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超 カーデザイン レビュー

「日本車はカッコ悪い」なんて言わせたくない

マツダ MX-30 2020 (D 55点)

カーデザイン

イデア出しのための自縄自縛が難し過ぎたのかマツダらしさが不明確

■まとめ (D 合計55点/100点満点)

  マツダMX-30はマツダ初の電気自動車(EV)として全くの白紙からの新規モデル。マツダの新しい価値を作る という目的で、速さや広さ等の定量的な価値観ではなく、「心を整える」ことを狙うことにした。「走り」がウリのはずのマツダらしさを出しにくい狙い。

  そして新しいデザインを考えるため、マツダの典型的デザイン表現を封印。代わりにレトロな車をヒントにしたが、レトロな車の表現も封印したので、レトロの良さが中途半端。

  その結果、最初のアイデアマツダらしさがないと判断されて、結局マツダのデザインスタイルの一部をフロントフェンスに取り入れることになった。得意なことを封印する自縄自縛が難し過ぎたか。

  デザインのテーマは「Human Modern」。タイムレスな人の気持ち良い心が価値観で、モダンなデザインが狙い。しかし人の心は人によって違う。統一感のあるデザインのためには価値観の絞り込みが必要だ。

  結局デザインの方針が明確でなかったのか、所々モダンでなかったり、形にチグハグな所のあるデザインに なってしまった。

  せめてレトロな車をモチーフにすることは自由にしても良かったのでは ないだろうか。例えば、同じくEVのホンダeが創業者の言葉や過去のホンダ車をモチーフとしてデザインしたのと対称的だ。

カーデザイン

■主な比較対象車

マツダ CX-30 (同門車)

トヨタ ヤリスクロス(競合車)

トヨタ ハリアー(参考車)

・ホンダe (将来の競合車)

■キャラクター

・ポジション

  2020年に発売されたSUVマツダ MX-30はマイルドハイブリッドだった。ヨーロッパで発売された電気自動車(EV)版の日本発売は来年になるらしい。

  もともとは2019年 東京モーターショーで発表された通り、ブランニューのEVモデルで、白紙の状態からの企画。それなら好きにやれそうな自由度だが、マツダの新しい価値を作ろう という難しいことを目指した。その価値へ たどり着くのに2年間かかったそうだ。

・用途

  世界を回って、将来の時代をリードするような人々の調査をした結果、たどり着いた新しい価値とは「心を整える空間、時間」。走ることではなく、止まっている車を見た時から始まる自分らしさを取り戻す時間なのだそうだ。要はリラックスできる外観や内装ということか。

  逆に従来からの価値である「広さ」や「速さ」のような定量的な価値は重視していない。 EV用バッテリーのためにスペースが必要なこともあり、パーソナルユースに絞られている。

・ユーザー

  時代のリーダーがターゲットではないだろうし、調べた範囲ではターゲット ユーザーが良く分からなかった。ユーザーのことを考えているのだろうか?

・デザイン要求

   つまりスペースや走りを気にせず、自分らしさを取り戻すリラックスできるデザインが求められる。住宅や衣服とからなら ともかく、車としては かなりユニークな注文だ。そのうえ「自分」という対象ユーザーも良く分からない。

■コンセプト (20点/30点満点)

カーデザイン

・テーマ

  キーワードは「Human Modern」。色々な時代の変化があってもブレないタイムレスな価値観として人間が持っている気持ち良いという心を軸にしようという考え。それを「自然体」と言っている。しかし人の心は人によって違う。それを どうやって絞り込むかが問題だ。価値観を関係者で統一しないとチグハグなデザインに なりかねない。デザインの方針を もっと具体化する必要があるのでは。(-5点)

  そして「モダン」の方はマツダのデザインをモダンにするという狙い。ここでのモダンは「現代的」というより、現代になっても通用するタイムレスな「近代デザイン」のような意味なのかもしれない。

・アイデア、モチーフ

  新しいアイデアを出すために典型的なマツダの表現は封印。そのうえでマツダらしいデザインをしろ との禅問答。

  そこで自分達が欲しいものは何か を考えたら、レトロなものが気持ちよかったそうだ。しかしレトロな車の表現も封印。

  結局、昔の車が魅力的なポイントを分析してアイデアに。例えば、ウェッジシェイプではなく、流線形なので親しみやすくて気持ち良いとか。

  EVらしさは特に考えられていない。例えば、ホンダeのように未来的でなく親しみやすいEVのデザインにする方法もあるだろうに。

  今に残るレトロな車が魅力的なのは分かるが、それはマツダらしさ なのだろうか。普通に考えると、マツダらしさは「走り」だろう。「速さ」は狙わなくても「乗り味」なら目的に合いそうだが、MX-30は走りは狙わない。そしてマツダ車の表現も封印。自縄自縛だ。クーペにすればマツダらしいという訳でもないだろう。その結果、初期のアイデアマツダらしさがない と判断され、結局マツダ共通的なデザイン要素をフロントフェイスに追加した。やっぱり自縄自縛の禅問答が難し過ぎたのかもしれない。(-5点)

・スタイル

  典型的なマツダの表現は封印なので、五角形の「5ポイント グリル」やランプ周りの加飾の「シグネチャー ウイング」は使っていない。「魂動」の有機的なボディの抑揚も なし。

  それでもマツダらしさを表現しなければならないので、フロントフェイスの表情で「魂動」の生物感を表現。

・パッケージング

  サイズはSUVであるマツダ CX-30とほぼ同じでプラットフォームも共通だが、バッテリーを積むため構造は変わっている。MX-30でもマイルドハイブリッドよりEVの方がフロアが高くなるそうだ。

