カーデザインの巨匠ジュジアーロ氏の思いや仕事ぶりが分かる
■まとめ
『イタリアンデザイン世界を走る』はカーデザインの巨匠ジョルジェット・ジュジアーロ氏と共にカーデザイン会社のイタルスタイリングを創業した著者の自叙伝。話の中心はイタルスタイリング(後にイタルデザインと名称変更)で様々な自動車メーカーとの協業に尽力した話だ。ジュジアーロ氏の思いや仕事ぶりも分かる。
中でも様々な自動車メーカーにカーデザインを提案し、交渉する様子はカーデザインや企画に関心のある人だけでなく自動車メーカーに興味のある人にも おすすめ。
自分が特に面白かったのはジュジアーロ氏がイタリアの伝統的なカロッツェリア(自動車工房)とは違う、新しい体制のデザイン専門会社としてイタルスタイリングを創業したこと。カロッツェリアが目を向けていない将来の生産設備や新材料等を重視した。新しい技術で新しいデザインを実現したかったのだろう。
その結果なのだろうか、ジュジアーロ氏のカーデザインは御手本(ベンチマーク)になるような名作ばかりだ。
■どんな本か
・著者
著者の宮川秀之氏はイタリアでイタルスタイリング等の会社を創業・経営。多数の自動車メーカーとの協業に尽力した。現在はイタリアで有機ワインを栽培。
・概要
海外旅行中にイタリア デザインに魅せられた著者の自叙伝。その中心はイタルスタイリングでの仕事(海外営業)の思い出。
サブタイトルは『ジュジアーロと共に歩んだ50年』。
■特に面白かったのは
・量産に直結したデザイン
従来のカロッツェリアは試作車を開発する工房。(最近のカロッツェリアは量産も行っているが)
それに対して、イタルスタイリングは工場を持たない(ファブレス)デザイン会社。そしてカースタイリングや試作だけでなく治具設計等の生産技術も含めて量産車の設計までを提案した そうだ。
確かに、ファブレスでフットワークの良い体勢の方が新技術を取り入れた新しいカーデザインを素早く実現できそうだ。量産車の提案が できるのも大きな差別化ポイントだろう。従来カロッツェリアの組織に満足できず、新会社を創業しただけのことはある。
・ジュジアーロ氏のプレゼンテーション
ジュジアーロ氏のプレゼンテーションはスケッチを見せず、フロント、サイド、リアを正確に描いた三面図だ そうだ。そしてアイデア段階から三面図を用いる らしい。(実際は四面図だったかもしれない)
確かに、量産車まで直結するデザインの採否を判断するには正確なデザインが重要だろう。日本車のデザイン作業の記事を読んでいると、実車と全然違うプロポーションのアイデアスケッチでアイデア選定を しているように見えることがある。そしてユーザーが実車を見てガッカリというパターン。日本メーカーはアイデア段階で三面図を あまり使わないのだろうか。
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