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超 カーデザイン レビュー

「日本車はカッコ悪い」なんて言わせたくない

トヨタ ヤリスクロス 2020 (C 70点)

カーデザイン

ミニマリストはシンプルと違うらしい。シンプルに出来なくて宇宙人顔に

■まとめ (C 合計70点/100点満点)

  トヨタ ヤリスクロスはトヨタ ヤリスの姉妹車で中身は ほぼ一緒なのに、外観は全然違う。ヤリスは「黒豆」をモチーフに丸っこいフォルム、ヤリスクロスは菱形をモチーフにフェンダーを張り出したメリハリの効いたフォルム。

  ヤリスクロスのテーマは「ロバスト(Robust)&ミニマリスト(Minimalist)」。力強いプロポーションと無駄のない美しさ という意味らしい。

  ロバストの力強さは大きく張り出したフェンダーフレアや高いボンネットの分厚いボディ等で良く表現されている。

  一方、ミニマリストの無駄の なさは分かりにくい。シンプルとは違うらしい。シンプルならば表現を簡素にすれば良い。トヨタの言うミニマリストは無駄と思わないものを残すらしい。何が無駄で、何が無駄でないのだろうか。

  例えば、無駄なライン等を なくすはずなのに、フロント側には多くのラインやエッジが残っている。特にフロントフェイスはシンプルな面の端々に細かいエッジが付いている。シンプルにならないようにエッジで個性を出そうとしたのだろう。しかし無駄かどうかの見極めが難しくて、微妙な「シワ」になってしまった のでは ないだろうか。この引きつったようなシワと多角形のフロントランプの せいで、まるでウルトラマンシリーズに出てくる宇宙人みたいな顔だ。特に 菱形ツリ目で凸凹した顔のザラブ星人や小さなツリ目の能面に口元のシワが目立つスペル星人が似ている。マニアック過ぎて一般受けしないな。

  トヨタの言うミニマリストなら 何が無駄か価値観やデザインポリシーの共有が必要だったのでは。機能主義なら もっと分かりやすかったのだが。

■主な比較対象車

トヨタ ヤリス (姉妹車)

トヨタ ライズ (同門車)

トヨタ RAV4 (同門車)

トヨタ ハリアー (同門車)

■キャラクター

・ポジション

  2020年に発売されたコンパクトSUVトヨタ ヤリスクロスは同じく2020年に発売されたトヨタ ヤリスの姉妹車。と言っても、ヤリスとの外観上の共通性は ほとんどなく、外観での共通部品はアンテナとドアハンドルくらいらしい。

  近いサイズのコンパクトSUVトヨタ ライズとはデザイン スタイルで差別化。ライズはゴツゴツした(ラギッドな)スタイル、ヤリスクロスはスマートなスタイル。トヨタ RAV4トヨタ ハリアーの関係に似ている。

・用途

  「日常の中の非日常」に着目。「気楽(easy)」「機動性(fast)」「利便性(smart)」をキーワードに、日常で やりたいことが気軽に、素早く、スマートに出来ることが狙い。例えば、オフロードのスポーツというより、通勤で急に雪が降っても運転が楽しい ということらしい。

  その日常とは週末に趣味で使い、平日は買い物で大きい荷物を積んで帰ってくるようなイメージだそうだ。アウトドアを強調しない都市型SUVだ。(それなりのオフロード走行性能も備えているが)

・ユーザー

ターゲットは30代のカップルや子育てが終わった世代の夫婦。

対象ユーザーの調査によると、SUVについてのイメージは力強いが洗練されたデザイン、街乗りでカフェに行ってもオシャレだそうだ。

・デザイン要求

  ヤリスとの共通性は あまり考えず、フットワークが軽そうで、カフェに似合うような都市型のデザインが求められる。

■コンセプト (20点/30点満点)

カーデザイン

・テーマ

  「ロバスト(Robust)&ミニマリスト(Minimalist)」がキーワード。ロバストは「強靱」、ミニマリストは「最小限主義(ミニマリズム)の」という意味か。ちなみにミニマル(Minimal)とミニマム(minimum)は意味が違うらしい。ミニマルは絶対的な最小限。ミニマムは許される範囲内での最小限。デザインには枠組みのあるミニマムの方が合ってそう。

  キーワードを具体化すると、ロバストとは凝縮された力強いプロポーションミニマリストは無駄のない、そぎ落とした美しさ ということらしい。

  しかしミニマリストは分かりにくい。「シンプル」とは違うらしい。シンプルと解釈するとデザインが止まる。ミニマリストの言う無駄が何か、残すべきものが何か、価値観を関係者で十分共有しないとデザインがチグハグになる。価値観やデザインポリシーをの共有が もっと必要だったのではないか。例えば、機能主義のように価値観が明確なら何を残すべきか分かりやすいが。(-5点)

・アイデア、モチーフ

  菱形の基本ボディにフェンダーを張り出した構成がアイデア。ダイヤモンドをカットするような面の作り方。名付けて「ニンブル ダイヤモンド」。ヤリスクロスはエッジが目立ち過ぎないよう多少 丸められているが、トヨタ RAV4の面取りした四角を組合せた「クロス オクタゴン」の構成の仕方に通じる気がする。

