カーデザインの過去を概観して、未来社会を変えていく提案も
■まとめ
『カーデザインは未来を描く』は社会における自動車の在り方を過去から未来にかけて語っている。カーデザインは社会状況から影響を受け、逆に社会を変えていける という内容だ。
「カーデザイン」とはスタイリングのこと と考えている人にとっては目からウロコが落ちたように視野が広がるかもしれないので、おすすめ。
自分が特に面白かったのは日産の「パイクカー」とファッション業界との関係の考察。少量生産の高級車と大量生産のコモディティ車との中間ポジションでの限定生産車等の大きな可能性を考えさせられた。
■どんな本か
・著者
著者の根津孝太氏は自動車やオートバイを中心に工業製品のデザイナー。
著者の言う「デザイン」とは「企む」ことだそうだ。スタイリングだけでなく、計画、設計を含んでいる。そして「モノで社会を変えていくところまでをデザインしなけらばならない」と考えているそうだ。
・概要
20世紀のカーデザインと社会背景を語り、21世紀のトレンドと共に未来社会におけるスモール モビリティ等の自動車の在り方を提案。
英語のタイトルは「Car Design Makes the Future」。
■特に面白かったのは
・EVO感
「EVO感」とはパワーアップのカッコ良さを表す造語。1度完成したカーデザインのバランスを崩して さらにパワーアップさせるのはデザイナーにとって とてもエキサイティングだ そうだ。著者がランボルギーニ ミウラよりランボルギーニ イオタに魅力を感じる理由がEVO感。
確かに、オーバーフェンダーでインチアップした車やエンジン換装した車 等には独特の魅力が あるように思える。そもそも1度完成させるカーデザインについても少しバランスを崩して特徴を強調した方が印象的だ。EVO感は そんな特徴の出し方のヒントになるかもしれない。
日産パイクカーの企画の中心人物の1人がファッション業界の坂井直樹氏。コンセプターとして「こういう雰囲気でやったら?」と日産のデザイナーに進言した そうだ。そして最後の皮1枚の味付けで車は大きく変わることを示した。
確かに、パイクカーのような限定生産車を作るにはファッション業界の考え方に習うところが多そうだ。最近の車でもファッション業界とのコラボレーションが数多く見られるが、その ほとんどがカラーリングや内装の素材の変更に とどまっている。パイクカーを見ると、もっと幅広い範囲のカスタマイズにも可能性が ありそうだ。
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