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超 カーデザイン レビュー

「日本車はカッコ悪い」なんて言わせたくない

日産 エクストレイル 2022 (B 75点)

カーデザイン

トヨタSUV等に似たシルエット。あまり「タフギア」らしくない!?

■まとめ (B 合計75点/100点満点)

  日産エクストレイルは相変わらずオフロード4WDとして人気だが、先代でSUVらしさが減ったことをエクストレイル(4代目)では見直して、初代のコンセプト「タフギア」への原点回帰を目指した。

  ところがデザイン結果は あまりタフギアらしくない。

  プロポーションは四角くないノーズは タフなオフロード4WDらしくなく、前方見切りも微妙。後ろ下がりのルーフや傾斜の強いリアウィンドウは 3列シートのスペースを狭めていて ギア(道具)としての実用性が低そうに見える。

  フォルムはコンセプトカー「Xmotion」に似たフェンダーフレアの角ばった張り出し等の工夫もあるが、Xmotionに比べてかなり薄味。

カーデザイン

上 エクストレイル、下 Xmotion

  シルエットはエクストレイルのアイコンである「く」の字形のDピラーが細く、タフギアぽくないプロポーションと合わさって 競合車のトヨタ RAV4等に シルエットが似てしまった。

カーデザイン

上 エクストレイル、下 RAV4

  また世界中のユーザーの多様なニーズに応えるためタフと上質の両立がテーマ。上質さはフォルムの作り込みとメッキパーツ等で表現しているが、タフとの両立はイマイチ。

  フロントの あちこちに凹凸を作ったが、Xmotionの明確な表現を薄めているようで残念。

  チンスポイラーや サイドシルという下回りにもメッキパーツを適用したのでオフロード4WDらしくない。

  ランプやグリルは日本の伝統的模様を適用しているが、繊細でタフらしくないし、ディテールだけでは全体への効果が薄い。

カーデザイン

  最近はミドルクラスSUVの競合が増えているので 差別化のためにエクストレイルの特長であるタフギアらしさを もっと追求した方が良いのではないか。

  タフギアらしいプロポーションやフォルムならば 北米や中国で重視される車格を立派に見せる効果も期待できる。

カーデザイン

上 オリジナル、下 リファイン案

■主な比較対象車

・日産 エクストレイル (初代、2代目、先代)

日産 アリア (同門車)

・三菱 アウトランダー (競合車)

トヨタ RAV4 (競合車)

 

■キャラクター

・ポジション

  2022年日本でモデルチェンジしたミドルクラスSUV 日産エクストレイル(4代目)は世界で販売し、日産車の中で最も売れている量販車。海外から遅れて日本デビュー。(米国では「ローグ」という車名で約2年前にデビュー)

  「グローバル ワンフェイス」として基本的に全世界で同じデザインだが、日本向けは少しアレンジ。

  ちなみに三菱 アウトランダーとはプラットフォームが共通。

・用途

  エクストレイル(初代)の用途はレジャーへ行く若者4人とその荷物を載せられるオフロード4WD。まさにSUVの定義そのもの。

  エクストレイル(3代目)ではアクティブなレジャー用途が減ってきているが、オフロード4WDとしての需要は相変わらず高いそうだ。

・ユーザー

  北米ではタフでラギッド(ゴツゴツ)、中国では高級感、日本では加飾によらない「引き算」のデザインが好まれる。

・デザイン要求

  つまりオフロード4WDらしくタフでラギッドで、なおかつ引き算で高級感を表現するデザインが必要だ。

■コンセプト (30点/30点満点)

カーデザイン

・テーマ

  キーワードは「タフ×上質」。これってマツダ CX-60の「ノーブル タフネス」と同じテーマじゃないか。さらに差別化が必要。

  それでエクストレイルの新型は先代の高級感を継承しつつ、初代のテーマ「タフギア」への原点回帰。SUVらしい分かりやすいカタチを目指したそうだ。

・アイデア

  タフはボクシーな(箱っぽい)プロポーション、張り出した下半身等で表現。

  上質はキャラクターラインを減らした無駄のないフォルムの作りこみで表現。メッキ加飾もあるが、「引き算」のデザインを好む日本向けにはメッキを減らしているそうだ。

・モチーフ、スタイル

  フロントフェイスは日産のデザイン スタイル「Vモーショングリル」を適用。その模様は日本の伝統工芸の「組み木」がモチーフ。日本的な美意識を適用するのは日産のデザイン スタイル「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」の一環。半永久的に飽きがこず、日本的な美意識をもちながら先進性を加味していく だそうだ。

・パッケージング

  サイズは先代に比べて全幅が少し大きくなっているが、全長、全高が少し小さくなっているのは3列シートのスペースを考えると十分とは言えない。

  競合車等がサイズを拡大している傾向からするとサイズを小さくしない方が良かったのでは。

■全体デザイン (15点/20点満点)

カーデザイン

プロポーション

  ボクシーなプロポーションというアイデアの割に四角くない。ノーズは前下がりでコーナー絞り。ルーフは後ろ下がりでリアウィンドウの傾斜も強く、3列シートのスペースを狭めている。

  角ばっていないプロポーションはアイコンのはずの「く」の字形のDピラーが細いことと合わさってシルエットを競合車トヨタ RAV4や三菱アウトランダー等に似せてしまった。