  そうするとSUVのような全高になってCX-30との差別化が重要になる。

カーデザイン

上 MX-30、下 CX-30

■全体デザイン (20点/20点満点)

カーデザイン

プロポーション

  クーペ風のCX-30より さらにクーペ寄り。リアウィンドウの傾斜が強い。それはスポーティに見せるため ではなく、キャビンを軽く見せるためらしい。パーソナルユースならクーペも似合う。

  それでも室内スペースに多少配慮している。ルーフラインは前席の後ろから なだらかに下がっているように見えるが、ルーフの中央部は段差が付いて少し高くなり室内スペースを 稼いでいる。上手いと思うか、わざとらしいと思うか微妙。

  Aピラーはドライバーの顔に迫っていたCX-30よりも立っているため、CX-30での閉塞感を緩和している。普通になったとも言える。

  ボンネットは水平に近い。レトロな車のフロント マスに ならったものらしいが、MX-30はボンネットの先端まで高く、流線形になっていない。その結果、シルエットの前後のバランスが微妙。

・フォルム

  有機的な面の抑揚は封印され、キャラクターラインも引き算して、全体的にはシンプルなフォルム。シンプルをモダンと解釈したのか。

  サイドボディは 上半身が なだらかなシンプルな面、下半身が カクカクしたフェンダーフレアが 少し張り出しただけ。上下の統一感やSUVとしての力強さが微妙。

例えば、トヨタ ヤリスクロスはSUVらしいロバスト(強靭さ)の表現でメリハリの効いたフォルム。それに比べるとMX-30は抑揚が少ない。もしSUVでなければ、ちょうど良いかも。

・カラーリング

  Aピラーからルーフの横を通ってDピラーに至るフレームを強調。ルーフラインを見どころにする狙いか。

  魂動による面の陰影を表現するために開発された塗装は陰影の少ないMX-30にイマイチ合わない気がする。

■フロント (5点/20点満点)

カーデザイン

・ランプ

  レトロな車の丸目ランプをモチーフに、3次元的に奥行きを与えたようなランプ形状。親しみやすさ や生命感を狙っているらしい。バンパーから引っ込んだように配置され、かなり「奥目」に見える。

  そしてランプとグリルを細い すき間で つないだ「目頭切開」のようなデザイン。これは最近のマツダ車で共通的に採用されている。共通だから良い とは言えず、ボンネットのチリが合っていないように見えて、安っぽく感じる。(-5点)

・グリル

  アッパーグリルは5ポイント グリルの名残を思わせる。5角形を平たく つぶして、角を丸めたような形状。中途半端に五角形ぽくするより、初期アイデアのように四角の方がタイムレスだろうが、これもマツダらしさの表現として必要なのか。ならば変な制約をせずに、5ポイント グリルでも良いのでは。

・バンパー

  アッパーグリルの周りは比較的シンプルで分厚く、レトロな印象も感じる。台形のラインは空白に耐えられずにメリハリをつけたのだろうか。

  ロアグリルの周りはブラックアウト。ボディを薄く見せるために目立たせたくないはずだが、細かいラインや面がゴチャゴチャ複雑なので目立つ。意図が矛盾しているのでは。(-5点)

・ボンネット

  CX-30等と共通性のあるキャラクターラインが2本。全体の引き算のデザインと統一感が ない。マツダらしさのため仕方ない と言いたいところだが、それならば、他のデザインも共通で良くなってしまう。ラインに頼らないアイデアを考える必要が あったのでは。(-5点)

■サイド (5点/20点満点)

カーデザイン

フェンダー

  フェンダーアーチの周りには分厚い角丸四角のプロテクター(クラッディング)。力強い表現だが、レトロな車には あまり見られず、リラックスや親しみやすさ に合わない。CX-30のような力強いプロテクター(クラッディング)の表現だとCX-30との差別化も弱まる。(-5点)

    例えば プロテクターでボディを薄く見せなくてもスタイリッシュなデザインは出来るし。例えば、トヨタ ハリアーはゴツさのないオンロード向けのスタイリッシュなSUVだ。

・ドア

  クーペのルーフラインを実現するため、ドアは観音開きになった。狭い所で使いにくい という意見も見られるが、3ドアよりは使いやすいとも言える。他車との差別化にもなるし、パーソナルユースなら問題ないのでは。

  ドアからサイドシルのプロテクターは分厚く、ラインも入っていて力強い。ここもボディを薄く見せるため、目立たせない所の はずでは。(-5点)

・ウィンドウ周り

  ベルトラインは ほぼ水平。ルーフ側のラインはアーチを描いてレトロなクーペ風。しかしリア側の窓の端が角ばっているのは他のデザインと統一感が欠ける。さらに  Dピラーにメタリックのプレートを配置して、ここだけ目立たせるのは モダンでは ないのでは。(-5点)

  リア サイド ウィンドウとリア クォーターウィンドウが つながって3ドアっぽく見せているのは軽快感。斜め後方視界は窓が小さいのでイマイチだが、クーペと考えれば問題ないか。

■リア (5点/10点満点)

カーデザイン

・ランプ

  フロントランプと同様に円筒を基本とした立体的な形状で統一感。

・バンパー

  分厚いブラックのバンパー。形状が単純なので昔の商用車っぽい気もする。

・ハッチ

   キャラクターラインと面の傾きでヒップアップ感。

・ウィンドウ周り

   窓の周りを別部品にして強調。わざとらしくてモダンではないのでは。窓も小さく、後方視界はイマイチ。(-5点)

■注記

※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価

※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと

※画像の出典

https://www.mazda.co.jp/cars/mx-30/feature/

https://www.mazda.co.jp/cars/mx-30/grade/

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