、ドア
先代を踏襲。キャラクターラインが少なく、幾何学的的にシンプルなサイドボディは最近のトレンドから見ても古く見えないタイムレスな表現。
ボディ全体台形なので、わずかなフェンダーフレアでスタンスの広さが示されている。
キャラクターラインが2本走っているのはボディの厚みを軽減して見せるためだろうが、さほど隠せていない。
・ウィンドウ周り
Bピラーをブラックアウトして、サイド ウィンドウ全体を台形に見せるのはボディ シェイプに合っている。その台形に見せるためガーニッシュとガーニッシュと窓との段差が ちょっと気になる。高価格帯シフトなので。例えば、ホンダ eのようにフラッシュ サーフェイス化して段差を減らせないものだろうか。
■リア (10点/10点満点)
・ランプ
ランプの外形状は先代を踏襲。内部のグラフィックが緻密になり、進化を表現。
リフレクターを分離して下へ移動して、ワイド スタンスの表現に寄与。
・バンパー
新型はハッチの下にブラックの横長ガーニッシュを追加してワイド スタンスの表現。またコーナーの下部を削って、タイヤを見えやすくして前進感と軽快感。
・ハッチ
基本的に先代を踏襲。
■注記
※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価
※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
※画像の出典
https://www.honda.co.jp/N-ONE/webcatalog/styling/design/
https://www.honda.co.jp/N-ONE/
https://www.honda.co.jp/N-ONE/webcatalog/styling/3d/
https://www.suzuki.co.jp/car/alto/360viewer/large/main.htmlp
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