・スタイル

  トヨタのデザインスタイルである「キーンルック」を適用して、ノーズのトヨタマークを真っ直ぐ突き出すように目立たせているが、フォルムを乱していて、無理やり過ぎ。そんなにトヨタと言いたいのかと思わされる。例えば、ライズのトヨタマークは埋め込まれるように置かれていて、フォルムを乱していない。(-5点)

・パッケージング

  ヤリスクロスは全長、全幅、全高、最低地上高がヤリスに比べて一回り大きくなっている。ホイールベースは同じで、前後席の位置関係も同じ。オーバーハングは主にリアが延ばされ、ラゲッジスペースを拡大している。

■全体デザイン (15点/20点満点)

カーデザイン

プロポーション

   ルーフは短めで、リアウィンドウの傾斜も強く、カーゴスペースよりもスタイリッシュさ優先。サイドウィンドウの傾斜(タンブル)も強く、日常使いのイメージだった大きな荷物の買い物には あまり向かないか。スペースを求めるならルーフの長いライズと言いたいところだが、全長はライズの方が短いので住み分けが微妙。

  ボンネットとベルトラインは高く、SUVらしい力強さを表現。水平に近いボンネットは前方視界の見切りにも有利。

  フロントエンドとリアエンドは垂直に近く、最近のトヨタ車に多い「出っ尻」には なっていない。コーナーは絞られているので、取り回しは有利そうだ。

・フォルム

  ニンブル ダイヤモンドのアイデアでメリハリの効いた菱形フォルム。特にフェンダーの凹凸が効いていて、大きく張り出したフェンダーフレアで力強さ、シャープな稜線でスマートさを表現。

  ミニマリストのテーマでラインを最小限にしたはずだが、フロント側のフェンダーやボンネットだけシャープなラインやエッジが多くて、全体の統一感を乱しているし、最小限とは言えないのでは。やはりミニマリストは分かりにくい。ケースバイケースで考えるのではなく、統一的なデザイン ポリシーが必要では。(-5点)

  ルールライン、ベルトライン、サイドシルのプロテクター(クラッディング)が そろってウェッジシェイプで、前傾姿勢によって機動性を表現。

■フロント (15点/20点満点)

カーデザイン

・ランプ

  ヤリスとの共通性は ほとんどない。目尻の つり上がった多角形の外形状。内部のポジションランプの形状も含めて、フェンダー等の形状に合っている。内部が黒いのは目付きが悪く見えるが、グリルの黒さに合っている とも言える。

  デイライトとウィンカーは分離して下に垂直に配置。全体が菱形フォルムなのに ここだけ垂直なので微妙。

・グリル

  上下のグリルとも台形の安定感ある形状。しかしアッパーグリルにトヨタマークが食い込んでいて微妙。

・バンパー

  フロントフェイスは なかなか決定打が出ず、トライを繰り返したらしい。その結果、個性を強調しようとしてフロントフェイスに「シワ」が出来てしまったのでは。ランプやグリルの周りにエッジが付けられていて、顔が引きつったように見える。そしてシワが寄ることで、ボディがペラペラに薄く見えて、SUVの力強さを損なっている。そのうえノーズ先端の1番の見せ所のライン上にトヨタマークが出しゃばっている。(-5点)

  リアグリルの下はブラックアウト。ボディを薄く見せるし、気軽に扱えるようなカジュアルさ。

■サイド (10点/20点満点)

カーデザイン

・ルーフ

  レリーフを前後に通して強度を確保し、強度感にも寄与。

フェンダー、ドア

  フェンダーフレアは真空引きしたイメージだそうで、フェンダーアーチ周りのプロテクターだけ引っ張り出したようなユニークな表現。

  フェンダーアーチのプロテクターとサイドシルのプロテクターの間に なぜか すき間。ここは特に泥が着きそうな所なのに機能的でない。(-5点)

  リアドアにはサイドウィンドウへ向けて巻き上がるようなキャラクターライン。フェンダーフレアの上の凹面が強過ぎて、ドア面のピークの行き場をなくした感じ。面の整理がイマイチ。(-5点)

・ウィンドウ周り

  ベルトラインは ゆるい後ろ上がりで、リア側で少しキックアップ。菱形フォルムに合っている。A、Bピラーはブラックアウトしてワイド感。Cピラーが太めなので強度感も問題なし。

■リア (10点/10点満点)

カーデザイン

・ランプ

  リアランプの間をガーニッシュで つなぎ、さらにリアウィンドウも つなげたデザイン。この構成はヤリスと同様。

  ランプの外形状は多角形で菱形フォルムやフロントランプとの親和性。

・バンパー

  ディフューザーぽくブラックアウトして、フロントバンパーと同様の効果。

■注記

※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価

※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと

※画像の出典

https://toyota.jp/yariscross/gallery/?padid=from_yariscross_top_navi-menu_gallery

https://toyota.jp/yariscross/

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