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超 カーデザイン レビュー

「日本車はカッコ悪い」なんて言わせたくない

『自動車デザイン歴史・理論・実務』 釜池光夫 著 (おすすめ本)

カーデザイン

カーデザインのプロセス等について全体像を概観できる まるで教科書

■まとめ

  『自動車デザイン歴史・理論・実務』はカーデザインのプロセスを中心にカーデザインに関する全体像を広く浅くまとめ、演習の仕方まで載っている教科書のような著作。そして演習の解答例として多数のコンセプトのプレゼンテーションが載っている。それらは元デザイナーである著者の経験に裏打ちされているので説得力がある。また三菱自動車出身なので、三菱 アイらしきアイデアスケッチや写真が見られるのも楽しい。

  表紙には「デザイナーを志す方への入門書」と書かれていて、カーデザインに興味のある学生等に向いていそうだ。

カーデザイン

■どんな本か

・著者

  著者の釜池光夫氏は 三菱自動車の元デザイナー。千葉大学芝浦工業大学で教育の経験もある。

  著者の言う「デザイン」とは「夢を形にする技術」だそうだ。

  (例えば、『ビジネスの武器としての「デザイン」 』の著者  奥山清行氏が言うところの「言葉のデザイン」と「スタイリング」の分類に当てはめると、主に「スタイリング」になろうか。夢を作る方が子供のデザインで)

・概要

  カーデザインの歴史、作業分担、プロセス、スケッチやプレゼンテーションの手法、演習作品等について1件1ページにまとめて、とっつきやすく解説されている。

■特に面白かったのは

・コンセプトの5W1H

  5W1Hとはコンセプトを説明するための基本的な項目。それを明確にしたうえでコンセプトをストーリーとして表現するのだそうだ。5W1Hの単語はジャーナリストが記事を書く時と同じだが、コンセプトではデザインについて具体的な内容を問うている。

    What: そのデザインの特徴・目的は何か?

    Who: 誰がこのモデルのユーザーか?

    When: このデザインは何年後を想定しているのか?

    Where: どこで売られ使用されるのか?

    Why: このデザインは何故このスタイルなのか?

    How: いかにデザインを特徴付けるのか?

  実車の取材記事を読んでも5W1Hが あまり明確でない事例が散見されるので、デザイナーの心構えとして重要なのだろう。

  このブログのレビューでも項目分けして分かりやすく記述するようにしてきた。コンセプトの5W1Hに当てはめると以下の通り。

    What: ポジション、用途、デザイン要求

    Who: ユーザー

    When: (発売年)

    Where: (日本国内)

    Why: テーマ

    How: アイデア、モチーフ、スタイル

・自己組織化探査

  著者は共同研究者と共に「スケッチ開発シミュレーションシステム」をPC上に構築したそうだ。自動車の基本スタイルのパラメータをランダムに発生させて自動描画し、デザイナーが良いと思うものを選択して、次のステップでは そこからパラメータを分散させるという半自動的な進化プロセス。これを「自己組織化探査」と呼んでいる。

  著書に載っているのはパラメータが8つしかないが、最新のAI (人工知能)技術を使って大量のカーデザイン データを処理すれば、優れた進化プロセスが作れそうな気がする。自動化するにはデザインの良否についてのデータも必要だが、さしあたって半自動的なプロセスで進めていけば次第に良否のデータも集まりそうに思える。

  日産自動車がカーデザインへのAI導入を実験している というニュースを見たこともあり、そのうち実際のカーデザインでもAI導入されるのでは ないだろうか。

<日産自動車がカーデザインへの「AI」(人工知能)導入に挑戦しているそうです。まだ実験段階としながらも、すでに「AI」にデザインを任せたことがあるとしており、実用化への可能性を示唆しています。 https://clicccar.com/2016/09/08/398002/>

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