  やはり「タフギア」のエクストレイルは もっと角ばっていた方が良かったのでは。(-5点)

・フォルム

  2018年デトロイトショーで発表されたコンセプトカー「Xmotion」(クロスモーション)に似たフォルム。Vモーショングリルから続くボンネット稜線や角ばって張り出したフェンダーフレアでタフさを表現。

  しかしXmotionに比べるとメリハリが 曖昧。実車がコンセプトカーより薄味で 物足らないのは仕方ないか。

■フロント (10点/20点満点)

カーデザイン

・ランプ

  フロント ランプは上下に2分割。下側のメインランプはエアインテークに吸い込れているように見えるし、元々1体だったランプを わざわざボディで遮っているようにも見えるカタチで不自然。(-5点)

  例えば Xmotionのランプは上下が つながっているので もうちょっと自然なカタチだ。

・グリル

  アッパーグリルの太い枠は海外と日本で異なっていて、日本は「引き算」のデザインでブラックアウトし、外側の細い枠だけメッキ。日本の美意識に合っている。

  その内側は「組み木」をモチーフにした模様。日産アリアの「組子」に比べると明確に凹凸が分かる。日本的な表現ではあるが、繊細すぎて「タフギア」としては微妙。

・バンパー

  アッパーグリルとロアグリルの間に はさまれたバンパー部分が細くてタフに見えない。

  またチンスポイラーはメッキで とって付けたように見えるし、アプローチアングルを狭めている。どちらもオフロードでは すぐ壊しそうでオフロード4WDらしくない。(-5点)

・ボンネット

  ボンネットや周囲のフェンダーに凹凸が多く、Xmotionのフェンダーとの稜線を強調した表現に比べて曖昧。例えば もう少し凹凸を整理した方が明確な表現になる。

  またコーナー絞りが強いためオフロード4WDで重要な前方見切りは先代より良いかもしれないが、初代や2代目に比べて悪化していそう。

■サイド (10点/20点満点)

カーデザイン

・ルーフ

  ルーフレールはレールの高さが低くて実用性は低そうだが、ルーフレールの無いグレードもあるので問題ないか。

フェンダー、ドア

  角ばったフェンダーフレアはXmotionにくらべて薄味だが それなりに効果的。

  サイドシルのメッキ加飾はオフロードで すぐ汚れる位置なのでオフロード4WDらしくない。(-5点)

・ウィンドウ周り

  「く」の字型のDピラーはエクストレイルのアイコン。ただし新型はDピラーが細いのでDピラーの太さも特徴のエクストレイルらしくない。おかげでRAV4等に似てしまった。(-5点)

・タイヤ、ホイール

  タイヤの張り出しを小さくするようレイアウトに こだわったそうだ。一方 タイヤとフェンダーアーチの隙間が大きいのはオフロード4WDとして仕方ない。

■リア (10点/10点満点)

カーデザイン

・ランプ

  リアランプは日本の伝統工芸「切子」の模様をグラデーションした凝ったグラフィック。それでも外形状が ありきたりの横長形状なのでエクストレイルらしさは あまり感じない。

  例えば 初代や2代目のDピラーに組み込まれた縦型ランプはアイコン的だったが、そのような特徴的な表現を出来ないものだろうか。

・バンパー

  台形で踏ん張り感(スタンス)を示すのは一般的な表現。

  ランプの下が深い凹面なのは独特。そしてバンパー部分が出っ尻になっている。アンダーガードぽいパーツが付いているので それほど不自然に見えないが、デパーチャアングルを狭めているようで微妙。

・ウィンドウ周り

  リアスポイラーはオフロード4WDらしさとしては微妙に思えるが、空力的には かなり効果的らしい。

  窓の面積は それほど広くないが、後方視界は平均的。

■おまけ (デザインクリニック提案)

カーデザイン

リファイン案

  例としてレビューで気になる点について見直し案を提案する。テーマは「質実剛健」。

  モチーフは日産アリアのスタイリッシュなフロントフェイスと「タフギア」らしい道具として選んだ「スパナ」。

  主なポイントは以下の通り。

・ルーフラインをフラットにして後方まで伸ばし、3列シート用に室内を拡大

・ボンネットを角ばらせ、ラギッド感と車格感をアップし、前方見切りも改善

フェンダーフレアの角ばったカタチを強調してタフそうに

・アイコンである「く」の字形のDピラーを太くしてエクストレイルらしく

・サイドウィンドウ上辺のメッキモールを下辺へ移し、解放感と安定感

・サイドシルの汚れやすいメッキ加飾をなくしてオフロード4WDらしく

・アッパーグリルを幅広にして位置を上げ 車格感をアップ

・フロントバンパーを太くしてタフそうに

・チンスポイラーをなくしてオフロード4WDらしくアンダーガード

・フロントランプを不自然なカタチから自然なカタチへ

リアランプを ありきたりなカタチから引き算のカタチへ

カーデザイン

上 オリジナル、下 リファイン案

■注記

※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価

※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと

※画像の出典

https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/x-trail/gallery.html

https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/x-trail/exterior.html

https://www.nissan-global.com/JP/INNOVATION/DESIGN/DESIGNWORKS/XMOTION/

https://corolla-akita.jp/rav4

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