顔はRAV4みたいで、体はジェリービーンズ。まるで「面従腹背」のようだ
■まとめ (B 合計75点/100点満点)
ダイハツ ロッキー (2代目)はSUVのコンセプトカー「DN TREC」が発端。DN TRECのモチーフは「ジェリービーンズ」。フォルムはシンプルで丸っこい。
それが好評で、市販を企画する時にトヨタの意向やユーザーの調査結果が入ってきた。トヨタはトヨタの車種ラインナップに合うデザイン、ユーザーは力強いデザインを求めた。そんな要望に応えながら、元々のアイデアにも こだわり続けた。
その結果、顔はトヨタ RAV4 (5代目)みたいに角張り、身体はジェリービーンズのまま という妥協の産物。まるで顔だけ要望に合わせた「面従腹背」。デザインに統一感がない。
アイデアを まとめるのに悩んだら頭を柔軟にして、例えばRAV4のデザイン作業のように最初のアイデアをリセットするくらいの抜本的な見直しをしても良かったのではないか。
同時開発のトヨタ ライズとロッキーは顔が違うだけ。見比べてみるとライズの方が少しユニークに見える。
ライズはトヨタのデザインスタイルであるアンダープライオリティを適用して、大きくハの字に開いたロアグリルが印象的。ボディの高さも軽減されて見える。
ロッキーは ありがちの六角形グリル。周囲の面とも合っていて悪くない形状だが、六角形をモチーフにしているスバル等との被りが気になる。
ダイハツは自身ののブランディングのため、オリジナリティあるデザインスタイルを何か考えた方が良いのではないだろうか。
・ダイハツ ビーゴ (先代?)
・スズキ イグニス (競合車)
・フォード エクスプローラー (参考車)
・レンジローバー イヴォーク (参考車)
■キャラクター
・ポジション
2019年新発売のSUV、ダイハツ ロッキー は先代のクロスカントリー車からクロスオーバーに変更。むしろビルトインラダーフレームのダイハツ ビーゴの後継という方が近い。新型ロッキーはモノコックなのでビーゴより さらにオンロード寄り。
・用途
「アクティブ」、「ユースフル」、「コンパクト」がキーワード。本格的に山の中を走るようなSUVではなく、小さいけれども いっぱいものが積めて、気軽に生活の楽しさが広がるようなシティコンパクトSUVが狙いだそうだ。
トヨタ RAV4 (5代目)と比べてみると、ロッキーは あまり走破性を求めていないようだ。走破性の代わりに どうやってアクティブやSUVらしさを表現するかが問題だ。人間がアクティブなのと車がアクティブなのは意味が違う。
・ユーザー
30代前後の若い人がターゲットユーザー。この年代はシンプルな素材の良さを知っているのだそうだ。
またトヨタはダウンサイジング、ダイハツは軽自動車からのアップサイジングを狙っている。コンパクトながら立派に見えることも必要だ。
・デザイン要求
つまり荷物が積めてオンロード寄りながら、アクティブで立派に見えるデザインをシンプルに表現することが求められる。なかなかバランスが難しい要求だ。
■コンセプト (20点/30点満点)
・テーマ
「クリア」、「洗練」、「アクティブ」、「力強さ」、「独創性」がキーワード。ユーザー調査結果等から追加されてキーワードが多い。
これらを見るとレンジローバー イヴォーク等を連想させられるが、ロッキーは全然違う。レンジローバーは これらを渾然一体にした統一感あるデザイン。ロッキーは個々のキーワードを個別のデザイン要素で表現したバラバラ感のあるデザイン。(独創性は良く分からないが)
色々な人に言われたことを色々盛り込んだが、1つの思想に まとめられなかったことがデザイン結果に表れている。思想を1つに まとめられないならば、多すぎるテーマの優先度を付けるべきではないか。(-5点)
・アイデア、モチーフ
2017年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「DN TREC」がベース。アウトドア用品等がシンプル化しているトレンドをとらえて、シンプルなデザインに対する若者のニーズ調査が目的だったらしい。そのモチーフは「ジェリービーンズ」や「ソーセージ」。フォルムはシンプルで丸っこい。
DN TRECが好評で、市販化を企画した時に同時開発するトヨタの意向やユーザーの調査結果等が入ってきた。アクティブや力強さはユーザー調査の結果だそうだ。
新しい要望に応えるためウェッジシェイプ等の新しいアイデアも考えたが、最初のアイデアに こだわり続けた。
