スケッチ手法のテキストだが、デザインの心構えやプロセスの要点も分かる
■まとめ
『自動車とプロダクトデザインの基本と応用』は主にスケッチ手法を習得するためのテキスト。豊富なイラストに方法や注意点が詳しく載っているので、それを御手本に模写すれば、効率的にスケッチ手法の習得が出来そうだ。(自分は模写せず、ながめているだけだが)
一方、著者は絵の描写能力以上に問題解決能力を重視していて、ページ数は少ないながら、デザインの心構えやプロセスについて要点が まとめられている。デザイナーを目指す人にとって指針となりそうだ。
■どんな本か
・著者
著者の平野幸夫氏は いすゞ自動車の元デザイナー。東海大学や長岡造形大学で教育の経験もある。名作デザインのいすゞ ピアッツァ のリアスポイラーやホイールカバー等もデザインしたそうだ。
著者の言う「デザイン」の本質は人と社会の問題を解決すること。絵(スケッチ)はデザイン作業の1プロセスにすぎない そうだ。
(例えば、『カーデザインは未来を描く』の著者 根津孝太氏の考えにも似ている)
・概要
スケッチの基礎の原理原則からプレゼンテーション用スケッチの描き方まで段階を踏んで詳細に解説。
サブタイトルは『プロダクトデザイナーになるためにスケッチから始める実践的方法』。
■特に面白かったのは
・デザインと美術の違い
デザインは「顧客の問題解決」、美術は「自己の表現」だそうだ。
その意味でのデザインよりも美術を狙ったカーデザインは実車でも散見される。ユーザー目線でレビューする このブログとしては全てのデザイナーに顧客の問題解決を心構えとして欲しい。
・感動を言葉に置き換える
美しい、かっこいい、魅力的と感じるのは なぜか要因分析して言語化し、その理解から新しいデザインを再構築する のだそうだ。その要因には感性と理性の両方が あるらしい。欲を言えば、その実例を詳しく見てみたかった。
特にモデルチェンジや旧車をモチーフする時には以前のデザインの根本的な要因分析が重要だろう。表面的なカタチだけ捉えるとデザインを変えることが出来ない。逆に好評だった先代や旧車のデザインの特徴(キー)を踏襲していれば、プロポーション等をガラッと変えてもユーザーに受け入れられる。
もちろん言語化は簡単ではない。このブログのレビューでも何が良くて、何が良くないか文章化するのに いつも苦労している。
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