手堅い戦略の控えめスポーティ。顔と お尻の わざとらしい個性は「普通」が怖いから?
■まとめ (C 合計70点/100点満点)
トヨタ カローラ(12代目)の国内専用ワゴン、トヨタ カローラ ツーリングはマーケットリーダーらしい手堅い戦略で さすがだ。
以前ベストセラーだったトヨタ プリウス(3代目)と ほぼ同じ受け入れられやすいサイズ。「感じるスポーティ」をキーワードにした控えめのスポーティさ。先代ワゴンの併売によるリスクヘッジ。全ての面で手堅い。
ボディ全体はオーソドックスなスポーティ表現。しかしフロントとリアは無理やりカッコ付けてヤボ。例えば、視覚的低重心にこだわって「シャクレ顎」と「垂れ尻」に。ランプも不自然に下が尖った鎌みたいな「涙目」。例えば、普通の切れ長、細目ランプの方がボディにマッチしそうだが。
トヨタは「普通」が怖いのだろうか。普通と「平凡」は違うし、普通も追求すれば「普遍」になるだろうに。「普通恐怖症」を克服しないと普遍性には至れないのでは。
トヨタ ブランドの特長は世界トップレベルの高品質なのだから、ニッチのような新奇性より、抜かりない高品質を表現する方がブランディングになるはず。
■主な比較対象車
・トヨタ プリウス (同門車)
・スバル インプレッサ スポーツ (競合車)
■キャラクター
・ポジション
2019年度国内新車販売台数乗用車1位(軽自動車除く)を獲得したカローラの国内専用ワゴン。海外モデルとはサイズが異なる。先代のトヨタ カローラ フィールダーが併売。
・ユーザー
ユーザーは従来カローラ ユーザーの60歳代以上の代わりに30~40歳代がターゲット。この年代だとカローラは高齢者用というイメージを持っていそうだ。
・デザイン要求
つまり大胆チャレンジで従来イメージを覆し、従来ユーザーの離反には併売でリスクヘッジするのが一般的な戦略。
しかしマーケットリーダーであるカローラはチャレンジし過ぎない守りの戦略も可能。マジョリティ向けに奇をてらわず万人受けする程度の小チャレンジがグッドバランス。
■コンセプト (25点/30点満点)
・テーマ
カローラ シリーズ共通テーマは「シューティング ロバスト」。勢いのあるフォルムと骨格のたくましさ という意味。骨格とはトヨタのプラットフォームTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)による、低重心、ワイドスタンス(ワイドトレッド)のことらしい。
国内版のテーマは「凝縮」。小さくてもダイナミックかつアクティブにするという意味。良いテーマだが、目立とうとしてフロントとリアの強調し過ぎに つながってしまった。(-5点)
・アイデア
キーワードは「感じるスポーティ」。あからさまなスポーティは乗り心地の悪さや室内の狭さを感じさせるので、何となく感じさせるという控えめなもの。
海外用はカローラ ツーリング スポーツという名前だし、国内も堂々とスポーツを狙っても良いだろうが、そうしないのが手堅い。
・スタイル
視覚的低重心とオーバーハング軽減にこだわったデザインポリシー、トヨタのデザインスタイル「キーンルック」、「アンダープライオリティ」を しっかり適用。
なお「キーンルック」はフロントエンブレムを中心にV字型等で広がる立体的なデザイン スタイル。「アンダープライオリティ」はアンダーグリルを強調したデザイン スタイル。
・パッケージング
国内向けとして海外用のカローラ ツーリング スポーツより小型化。ベストセラーだったトヨタ プリウス(3代目)と同等の受け入れられやすい外寸。ホイールベースはプリウスより少し短く、トヨタ カローラ スポーツと同じ。
■全体デザイン (15点/20点満点)
・プロポーション
ワゴンとしてはグリーンハウスが小さめでスペースは大きくない。ハッチバックのトヨタ カローラ スポーツとはルーフの長さで差別化できている。
・フォルム
スポーティに見せる表現はオーソドックスながら効果的。ボディの前後を絞ってフェンダーフレアを強調、後ろ上がりのベルトラインでウェッジを表現、ドア面のピークを後輪へ向けて後輪を強調。
ところが低重心に見える台形シルエットにこだわっため、口(ロアグリル)と尻(リア バンパー)だけが出っ張って目立ち過ぎだ。「シャクレ顎」と「垂れ尻」になってしまった。(-5点)
インプレッサもリアバンパーが出っ張っているが、わずかなので目立たない。カローラ ツーリングもリアハッチを もっと出せば、垂れ尻を解消してカーゴスペースも広がっただろうに。
■フロント (10点/20点満点)
・ランプ
不自然に下が尖った鎌みたいな「涙目」。フェンダーからバンパーへつながる面を わざと下側へズラして、その隙間をランプにしたら、鎌みたいになった。ボディ全体がオーソドックスで角がないのに ここだけ尖ってミスマッチ。わざとらしいデザインは万人受けしない。例えば、プリウスPHVのランプはオーソドックスな外形状だが先進的に見える。(-5点)
例えば、インプレッサはランプ下辺に段差あるが、ここはコの字形のポジションランプの一部なので必然性もあるし、ボディ全体が角張っているので統一感がある。
・グリル
キーンルックとアンダープライオリティのスタイル通り。丸いアッパーグリルと四角いロアグリルの間に段差が出来ているが、控えめなワイルドさで悪くない。
他のトヨタ車だとアッパーグリルはボンネットの閉まり切らない隙間、ロワグリルは口の閉まらない顎無しに見える車もあるが、この車は無難だ。
・バンパー
フェンダーからの面がバンパーの上に不自然な鋭角の段差を作っている。この段差はボディ全体と不統一だし、ロワグリルの出っ張り(シャクレ顎)を余計に強調してしまった。海外用は ここに段差がなく一体感がある。国内用は目立たせ過ぎだ。(-5点)
■サイド (20点/20点満点)
・フェンダー、ドア
スポーティなフォルムを滑らかに表現。 ベルトライン下の鈍角のキャラクターラインはグリーンハウスの絞りと合わさって、ボディの伸びやかさに効果的だ。
・ウィンドウ周り
B、Cピラーをブラックアウトしてグラスエリアのワイド感を表現。
ベルトラインが全体に後ろ上がりなので斜め後方視界は微妙。
■リア (5点/10点満点)
・ランプ
フロントランプに合わせた形状で統一感はある。下辺の段差をハッチのカットラインに合わせているので、フロントランプほど不自然ではない。
・バンパー
安定感を出し、オーバーハングを短く見せるためバンパーの両端にハの字の形の段差。その「ほうれい線」みたいな段差が垂れ尻を余計に強調してしまった。(-5点)
■注記
※このブログのレビューは あくまで個人的意見の相対評価
※このブログで「デザイン」は外装スタイリング(外観)のこと
※画像の出典
https://toyota.jp/corollatouring/gallery/
https://www.c-nagoya.co.jp/lineup/corollatouring
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