ジェリービーンズはウェッジシェイプ等が似合わないし、アップサイジングのための立派さも表現しにくい。軽ハッチバックには合いそうだが。
その結果、サイドはジェリービーンズの丸っこい面、フロントとリアは力強い角張った面という不統一な妥協の産物に なってしまった。
アイデアを まとめるのに悩んだら頭を柔軟にして、例えばトヨタ RAV4のように最初のアイデアをリセットするくらいの抜本的な見直しをしても良かったのではないか。(-5点)
・スタイル
ダイハツには強いデザインフィロソフィがなく、身近なクルマとしての造形がダイハツらしさ だそうだ。身近なクルマでは あいまい、形は何でもあり で問題だ。
ロッキーはスバル、アウディ等の他社がデザインスタイルとしている六角形グリルに被ってしまった。ダイハツはロッキーの設計時に新型RAV4を知らなかったそうなので、RAV4に合わせた訳ではないらしい。
そう言えば、DN TRECのフロントフェイスもスズキ イグニスに似ている。
他社の顔に似てしまうのはダイハツに独自の明確なデザインスタイルが ないためだろう。ダイハツは自身のブランディングのためにオリジナリティあるデザインスタイルを何か考えた方が良いのでは。
・パッケージング
数字から来る印象は大きいと考えて、全長と全幅の数字にこだわったそうだ。5ナンバー、4m未満というのは確かに分かりやすい。全高は軽ハイトワゴンで一般的な高さ。決まった数字の枠の中でスペースを最大化するのは軽自動車ゆずりの得意技か。
■全体デザイン (15点/20点満点)
・プロポーション
ルーフ(わずかに後下がり)は やや長めでスペースを確保。ボンネットやベルトラインは高めの水平基調(わずかに後ろ上がり)で、ボディを立派に見せている。コンセプト通りか。
シティSUVにしてはデパーチャアングルは悪くない。アプローチアングルは大したことないが、あまり走破性を求めていないので仕方ないか。
・フォルム
フロントとリアは力強さの表現でキャラクターラインや段差のあるゴツゴツした面。サイドはジェリービーンズの表現でキャラクターラインがなく、円筒のように中央が膨らんだ なだらかな面。ルーフは角丸な面。車全体に統一感がない。(-5点)
■フロント (20点/20点満点)
・ランプ
六角形グリルの辺の横から始まる自然でシャープな形状。サイドに大きく回り込ませてワイド感。ボンネットとの段差でワイド感と力強さを強調。元々のDN TRECのフラッシュサーフェイスとは全く違うが、ロッキーのフロントのゴツゴツ面には合っている。
・グリル
アッパーグリルを起点にしてランプ、フェンダー、バンパーの面が流れていく表現で、形状の整合性がある。ただ ありがちな六角形で、他車と被っているように思えて微妙。
・バンパー
アッパーグリルからの流れに沿ってメリハリのある平面の組み合わせ。
エアインテークのようなガーニッシュが出っ張って目立っている。例えダミーでも もっと引っ込ませて、エアインテークらしく見せて欲しいが、内部寸法上で仕方ないのか。
■サイド (15点/20点満点)
・フェンダー、ドア
ブリスターフェンダーやドアの下側を大きく ふくらませて力強さを表現。どうせ ここまでやるなら、例えばショルダーラインをランプに続く折れ線にすれば、車全体で整合性もってワイド感を強調できただろうに残念。(-5点)
・ウィンドウ周り
A、B、Dピラーをブラックアウトしてワイド感。Cピラーをボディ同色にしてルールを支えて安定感。フォード エクスプローラー (6代目)等も同様の表現だが、ロッキーはサイズが小さいので より意味がある。リアクォーターウィンドウが小さいのはサイズ的に仕方ないか。
DN TRECの窓の形状はカク面取りされていて明快だった。ロッキーは面取りの形状が 微妙かつバラバラで微妙。
■リア (5点/10点満点)
・ランプ
フロントランプと似た表現のサイドへの回り込みや段差。ワイド感や力強さに効果的。
・バンパー
フロント側を反復した様な形状で整合性はある。フロントと同様にエアアウトレットのような表現は平面過ぎて取って付けたよう。少しは奥行きが欲しい。(-5点)
・ウィンドウ周り
窓は比較的大きめで、後方視界は悪くない。
■注記
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※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
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