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超 カーデザイン レビュー

「日本車はカッコ悪い」なんて言わせたくない

ダイハツ ミラ トコット 2018 (D 45点)

カーデザイン

船頭多くして船 山に上る。デザイン作業の迷走がカタチに表れた。

■まとめ (D 合計45点/100点満点)

  ダイハツ ミラ トコットは女性プロジェクトチームを作って企画検討した意欲作。女性ユーザー調査も良くやったらしい。その結果、企画当初に意図していた可愛いデザインのダイハツ ミラ ココアの後継ではなく、もっと「シンプル」な車を目指すことになってしまった。当初想定とのギャップに加えて、シンプルの具体化について様々な意見が出て、デザイン作業が迷走した。船頭多くして船 山に上る。

  その迷走がデザイン結果に表れた。様々な意見でフォルムに特徴を出せなかった代わりに、ディテールにデザイン要素を盛り込んだ。ショルダーラインを2重にしたり、ドアに唐突なリブの凹みを付けたり等。結局シンプルと言えない、煩雑なデザインになってしまった。

  作業が迷走した時は他車を参考にしたり、スタート地点に立ち返ったりしたらどうだろうか。例えばダイハツ車で参考にするなら、シンプルでも味のあるフォルムのダイハツ エッセが考えられる。またスタートに立ち返るなら、ベーシックなポジションが被るダイハツ ミラに1本化することも考えられる。

  しかし可愛いデザインのキャンバスやスズキ アルト ラパン(3代目)が それなりに好評なのを見ると、調査方法次第では可愛いデザインを企画できたようにも思えて、もったいない。

■主な比較対象車

ダイハツ ミラ ココア (先代?)

ダイハツ ミラ (姉妹車)

ダイハツ ムーヴ キャンバス (同門車)

ダイハツ エッセ (同門車)

・スズキ アルト ラパン (競合車)

ルノー キャトル (参考車)

フィアット パンダ (参考車)

■キャラクター

・ポジション

  2018-2019年 日本カー・オブ・ザ・イヤー スモールモビリティ部門賞を受賞したベーシックな軽ハッチバックダイハツ ミラ トコットは 可愛いデザイン(ダイハツがいうところの「テイスト系」)のダイハツ ミラ ココアの後継ではない。テイスト系のつもりで調査をしていたら、可愛いデザインが否定されたらしい。ベース車のダイハツ ミラもベーシックな軽ハッチバックなので、差別化が難しい。

・ユーザー

  ターゲットは女性エントリー ユーザーだそうだ。運転しやすいデザインが求められる。

・デザイン要求

  可愛いデザイン以外で女性ユーザーに どうやってアピールするかがポイント。価格はダイハツ ミラ イースより高いので、ベーシック(低コスト)で差別化は できず、何か高付加価値を付けなければいけない。女性向けならスポーティ等もウリにならない。エントリー ユーザー向けに運転しやすいといっても、あまり運転したことないユーザーに違いが区別できるか微妙。

   つまり可愛いデザインを封じられた時点で、かなり難しい要求。普通ならスタート地点から見直した方が良いくらいだ。

■コンセプト (10点/30点満点)

カーデザイン

・テーマ

  「誰でもやさしく乗れるエフォートレスなクルマ」、「ほっとスクエアハッチ」がキーワード。つまり運転時に車両感覚を つかみやすい四角い車だが、商用車っぽくない という意味らしい。商用車との差別化を どうするかが問題。差別化の具体化が必要だ。例えば、フォルムで差別化するのが一般的だが。(-5点)

・アイデア

  ターゲットユーザーに近い女性のプロジェクトチームを組んで考えた結果、「シンプル」というキーワードが出てきたらしい。そして可愛いデザインが否定されて、デザインに丸みがあるとダメ出しされる。ココアも面はシンプルだったのだが、フォルムやウインドウグラフィックの角丸を装飾と解釈したのか。角丸すら使えないと味付けが難しい。ただシンプルでもダメ。自縄自縛だ。それでデザイン作業が迷走。船頭多くして舟 山を登る。

  その迷走がデザイン結果まで表れた。様々な意見が制約になってフォルムに特徴を出せなかった代わりに、ディテールに色々とデザイン要素を盛り込んで、統一感のない煩雑なデザインになってしまった。コンセプトがバラバラの結果だ。(-10点)

