フェアレディZらしさ等の日産デザインの考え方が分かる
■まとめ
『ニホンのクルマのカタチの話』は日産車のデザインを具体例にして、カーデザインを するうえでの考え方を分かりやすく語っている。紹介されている日産車はフェアレディZやGT-R等の いずれも特徴的なデザインの各車。
カーデザインに関心のある人だけでなく、カーデザインが分からない という人にも おすすめ。
自分が特に面白かったのはフェアレディZやGT-R等について何を考えてデザインしたかの紹介。周囲の期待や意見に対して自分達の考えを実現していく姿勢は見習うべきものがある と思える。
また新型フェアレディZ (7代目)のプロトタイプが発表された現時点では、当時のモデルチェンジ(5代目、6代目)での考え方や将来への期待が分かって、新型と比較できるのも 面白い。
■どんな本か
・著者
著者の中村史郎氏は日産デザインの総責任者だったカーデザイナー。日産リバイバルでフェアレディZやGT-Rを含め数多くのデザインを統括。
著者の言う「デザイン」とは「思いをカタチ」にしていくこと だそうだ。その「思い」にはデザイナー個人の思い、ブランドや企業のメッセージを含んでいる。
・概要
日産車のデザインの内容やカーデザイン作業の基本等を紹介し、日本デザインを世界に発信していくことを提案。紹介されている主な日産車は以下の通り。
マーチ
キューブ
セレナ
ジューク
■特に面白かったのは
・フェアレディZのZらしさ
フェアレディZは初代が1番「Zらしい」と考えられている らしい。初代を再現するかウンザリするほど質問された。しかし著者はレトロデザインに否定的。Zらしさを過去のカタチではなく、過去の新しいものを創りだす精神(スピリット)に求めた そうだ。
確かに、歴史あるモデルほど何を引き継ぎ、何を新しくするか難しい問題。そんな時に初心を大切にするのは重要だ。カーデザインの場合は初心の中に そのカタチにした考え方のキモ(エッセンス)を含んでいるはず。そのエッセンス(だけ)を引き継げるか が課題だ。
日本車は新しくすることを重視してモデルチェンジでガラッと変えることが多い。もっと伝統を大切にした方がブランディングに なりそうだが。特にZファンの多い北米は車に保守的らしいし。
初代の再現を求めるファンの声はレトロデザインを求めているのではなく、大エンジンFRスポーツカーらしいロングノーズ&ショートデッキのプロポーションや彫りの深いヘッドランプ等の初代のエッセンスを求めているのでは。例えば、ポルシェ911がシルエットやランプ形状を変えずに進化しているように。
通称「ハコスカ」のスカイラインGT-R(2代目)に代表されるボクシーなデザインをポジティブに とらえるのは日本人くらい らしい。しかし「日本のクルマ文化を代表するもの」としてニッサンGT-Rは「ガンダムっぽい」デザインを進めた そうだ。
確かに、 ますます競争が激化している世界で埋没しないためにはオリジナリティが必要だ。そのオリジナリティとして日本らしさを海外に発信して、日本文化のファンを増やしていくのは日本産業の未来にとっても重要だろう。(自動車産業だけでなく)
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