・モチーフ

    「ブリキのバケツ」や「ホーローのブレッドケース」がモチーフらしい。トラディショナルで素朴な道具といったところだろうか。車で言えばルノー キャトルが連想される。

  ダイハツが参考としたのは2009年東京モーターショーで発表したコンセプトカーの「basket (バスケット)」。発表から ずいぶん時間が経っていたが、役立った。バスケットを見てみると、何となくルノー キャトルに似ている。

  これらを参考にしたはずのトコットのフォルムには これらのモチーフが持つ素朴さが見られない。ランプやリブ等の要素は参考にしたようだが、フォルムが問題だ。丸を使えないデザインの縛りがキツすぎたのか。(-5点)

カーデザイン

basket (バスケット)

・スタイル

  ダイハツには決まったデザインスタイルが なさそうだ。基本スタイルが あれば、迷った時にも大外れせずに収束できるものだが。自由であるほど迷走も深まる。ダイハツも基本のデザインスタイルを考えてみてはどうだろうか。例えば、ダイハツ ムーヴ キャンバス等は御手本になるのでは。

■全体デザイン (15点/20点満点)

カーデザイン

プロポーション

  テーマの車両感覚に配慮したプロポーション。ベース車のミラよりも少し全高が高く、周囲の見晴らしが良い。ボンネットは四角くて水平に近く、前方の見切りに配慮。ベルトラインは ほぼ水平で、斜め後方の見切りに配慮。

  ルーフも ほぼ水平で、その長さは長すぎず、短かすぎず無難。ある意味どっちつかず。何も狙いは なかったのだろうか。

・フォルム 

  今どき珍しくオーソドックスな角ばったフォルム。その角は尖らず、丸からずでメリハリに欠ける。ピラーの角度も立ってもなく、寝てもいなくて特徴に欠ける。その割に あちこちの面が凸凹していて まとまりに欠ける。このフォルムにする必然性が感じられない。例えば、フィアット パンダ (初代)のようにシンプルに徹すれば、それが味になっただろうに。(-5点)

カラーリング

  ツートンーカラーはラッピングで色分け。ラッピングは鉄板むき出しにしない という意図らしい。ブリキのバケツ等がモチーフなら、むしろ鉄板むき出しの方が似合うのでは。

■フロント (5点/20点満点)

カーデザイン

・ランプ

  角丸フォルムのbasket (バスケット)をモチーフにした ランプの外形状は唐突に半円で、角張ったフォルムのトコットに合わず、他のデザインから浮いている。内部も「目が点」のような違和感あるグラフィック。普通に四角いランプに出来なかったのか。(-5点)

・グリル

  アッパーグリルは上辺の角を丸めた四角い穴。ロアグリルは角張った四角い穴。角を丸めるのか、丸めないのか意思統一されていない感じ。格子も粗すぎてチープ感。(-5点)

・バンパー

  バンパー ビームで出っ張るべきところが引っ込んでいて不自然。アッパーグリルとロアグリルを つなげて見せようという意図だろうが、口の中に何か はさまっているように見えて逆効果。(-5点)

・ボンネット

  ボンネットは先端に弱いキャラクターラインだけ。そのラインはショルダーラインにつながっている。ここはシンプルだが、他がシンプルでないため、全体の統一感としては微妙。

■サイド (10点/20点満点)

カーデザイン

フェンダー、ドア

  ショルダーラインはキャラクターラインを2重に引いていて、煩雑で目立ちすぎ。そのラインはリアまで つながらず、サイドボディの後端で なぜか上へ曲がっている。リアランプとの干渉を避ける意図だろうが、リアランプを少し変えれば良いだけなので必然性がない。(-5点)

  ドアの中央に凹面のリブ。basket (バスケット)等のモチーフの表現かもしれないが、唐突で他から浮いている。凹みも浅くてチープ感。(-5点)

・ウィンドウ周り

  サイドウィンドウは上辺がR面取り、下辺が角面取りで、統一感が微妙。

■リア (5点/10点満点)

カーデザイン

・ランプ

  フロントランプと同じようなグラフィックで統一感がある。丸目ランプもホワイトなので違和感は ない。

・ハッチ

  ハッチを横断する水平のキャラクターラインがリアランプに干渉。ショルダーラインは上に曲げて干渉を避けたのに。考え方が不統一。バンパーの位置での水平ラインが強くて煩雑。(-5点)

■注記

※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価

※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと

※画像の出典

https://www.daihatsu.co.jp/lineup/mira_tocot/03_exterior.htm

https://www.daihatsu.com/jp/design/vehicle/mira_tocot.html

https://www.daihatsu.com/jp/news/2009/20091007-01.html

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